Death & Live

いわゆる日記とは違うようで。死に様や心の疲労について、つれづれなるままに書き綴るだけ。

小説 『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

2006-05-21 11:20:00 | つれづれなるままに

 昨日の夕方の東京は、大雨・雷・強風・波浪・洪水注意報が出てました。強烈でしたね、雨。
 空気がキレイになった空を眺めながら、"そういえば、東京タワー見えなくなっちゃったんだよなぁ..." などと。
 以前はうちの窓から東京タワー見えてたんですが、最近は見えません。旧B庁跡地に建ったでっかいビルのせいです。
 別に東京タワーに何の思い入れもないので、どうということではないんですが(笑)、最近、例の本読んだもので。
 世には思いいれのある方もいらっしゃるようですよね...


『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
著者 : リリー・フランキー

 ほんとスンマセン。自分はどうしようもないヤな奴で、ヘソの曲がったひねくれ者です。
 わかっちゃいるけど、どうしようもないんですよ、こればっかりは。悔しいくらいにどうしようもないんです。

 この小説を小説として好きになれない。

 元々小説というジャンルにあまり興味が無いので、もらった本とか何か自分が関係した本とか、そういうのしか読んでない。自分で選ぶのは、歴史、政治、科学等の研究本。

 なのに、ナゼこの本を読まなくてはならなくなったかと言えば、会社にいるお局様から借りたから。
「もう~、電車の中じゃ読めないのよ!号泣しちゃうの!」
 などと言われ、それでも興味無さそうな返事しかしてなかったにも関わらず、
「読みたかったら貸してあげるよ」
 とか言いやがる。
 曖昧にひきつり笑いだけ返しておいたのだが、一週間後、当然のように、
「はい。」
 と渡されてしまった。
 読みたいワケじゃないけど、これじゃ読まないで返すっつー選択肢は無さそうなので、読み始めた。
 ダラダラ読むといつまでたっても読み切らないと思ったので、ゴールデン・ウィークに一気読み(笑)


 最初にすげーいーなぁって思ったのが1ヵ所。
 縦書きの扉の題字


 感動で目頭が熱くなったのは1ヵ所。

 初めて独り暮らしを始める息子の旅立ちの日、オカンが持たせた弁当の下に手紙が入っていた……という下り。
 その後のグータラ生活を知らない自分としては、きっと勉強とかで一番になっちゃったりするんだろう...などと勝手に期待し、オカンの心遣いに感動。


 悔しくて目頭が熱くなったのは2ヵ所。

 子が親元を離れてゆくのは、親子関係以上のなにか、眩しく香ばしいはずの新しい関係を探しにゆくからだ。
 ・・・・・・・・・・・・
 人間が生まれて、一番最初に知る親子という人間関係。それ以上のなにかを信じ、世に巣立ってゆくけれど、結局、生まれて初めて知ったもの、あらかじめ、そこに当たり前のようにあったものこそ、唯一、力強く、翻ることのない関係だったのだと、心に棘刺した後にようやくわかる。
 世の中に、様々な想いがあっても、親が子を想うこと以上の想いはない。

 ここに書かれている "唯一、力強く、翻ることのない関係" を知らないまま大人になった人間もいて、そんな人間は "親が子を想うこと以上の想い" がどこかにあると信じて、日々彷徨っているのです。
 いったい何をどれくらい経験してきた結果 "ボク" はこんな風に言い切ることができるのだろうか。
 上手く反論できない自分が悔しい。

 それぞれが、その辺りの水溜りで湧いた蛆のように、ひとりで生まれ、ひとりで生きているような顔をしている。
 しかし、当然のことながら、そのひとりひとりには家族がいて、大切にすべきものがあって、心の中に広大な宇宙を持ち、そして、母親がいる。
 この先いつか、或いはすでに、このすべての人たちがボクと同じ悲しみを経験する。
 ・・・・・・・・・・・・
 人が母親から生まれる限り、この悲しみから逃れることはできない。人の命に終わりがある限り、この恐怖と向かい合わずにはおれないのだから。

 確かに、この世に存在している以上、母親のいない人はいないだろう。しかし、この "ボク" と同じような距離感で母親が存在しているとは限らない。こんな悲しみを経験するとは限らない。
 いったい何をどれくらい経験してきた結果 "ボク" はこんな風に言い切ることができるのだろうか。
 上手く反論できない自分が悔しい。


  頭にキたのは1箇所。

 オカンが貯金も無い、年金も払えなくなったから貰えないと言った時、語り手のボクは年金制度を批判している。
 オカンがボクの大学の卒業証書を広げ
「これがあたしの全財産よ」 と言った。

 日本の年金制度が正しいとは言わないが、"ボク" に批判されてもどうかと思うよ。オカンの貯金を食い潰したのはてめーだろッ!って思うとね。


 共感できた登場人物、1人。

 オトン。
 首尾一貫してるからね(笑) 語り手の "ボク" みたいに、都合のいいところだけオトンの言う事聞いたりしてるのと違って、人の評価がどうであれ、その時の経験値による価値観を持っている感じがいい。


 本音、やっぱり読まなきゃよかったと。
 このモヤモヤした不快感はやっぱり妬みなんですかね。


 嵐のあとの不思議色な空を見ながら、色々と自分を振り返る、今日この頃。 かな...



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2 コメント

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TBありがとうございます。 (独楽知)
2006-05-21 17:15:00
TBありがとう。



zooquieさんの感想、充分ありだと思います。

ひねくれ者なんて、全く思いません!



<共感できた登場人物、1人。

  オトン。>

には、笑いました。

そうかも!

家庭の枠をはみ出した、このオトンがいたから、この家族のバランスが保っていたのかも。



リリーさんが15才から母親と離れて、再び同居したのが30才になってからというのも、親子関係にとってはラッキーだったのかも知れません。



この本は、母子家庭でリリーさんすべてで生きてしまった母親の最期を見取ったリリーさんの、母親へのレクリエムだと思いました。

だから泣かされましたけど。
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独楽知さんへ (zooquie)
2006-05-21 23:06:19
あぁ、良かったです。

読んだ方々から批判されるのではと、

恐る恐るUPしたもので(笑)

こんな風に言って頂けると、

小説以上に目頭が熱くなります。<マジです



自分がオトンに共感できたのは、

独楽知さんの言う通り、

実はバランスをとっていたのはオトンだからなのかも。

話の中ではなんとなく受動的な動きしか見えないけれど、

実は、能動的に押さえるべき所を押さえていたのかも。

すごいなぁ、オトン。



ソウイウ人ニ、ワタシモナリタイ...

↑どっかで聞いたことあるような??(笑)
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