Death & Live

いわゆる日記とは違うようで。死に様や心の疲労について、つれづれなるままに書き綴るだけ。

映画 『ヴェニスの商人』

2006-01-15 18:33:57 | 映画 「う段」
『ヴェニスの商人』 2004年 Michael Radford監督

底知れぬ奥深さを持つシェークスピア劇について語るなど、
私の浅い人生経験では不可能である。
しかし、ストーリーを理解するには「映画」というものは非常にすばらしい道具だ。

シャイロックのあのあまりにも儚く切ない人生とは何であろうか。
貸した金の何倍の金であろうと受け取らず、担保として保証人の肉体を欲す。
娘が自分の財産を持って駆け落ちをすることを手助けした保証人を心から憎む故。

手を掛けようとした瞬間にシャイロックの運命は反転する。
一度は、"財産を失うくらいなら殺してくれ" とまで言ったにも
関わらず、自分が殺し損ねた人間から情けをかけられ、
その言葉を聞くうちに、死ぬことより屈辱を受け入れてしまう。
シナゴークの入口を見つめながら呆然と立ち尽くすシャイロックの姿はあまりにも哀れである。

自分はシャイロックを愛する。
死を選べなかった彼を非難する人間がいるのなら、
私がそいつを殺めよう。
ユダヤ人としての、美しき高利貸し人生を非難する人間がいるのなら、
私がそいつを排斥しよう。
彼の生き方も考え方も、私は支持する。
どうしてこんなにも正しい道を生きてきたのに、
哀れな運命が待ち構えるのか。
正しいと信じた道を生きていても報われないということか?
報われることがなくとも、
屈辱と共にに哀れな人生を送らねばならないなら、
正しいと信じた道を生きる意味があるのか?
それでも、正しいと信じる道を生きることしかできないのなら、
死んだほうがいいのではないか?

しかし、人間は悩み苦しみながらも、
生き続けてしまうものなのだろう。


アル・パチーノ...圧倒的な演技力。
もう "老練の名演" と言っても許されるか。