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「君が代」不起立処分大阪府・市人事委員会不服申立ならびに裁判提訴当該15名によるブログです。

あまりに危険な大阪市教育振興基本計画(素案)~全国からパブコメを!

2012-12-31 17:18:56 | 教育振興基本計画

※ブログ「大阪教育条例NO!」より、シリーズ①~⑦で大阪市教育振興基本計画(素案)の検証を紹介して来ました。改めてこの素案の問題点を痛感しています。全国の多くの方に関心を持っていただき、大阪市教育委員会にパブリックコメントをお寄せいただきたいと思います。辻谷博子

◆パブリックコメント窓口◆
郵送、ファクシミリ、電子メール、持参のいずれかの方法でできます。電子メールによる場合は、下記のホームページから「応募用紙」をダウンロードし、そのファイルをメールでお送りください。
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/kyoiku/0000194120.html

◆大阪市教育振興基本計画「素案」◆
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/cmsfiles/contents/0000194/194120/soann.pdf

 

私は22歳で大阪府立高校教員となり、以降、教育の場で、「日の丸・君が代」を子どもたちに強制(摺り込み)することに反対し続けて来ました。

1989年学習指導要領改訂以来、おそらくほとんどの府立学校の職員会議では、卒業式や入学式で「日の丸・君が代」を執り行うことの是非を巡って管理職と教職員の間で激しく意見交換が行われて来ました。そして、反対もむなしく、管理職によって式に持ち込まれるようになってから、それでも多くの教職員は「君が代」斉唱時、起立することはできませんでした。学校という場で、しかも、その入学と卒業の式典において国歌・国旗を執り行うことは事実上、子どもたちに強要することになるので、それにはどうしても従うことができなかったのです。

しかし、自分自身の気持ちを振り返ってみると、今春の「不起立」はそれだけではなかったように思います。それに加えて、いやあるいはそれ以上に、2012年4月1日施行された大阪教育諸条例に従うことはできないと言う、強い思いを一種の意見表明として行ったように思います。

昨夏、素案として公表された大阪維新の会教育基本条例案は、様々な方面から反対の声があがり、最終案は、一見すると、当初の素案からかなり変更されたかのように見えます。しかし、大阪府教育行政基本条例第4条では、教育振興基本計画について、「知事は、委員会と協議して、基本計画の案を作成」、「 知事は、第一項の規定による協議が調わなかったときは、委員会の意見を付して大阪府議会に提出する」と規定されています。つまり、府議会への提案権は最終知事にゆだねられているのです。

現在、橋下徹大阪市長のもとで、府に先行して教育振興基本計画が策定されようとしています。予想した通り、ここに橋下大阪維新の会の教育改革案が盛り込まれています。素案そのまま策定されるなら、大阪市の教育は競争の名のもとに、学校はつぶされ子どもたちは選別されることになります。

大阪市教育委員会は素案についてパブリックコメントを募集しています。これは大阪市民でなくとも応募できます。締切は1月4日です。是非、多くの方がパブリックコメントを寄せられることをお願いします。教育の力は過大です。しかし、その功罪はすぐには表れません。気がついたときには手遅れということにならないように、僭越ながら関心をお持ちくださいますようお願いします。

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大阪市教育振興基本計画(素案)ってなんなん?⑦

2012-12-31 13:26:23 | ブログ大阪教育条例NO!より

※シリーズ⑦です。教育基本条例のもっとも危険な点は、このように教育振興基本計画になんでも盛り込むことによって、実質的に政治の教育への介入を許してしまうことです。パブリックコメントを形式的なアリバイ工作とさせないためにも、私たち(大阪市民でもなくても応募可)の声を届けましょう。

◆パブリックコメント窓口◆

パブコメは、「応募用紙」を郵送、ファクシミリ、電子メール、持参のいずれかの方法でできます。電子メールによる場合は、下記のホームページから「応募用紙」をダウンロードし、そのファイルをメールでお送りください。

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/kyoiku/0000194120.html

◆大阪市教育振興基本計画「素案」

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/cmsfiles/contents/0000194/194120/soann.pdf


大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑦
いじめは、いじめた子の厳罰化で解決するのか?

「素案」には、いじめ対策もあります。しかしその内容は、子どもたちが「育ちつつある存在としての権利」を大切にして、いじめられた子、いじめた子の声を聞くことから始めようとするものではありません。「素案」では、「いじめた側の児童生徒に対する更生プログラム」を今年度中に作成することに主眼が置かれています。

具体的には「①解決に向けた学校内での加害児童生徒への指導とその保護者への協力要請、②警察やこども相談センターなど関係機関と連携した学校内での指導、③出席停止の活用や教育委員会・警察等と連携した学校外(サポートセンター等)での指導、④犯罪が疑われる場合には、保護観察、児童自立支援施設・少年院送致等の処分に向けた、被害届の提出などの法的手続きといった対応を段階的に示し、児童生徒の状況に改善が見られるまで指導・対応に取り組みます。」としています。つまり、いじめた子どもたちを出席停止と学校外への排除、警察との連携と刑事罰化を方針化しているのです。
 

はたして、いじめた子どもたちを排除することで解決するのでしょうか。出席停止と学校外への排除、刑事罰化が、学校が行う教育行為といえるのでしょうか。確かに2006年以降、学校でのいじめは再度顕在化し、インターネットの普及も相まっていじめの複雑化と潜在化が進んでいます。その一方で、学校は全国学力テストの結果を指標とする競争主義に邁進し、子どもたち同士の関係は「仲間」ではなく「競争者」となりつつあります。教員も教員評価制度を介して成果主義にとらわれ、子どもたちと向き合う時間が減ってきています。

いじめた子への厳罰化は、第1次安倍政権下の教育再生会議で審議された内容です。それは、安倍政権の崩壊と同時に全国化することはありませんでしたが、2012年秋、安部自民党総裁が「教育再生実行本部」を設置し、義家議員を中心にして、再びいじめた子への厳罰化が強調されようとしています。義家氏は「いじめは未熟な子どもの本性」であり、「教育は強制」であるとし、具体的にはいじめたこの保護者に対して、「出席停止になると、お子さんの指導要領に記録が残って、進学にマイナスになりますよ。学校が処分をするのか、親の責任で子供に謝罪させて学校を休ませるのか、どちらを選びますか。と言えばいいんです。」としています。橋下市長と大阪市教委の進めるいじめた子の厳罰化も同様の動きです。子どもを一人の人格として見て尊重していくのではなく、「強制」し「従わせる」ことを主眼に置いています。

「大津いじめ自殺」事件は、学校と教育委員会のいじめ隠蔽体質を浮き彫りにしました。しかし、より本質的には、子どもたちが普段抱えている悩みやストレス、生活環境や友大関係に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。子どもたちを権利の主体として尊重し、その意見を真摯に聞くことが必要です。そのために、競争と成果を求める学校教育を改めていくことが何よりも大切です。いじめの解決は、「素案」にあるようにいじめた子への厳罰化で解決できるものではありません。

つくづく思うねんけど、

この素案の根っこのところにあるもんやねんけど、人間を子どもを信頼してへんな~。

まったっく、悲しくなほどやわ。

そりゃいじめは絶対あかん。

子どもの世界は大人の世界をそのまま映してるんちゃうん。

おとなが、いじめをしといて、競争とか成果で人の値打ちを決めといて、

子どもに「いじめはあかんで」といくら言っても通じるもんやないで。

そしたら、今度は警察まがいのことで、子どもをのけもんにするんやて。

全然、わかってへんわ。

いじめが起こったら、いじめられた子が先生にすぐ相談できるようにせなあかん。

いじめる子も、問題抱えてることが多い。

自分のやったことの意味を考えさせんでどうすんねん。

ああ、大阪の学校には行かせたないっていう人増えるんちゃうかな?

大阪大好きなおばちゃんとしては許せんことや。

パブリックコメント出そ!

(大阪のおばちゃんより)

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大阪市教育振興基本計画(素案)ってなんなん?⑥

2012-12-31 12:34:51 | ブログ大阪教育条例NO!より

※シリーズ⑥です。どうかお読みになって、問題があると思われた方は、パブリックコメントでご意見を大阪市教育委員会にお寄せください。締切1/4

◆パブリックコメント窓口◆

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◆大阪市教育振興基本計画「素案」

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大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑥
「伸ばす子はしっかり伸ばす」教育と「習熟の遅れを取り戻すための特別学校」の設置がもたらすもの

http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/65bb2a87f1503f386b29533b6ff6b62d

「素案」には、「中学校の国語・数学・英語・理科で1年間を通じた習熟度別授業の実施」が盛り込まれています。これまでも習熟度授業は進められてきましたが、予算的な裏付けがなく部分的にしか行われてきなかったものが、年間を通じた習熟度別授業を目指すとしています。習熟度別授業は、子どもたちを学力別に分けてクラスを分割して授業を行うものです。「出来る子」にはどんどん進んだ内容を教え、「出来ない子」には劣等感を植え付けるものでしかないのではないでしょうか。

他方で「素案」では、「習熟の遅れを取り戻すための特別学校」の設置や、いじめた子の出席停止の活用や学校外での指導=学校からの排除も盛り込んでいます。「枠にはまらない」子どもたちを排除していこうとする姿勢が伺えます。その立場におかれる子どもたちの心情は全く考慮されていません。

クラスにいる子どもたちは、様々な学力や個性を持ち、それは教科・学校生活の場面によっても大きく違うし、得意なものも苦手なものも違う子どもたちの集まりです。そのような多様な子どもたちの集団だからこそ、お互いに協力し合い「学び会う」のではないでようか。学力別に分離していく集団作りは、差別と格差を子どもたちに植え付けていくしかないと思います。

「素案」の根底には、橋下市長の「教育観」があります。

橋下市長は、第2回有識者会議で小学校低学年からの理科の復活、塾代バウチャー、習熟度別学習の徹底、「児童放課後いきいき事業」の公募化などを主張し、「素案」に盛り込ませました。そこでは「悪しき画一主義、頑張っている子が頑張っていない子に引っ張られているのが現状。今は頑張る子どもを伸ばそうというように推進している。」「下位層の底上げの一方で、上位層をさらに伸ばすということが不足していた。」と、一部のエリート優先の教育を行うことを具体化したのです。

このままでは、大阪で蓄積されていた「共に学び共に生きる」教育、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」推進された仲間作りを根本から否定することになるのではにでしょうか。

こりゃ、あかんわ。

こんなんしたら、ますます、大阪の子どもらは勉強する気なくすわ。

子どもらはようわかってんで。

「やっぱり、おとなは、勉強のできる子、お金のある子のことしか考えてへんねんや。」って。

それに勉強のできる子は天狗になるばかりや。

人の心の痛みがわからへん奴が(今以上に)エリートになっていくなんて、ああ、おそろし!

子どもは、いろんな子どもがいるなかで、大きくなっていくんや。

大人の都合で子どもを分けてどうすんねん。

大人はチットは子どもから教えてもわなあかんな。

(大阪のおばちゃんより)

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大阪市教育振興基本計画(素案)ってなんなん?⑤

2012-12-31 11:03:36 | ブログ大阪教育条例NO!より

※「大阪市教育振興基本計画(素案)ってなんなん?シリーズをお読みになられている方へ、是非、大阪市で募集しているパブリックコメントにご意見をお寄せください。

◆パブリックコメント窓口◆
パブコメは、「応募用紙」を郵送、ファクシミリ、電子メール、持参のいずれかの方法でできます。電子メールによる場合は、下記のホームページから「応募用紙」をダウンロードし、そのファイルをメールでお送りください。

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/kyoiku/0000194120.html

◆大阪市教育振興基本計画「素案」
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/cmsfiles/contents/0000194/194120/soann.pdf

大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑤
学校選択制の導入と学校統廃合の加速
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/e350280036151f923b229778d0ecc7cf

大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑤
学校選択制の導入と学校統廃合の加速

2010年2月、大阪市学校適正配置審議会は、「今後の学校配置の適正化の進め方について」において、「11 学級以下の小学校全体を適正化の対象として再整理」するとしつつ、段階的で慎重な統廃合と小規模校の利点を生かした創意工夫した教育の推進が掲げられていました。

具体的な「適正化」の方針は次のようになっています。

(1)今後とも児童数が120 名以上に増加する見込みが立っていない小学校は、「保護者・地域関係者に対し、学校が抱えている現状や課題など情報を提供し、速やかに「統合」に向けた調整を進めるべきである。」

(2)次に該当する小学校は「児童数の推移を注視しながら、より規模の小さい小学校から順次取り組みに着手されたい。」としていました。
a)今後児童数が120 名を下回ることが見込まれる小学校
b)現時点、もしくは今後、全学年単学級の状況にあると見込まれる小学校
c)今後、7 学級以上11 学級以下の状況にあると見込まれる小学校

つまり120名以下の学校では統廃合を進めつつ、120名以上の学校においてはa)→b)→c)と慎重に進めていくことが基本でした。しかし、「素案」は、この「適正化の進め方」とは大きく違います。2015年度末までの「11学級以下の小学校についての適正化」が盛り込み、3年間で(1)だけでなく(2)のc)まで一気に進めることを方針化したのです。

現在、「11学級以下の小学校」は、小学校は全体の約3分の1に当たる101校あり、北、浪速、生野、西成区では11 学級以下の小学校が区内の学校数の半数を超えています。地域から学校が消える深刻な事態が進む可能性があります。最も被害を被るのは子どもたちです。

橋下市長はかつて「子供たちのため、統廃合は喫緊の課題なのに、住民の合意がどうこうと言っていたら何も進まない。学校選択制で選別にさらし、統廃合を促すしかない」と主張していました。今回の「素案」の中でも、学校選択制推進が前提となっています。これまで小規模校の統廃合は、地域からの強い要望や小規模校の良さを踏まえて、簡単には進めることが出来ませんでした。しかし橋下市長は、有識者会議の中で「『しない、させない、越境入学』という・・・価値観をやめよう、学校は選ぶものなんだということを今は言っている。」と述べました。

学校選択制と学校統廃合の急促進は、一体のものとして進みつつあります。「素案」は、2014年度から学校選択制導入することによって学校を市場原理に投げ込み統廃合の梃子にするものです。

結局、学校選択制っていうんは、学校をつぶすためにあるってことやんか。

しかも、学校は自分の責任で、子どもを呼び集めることができひんかったからつぶれるという形になるわけなんや。

きっとそん時、橋下はんも(橋下さんはその頃にはおらんかもしれへんけど)教委も言いよるやろな。

小学校を廃校にするとき、

「行政がつぶしたんやのうて学校がつぶれたんや。学校の努力が足らんかったんや」って。

そういうふうにして学校つぶして、予算を浮かせるつもりなんかいな。

子どものこと、考えたりいや!

兄ちゃんの通っていた小学校、つぶされて、妹は遠い小学校に通わなあかんことが起こるわけや。

しかも、場合によっては、電車に乗って。

大阪で、なんで、電車に乗って公立の小学校に通わなあかんねん。

選択できるっていうけれど、選択なんかせんでよろしい。

近くの小学校に通うのが一番。

(大阪のおばちゃんより)

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大阪市教育振興基本教育(素案)ってなんなん?④

2012-12-31 10:20:51 | ブログ大阪教育条例NO!より

大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する④
ICT教育って、本当に必要?
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/25e8a4b2cc426ecc22c2ed497f6232ae

 

大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する④
ICT教育って、本当に必要?

大阪市教育振興基本計画「素案」では、ICT教育が重視され、「大阪市スタンダードモデル」を作成し、3年後には大阪市内全校で実施することが明記されています。予算は、約150億円といわれています。しかし、大阪市教育振興基本計画有識者会議では、その是非論が議論されたのでなはく、導入ありきの議論がされただけです。

橋下知事が誕生したとき、大阪府教委はDSを活用した授業を提案し、試行を始めましたが、何の総括もないままなくなってしまいました。

今回は、どうなんでしょうか。
少なくとも、情報処理学会、日本化学会、日本化学会化学教育協議会、日本数学会、日本地球惑星科学連合、日本統計学会、日本動物学会、日本物理教育学会から、以下の疑問が出されています。これらの疑問に答える議論はなされていません。

**************************************

「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望

2010年12月7日 会長  白鳥 則郎

http://www.ipsj.or.jp/03somu/teigen/digital_demand.html

 このたび本会は,「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望(以下)を12月7日に文部科学省生涯学習政策局に提出いたしました.

 理数系学会教育問題連絡会に加盟する上記諸学会は、「デジタル教科書」「デジタル教材」推進に際して、世界的に見て低くない我が国の教育水準を維持し、さらに向上させるために、必要と思われる事項のチェックリストを作成致しました。

 現在、関係各位において「デジタル教科書」「デジタル教材」(以下、単に「デジタル教科書」と記します)推進に向けての議論が進められていることと理解しております。理数系諸学会においても、今日の情報・通信技術により実現可能となった「デジタル教科書」の活用は、教育における重要な課題でありかつ、将来にわたってわが国の教育を高めていく上で必須のものであると理解しており、それぞれ、その教育における活用に取り組んで行きたいと考えています。

 しかしながら、「デジタル教科書」は、あくまでも教育の手段であり、目的とするのは教育を高めていくことであるのを忘れてはなりません。特に初等中等教育における「デジタル教科書」の活用に関しては、生徒・児童の発達過程およびその教育内容との関連についてこれまでに行われてきた検討・試行・研究を、技術の進化を踏まえて、さらに深めていく必要があります。

 このような考えから私たちは、「デジタル教科書」活用に向けての具対策が、教育そのものを高めていくという目的に適ったものになっていることを確認するため、下に示すとおりの9項目のチェックリストを作成致しました。このチェックリストは、理数系諸学会が「デジタル教科書」の活用に向けて活動する際に配慮すべき事項をまとめるという趣旨で作成したものですが、関係各位におかれましても、「デジタル教科書」の推進にあたっては、常にその施策が、本チェックリストの全項目を満たしていることを確認されますように、強く要望いたします。

事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。

事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで科学的事項の学習とすることが無いこと。

事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。

事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。

事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。

事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。

事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。

事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配慮すること。

事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

付記1 健康上の問題点に関する検討
 上に記した以外の点として、情報機器の長時間にわたる使用が、児童生徒の視力をはじめとする身体能力やその発達に悪影響を与える可能性についての懸念について指摘しておきます。私供はこの分野の専門家ではないため、この件については事項として挙げませんでしたが、研究開発校など限定的な範囲において、十分に時間をかけた調査を実施することにより、デジタル教科書が子供たちの健康に悪影響をもたらさないかどうかについて、まずは検証することが、デジタル教科書導入の教育効果について考える前段階として必要だと考えます。

付記2 児童・生徒のプライバシーに関する検討
 「デジタル教科書」に関連して、すべての児童・生徒の学習行動を電子的に記録・集約・保管して学習指導に役立てるという考えがあります。これが教育上有益であり得ることには異論ありませんが、当然ながらこのようなデータは高度なプライバシー情報です。児童・生徒ならびに保護者が認める者だけがこれらのデータにアクセスでき、また児童・生徒ならびに保護者がデータに対する制御を持つこと(必要な時に自分のデータを利用できるようにすること、またその意思に基づいてデータが確実に破棄可能なこと)を確実に保証すべきであり、その保証が行えるまでは記録・集約・保管を見合わせるべきだと考えます。

付記3 チェックリスト各事項の解説

事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。
解説: 理科においては、実際に実験などを行い、自然現象を観察するこ とが、本質的に重要です。実験なしで教材のみで学習を済ませた場合、 試験の点数は取れても、現実に理科的思考が必要な場面で対応できない おそれが大きいと考えます。したがって、デジタル教科書の教材を視聴・ 操作することで実験を代替し、実験の時間を「節約」するようなことが 起きないような配慮が必要です。なお、現状で既に、理科を十分学習せ ず、理科の実験が行えない教員の増加が問題になっていることから、そ のような現状を改善し、理科の実験実施への敷居を低くするようなデジ タル教材の導入は、大いに望まれることを付記します。

事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで、科学的事項の学習とすることが無いこと。
解説: 今日のデジタル映像技術の進歩はめざましく、「わかりやすい」 映像を生成することが容易におこなえます。従来の授業形態では難しかっ た、自然の記録映像等の視聴を行えるようにしたり、見ることができな い空間や電磁場などの概念を視覚化することで把握を助ける、という形 でのデジタル教材の導入は、大いに望まれることです。一方で、どんな 現象でも自由にしかも直接に観測や実験可能だという誤った直観を醸成 する危険性もあります。科学による自然の解明は、観測・計測困難なも のを観測・計測できるようにするための技術や、観測・計測できたごく 限られたデータを元に、モデルを構築して理解する活動によって支えら れています。そのような困難や達成感を生徒が身を持って体験できるよ う、デジタル映像の視聴は、教育上必要な範囲に留めるべきだと考えま す。

事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。
解説:紙と筆記用具を用いて事項を整理したり、計算や証明の過程を適切 に配置する訓練を積むことは、理数系の各科目において非常に重要な位 置づけを占めます。これらのことがらをソフトウェア上で行うことも不 可能ではありませんが、初等中等教育段階では、紙と筆記用具のような 柔軟性や操作性に優るものはないと考えます。特に、学びの基本的な技 法である、ノートの取り方、直接動かすことができる教具や図を用いて 考える方法、観察や実験の結果を写真ではなく図や言葉で記録する方法、 表やグラフにまとめる方法、筆算等の計算の書き方、証明の書き方等が 十分に身についていない学齢において、紙と筆記用具をソフトウェアで 代替することは適切でないと考えます。

事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。
解説: 生徒が学習した内容を自分のものとして定着させるためには、自 発的に学習内容を記録・整理する時間を十分取ることが不可欠です。デ ジタル教科書の使用によって、学習内容が短時間に効果的に提示され、 また教師の提示内容と同じものが即時的に手元に残せたとしても、それ だけでは学習したことにならないのは当然です。デジタル教科書による 学習の「効率化」が、生徒が手と頭を働かせて学習内容の記録・整理を おこなう時間の縮減につながらないように、十分な配慮が必要です。な お、「効率化」によって生み出される時間の余裕を、生徒による自発的 な記録・整理のための時間増に充てられるなら、それは大変望ましいこ とだと考えます。

事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。
解説: 穴埋め形式や選択肢形式の問題は、生徒が問題全体を書き写すこ となく、解答欄だけに記入すれば済むことから、一見効率が良いように 思えます。しかし、児童・生徒が問題に関わる概念を十分に定着させる ためには、問題全体を書き写すなど、作業に一定の手間と時間を掛ける ことが重要です。したがって、デジタル教科書により、この時間を縮減 するような穴埋め形式や選択肢形式の問題の比率増大が起きないための 配慮が必要です。

事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。
解説: 児童・生徒に科学的な考え方を身につけさせる上で、対象とする 事項について話し合う学習活動は、さまざまな捉え方があることを身近 に実感させ、それらを統合して真実を探究していく体験を持たせられる ため、非常に重要です。デジタル機器を通した意見交換も可能ではあり ますが、やりとりされる情報の密度や即時性の点では、対面での直接的 な意見交換のほうが優っているのが現状です。したがって、デジタル教 科書の使用により、児童・生徒どうしの直接的な意見交換を行う学習活 動が削減されることが無いような配慮が必要です。

事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。
解説: プレゼンテーションソフトウェアは今日、世の中で広く使用され ていますが、その使い方の多くはカラフルな図や写真などで目を引き、 聞き手に「わかった気にさせ」「話者の主張を売り込む」ことを目的と したものです。しかし、スライドは筋道立てた文章を盛り込むものでは ないので、後からスライドを見ても正確な理由づけや論拠を読み取るこ とはできず、正確な情報伝達の文書として機能させることは難しいのが 実情です。このようなプレゼンテーションソフトウェアに対する批判や 警告、使用とりやめの提案は、情報技術の分野では1990年代から存在し ています。学校教育の目的は児童・生徒に「わかった気にさせる」こと ではなく「本当に理解させる」ことであり、また「自分の考えを筋道立 てた文章により説明する」能力を養うことでもあります。デジタル教科 書の使用によって、教員が「プレゼンテーションによって理解させた気 に」なったり、児童・生徒に「魅力的なスライドを作ることが大切」だ と誤解させるような事態が発生しないための配慮が必要です。

事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配慮すること。
解説: 動画をはじめとする一部のデジタル教材は、それを生徒に使用さ せておくだけで一定の時間が消費されるという特性を持ちます。このこ とは、当該教科に対する十分な指導能力を持たない教員でも、形の上で は授業をこなせているように見せかけられることにつながります。しか し、生徒の本質的な学習や理解のためには、教員の指導能力が本質的に 必要であり、なおかつ最重要の要因であることは言うまでもありません。 そして、新しい教材を導入するということは、その教室での使用に先だっ て、十分な教材研究が必要となることも明らかです。従って、デジタル 教科書の導入に当たっては、教員の教育能力を重視するという姿勢を明 確に打ち出すとともに、各教員が新たな教材や教育内容の変化に対応で きるだけの教材研究の時間を継続的に確保できるような配慮を強く求め ます。

事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。
解説: 「デジタル教科書」の導入に際して、紙媒体の検定教科書を全面 的に廃止して電子機器に移行するという考えがありますが、これは極め て大きな変化であり、十分な時間を掛けて得失を見極める必要がありま す。たとえば、これまでのe-learningなどにおける知見として、児童・ 生徒の中には一定時間(たとえば30分)以上、コンピュータ画面を見つづ けることが困難な者が含まれるとの報告がありますが、紙媒体の廃止は そのような者にとっては「教科書で学習できなくなる」という重大な問 題を招くことにつながります。このことを踏まえ、検定教科書について は、少なくとも見極めが済むまでは、紙媒体の使用を継続(ないし併用) すべきと考えます。また、教科書採択において、デジタル教科書のみを 対象とすることは、視覚効果や高価なアニメーションキャラクタの使用 などが結果的に大きく影響してしまい、肝心な記述内容の適切さ、学習 の進めやすさの評価がおろそかになる危険が大きいと考えます。このた め、少なくとも紙媒体が併用される当面の期間においては、あくまでも 紙の教科書を基準とし、そのデジタル版が併用される、という形を取る ことを要望します。

うわぁ~、この「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望とその解説

めっちゃ、ようわかるやん!さすが専門家や。

なるほど、「デジタル教科書」をはじめICT教育って、これからの時代避けて通られへん大事なことやけど、

一歩間違うと、とんでもないことになるってことやねんなん。納得できるわ~。

それやのに、たった、3年で全校実施って、急ぎすぎやないの?

しかも、150億円もかけてやで!

なんか、話題づくりって言うだけやなく、IT産業とのウラでもあるんちゃうかって勘ぐりたくなるわ。

それに、なにより、これでまた、子どもがこの世の中で生きていく力ってまたそがれるんちゃうん。

適当に遊ばせといたら、それでええーなんて考えてもらった困るんやけど。

これって、教育がどういうものか、知らん奴の発想やな。

(大阪のおばちゃんより)

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