佐藤訓子(元豊中小学校教員)「君が代」戒告取消控訴審・判決が出ます。
9月26日(木) 13:45~
大阪高裁74号法廷
ご都合がつきましたら、ぜひ傍聴支援をよろしくお願いします。
なお、閉廷後、近隣の弁護士会館904号室で、報告集会を開催します。
すでにご存知の方も多いと思いますが、8月2日大阪市吉村洋文市長が全国学力テストの順位に腹を立て、橋下前市長から受け継いだ維新教育政策そのままの競争原理に基づく人事評価を打ち出しました。
その後多方面から起こった批判の声をまるで無視するかのように、たった1回の大阪市総合教育会議で吉村市長の、「子どものテストの点数で教員の人事評価が決まる」という前代未聞の方針が決められてしまいました。大阪の教育の行方は??まずは、教科書の会の橋本さんの傍聴報告記を掲載します。
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大阪市総合教育会議9月14日(傍聴報告) 「教科書の会」橋本記
翌日の朝日新聞の報道では、「市の総合教育会議では、市長が市教委に制度設計をするように求め、出席者から異論はなかった。市教委はこの要請を受けて制度設計の検討を始める。」と。
全体を傍聴していると、市長の提案に、積極的に賛成する意見はほぼなかったと感じたが、「総合教育会議」自体が、市長が教育行政に直接介入先導するために作られたものであり(2015年)、この会議でも最初から膨大な資料が配布され方針が明記具体化されていた。市長の提案にはっきりと反対しなければ、そのまま市長意見で方針が決定され進められる――ということであった。
( 太字は重大事項で問題にすべきと思われる部分。黄色マーカーは放置できない発言と思われる部分。
下線部は、注目発言。青字は橋本の、まとめ・コメント・感想 )
早くから報道関係、傍聴者が多く集まっていた。
→傍聴者は全員入れた。(約20人。 30人くらいまでは入れる椅子の用意があった。)
【「平成30年度総合教育会議第2回」会議―議題「全国学力・学習状況調査を受けた対応について」
配布資料1、「全国学力・学習状況調査」における各学校の数値目標について
→H31年度「全国学力調査」での具体的学校目標(上げる得点)の出し方
2、校長経営戦略支援予算について
3、校長・教員に係る新人事評価制度について(平成30年度~)
4、新たな人事評価制度と学力向上データの利用について(大森からの提案)
5、学校・教員に対する金銭的なインセンティブが児童・生徒の学力に与える影響
(慶應義塾大学 総合政策学部 中室牧子)
6、学力向上に向けた取り組みについて
→「学力向上に向けた授業評価手法の検討」「小3から中3までの経年的分析可能な学力 調査・テスト結果に加え、一人ひとりの学習履歴を集積し可視化する『教育ビッグデータ活用検討プロジェクトチーム』を設置する。」
7、平成30年度全国学力・学習状況調査結果からみえる学校の変容 】
【開始―吉村市長】
「本日の議題は大阪の子どもの学力と教員の評価についてである。この問題は、報道でも悪く書かれているが。この2年間大阪は成績が最下位。危機感を持っている。子どもの学力をどう高めていくかが重要。学力をつける要素は、学校、家庭にある。遺伝的なものをある。 全員一律に高い点数を取れとは思っていない。30点層を35点に、80点層を85点に、5点あげることに力を入れたい。向こう側にある学力をいかに上げるかだ。結果として最下位を脱出したい。学力を上げる取り組みはこれまでもやっている、教師研修、課題ある学校への支援など。これは続けて行くが。今の教員の評価が納得できない。一番がんばっているSSの教師が0.5%しかいない。最下位が0.1%。ほとんどがS,A,Bで、これでは頑張っている先生が評価されているとは言えない。主観的評価に客観的評価をいれたい。子どもの学力を上げたという点も入れたい。」
【大阪市特別顧問 大森不二雄】
「 配布資料4で、提案する。この問題は唐突に始まったはなしではない。
1.関連施策の検討経緯 大阪市教育振興基本計画では~~。~~。
2.学力向上指標の開発について
(1)~~~大阪市は政令指定都市の中で最下位であった。~~行政・学校・教職員一丸となって学力向上に取り組むには。各層における『結果』に対して『責任』を負う体制を明確化する必要がある。~~~~~ 以上のような認識と上記1の経過を踏まえ、公正・公平で客観的なデータ指標として学力向上度を測る指標を開発すること、並びに、その基盤となる教育ビッグデータ・システムの構築を加速することを提案する。
(2)教員学力向上指標を開発~~
(3)学校別学力向上指標~~
3.新たな人事評価制度について
(1)新たな人事評価の在り方
(2)一般教員について
(3)校長について
(4)その他の職種について
4.行政の責務について
(1)教育委員会事務局の学力向上責任者について
(2)区担当教育次長について
(3)その他 この提案文書は人事評価の制度設計に焦点を絞り、『教員別学力向上指標』対象外の教員及び様々な職種を含む教職員全体にとって、公正・公平な人事評価を確保することを前提とした上で、公正公平な評価のために 『教員別学力向上指標』が利用可能な教員及び~利用可能な校長について、客観的な評価基準の一つとして活用することを提案するものである。~~~~~~~~ 」
提案説明の中で、大森は「評価基準について 評価者は気に入られないといけない。評価は権力である。 データ測定が必要。これは権力ではない。~~云々」とも言う。
【教委事務局・水口、井上】 資料1、資料2を説明。
「 全国学力・学習状況における大阪市の数値目標
次年度めざすべき標準化得点(15位相当)
次年度・平成31年度 小・国語97点(今年81.8点) 算数98点(今年93.4点)
中・国語97点(今年93.4点) 数学98点(今年94.9点)
各学校の数値目標の設定について
各学校の目標値は、H31年度『全国学力・学習状況調査』対象となる児童生徒(現小学校5年・
中学2年)のH29年度『小学校経年学力調査』及び『チャレンジテスト』の結果より算出
(中学校)全校一律で向上させる得点を設定
(小学校)児童一人一人の伸びしろを勘案し、学校ごとに向上させる得点を設定
課題 ◆標準化得点を指標に活用することによる課題
◆人事評価の評価指標として活用していくことへの課題
対応の方向性 □経年比較を可能とする学力調査の検討(統計学的な視野も入れて)
□公平・公正な学力指標の検討(~~学校別目標を設定することは可能であるが、学
力指標を人事評価・給与に反映する場合、公平・公正なものにする必要がある。 」
「 人事評価制度について、従前の制度 → 平成30年度の人事評価
自己申告表・3段階で評価 目標管理シート・5段階で評価点数づけ
評価育成シート・3段階で評価 人事考課シート・9段階で評価点数づけ
評価項目6項目ときめ細かく分類
絶対評価 絶対評価結果を一部(上位)相対化
(概ねの分布割合)
SS0.6% S32.3% A65.1% B1.9%C0.1%
→ 第1区分5% 第2区分20% 第3区分以下75% 」
【再度-大森】
「資料4で意見をさらに言わせてもらう。新たな人事評価制度の在り方について。~~資料4の中の別紙(1)のような制度を提案する。~~~~~~~~~~ 一部新聞報道は、たいへん不満だ。 」
【中室牧子・慶應義塾大学総合政策学部】
「学校・教員に対する金銭的なインセンティブが児童・生徒の学力に与える影響-経済学の研究成果
から-」資料5の発表
「(基本主張)
◎学力テストと教員の給与やボーナスを連動させる取り組みは、海外では決してめずらしいものと
は言えない。米国では2004~12年の間に、教員に対する金銭的なインセンティブを付与する学区は
40%近くも増加。デンマーク、インド、イスラエル、ケニア、ハンガリー、ノルウェー等多くの國
で実施されている。
◎ただし、この取り組みについての効果は国や地域によって区々(まちまち)となっている。期待され
る成果を上げるためには『制度設計』が極めて重要。
(説明の中に) 日本の学力テストの点数に与える影響をみると、本人・家庭要因が50%程度を説
明 中3時点の学力の35%を、最終学歴の27%を遺伝的な要因が説明(英国では中3の学力
58%) 」
【大阪市事務局顧問西村】
「市長の提案を評価する。モデル校だけの取り組みではだめである。」
【再度吉村市長】
「この問題では、さんざんメディアに批判されてきたが~~。 ここでも問題になっている子どもの
貧困対策について、自分はやってきたし、今後も引き続き力を入れたい。しかし、学校は福祉施設ではないので、学力向上は重大問題。付加価値をあげることをいかに進めていくか、がんばる教師を評価していくかが、課題だ。」
【林教育委員】
「市長の意見は理解する。反対ではない。~~長期的な取り組みも大事。今モデル校でやっている取り
組み(指導主事が学校を回り授業改善指導)をもっと広げて充実させることも大事。~~~人事評価
は納得のある指標を。チームとしての評価をまず第一に考えるべき。 」 →弱いが市長方針支持
【平井教育委員】
「あくまでも主役は子どもである。授業が重要。昨年の学校評価の取り組みを充実させるべき(?)
大阪市の数学アップ算数ワーキングの取り組みの結果を待つべきでは。~ビッグデータだけでなく、個々の子どもの学力がどれだけ上がってきたかを見るようにするべき。国語、算数・数学の評価だけでないのでは?教員も担当が音楽・家庭科など、他の教科の場合人事評価はどうなるのか?4月に担任が替わってすぐの『全国学テ』は人事評価と連動させていいのか?」 →弱いが市長方針に反対
【巽教育委員】
「中3での英語教育、コミュニケーション力や自己肯定感をあげる取り組みは向上し、顕著に伸びて
きている。良い部分も肯定的にとらえるべき。学力テストで評価するならば、経年調査が必要。大森氏の別紙(1)について、学力と体力は、全く別の概念である。平井委員意見に同感。実際に現場教師のモチベーションを下げるような制度は、早急にするのはよくない。時間をかけるべき。」
→弱いが市長方針に反対
【森末教育委員】
「慎重にするべき。指標をきちんとかためる必要がある。地方公務員法23条違反になりかねない。」
→はっきりとは言わないが市長方針に反対??
【ここでまた-大森】
「2020年度には人事評価は、本格実施である。これを考えると責任を持って進めるべき。いままだや
れないというのは無責任だ。~~~~。」 →語調きつく明らかに教育委員への脅し発言であった。。
【吉村市長が質問】→ 【中室牧子教授返答】
「付加価値(学力の変化幅)を考慮する必要。
この制度を教員に理解を得ることは難しい、別問題。」
【林教育委員】 「生徒数の母体も変わるので、経年調査も正しいものにはならない。」
【吉村市長】 「学力あげることと教員評価――――お金にからめること自体が間違いだと言われる。」
【森末教育委員】 「評価への反映には賛成だが、その指標を作ることがたいへんである。」
→本当は、やはり市長方針に賛成であった!
【中室牧子教授】 「これを進めると他国の資料を見ると、『生徒をテスト日に休ませたり、点数記録
を変えたりすることが起こった』ともある。お金を与えられると逆にモチベーショ
ンが下がるということも見られる。」 →このことを最初から説明すべきだった。
給与反映支持している?この人でさえ、大きな問題点を指摘した!
【吉村市長】 「おまえのやり方をやったら、よけいやる気をなくすぞ、とさんざん言われてきた。」
【大森】 話をひきもどそうと「だれが見てもすごいね、と言われる先生がまっとうな評価をされるこ
とが必要。2020年度から本格実施だ。よりベターな評価制度を。」
【吉村市長】 「この先生は子どもの学力を下げるという先生を低く評価すべきだと、自分は思う。」
【中室牧子教授】 「がんばる先生を評価することは、私も賛成。しかし進めると、現場教師が大阪
市から逃げていくということも起こりえる。」
→鋭い指摘!市長案に基本賛成の学者でさえ。
【吉村市長】 「大森特別顧問の提案をベースに進めていきたい。2019年度に施行実施をし、2020年
度は実際に実施し、評価を教員に反映させたい。」 →やはりごり押し
「学校の先生の負担をなくす取り組みも教委からどんどん提案してほしい。
夜の電話対応をしないなど、進めてほしい。」 ~終了~
吉村市長の異様な強行姿勢を、大森顧問が強く後押しし、方針を具体的に作り進めている感じであった。教育委員5人中、2人は反対意見、1人は消極的な賛成姿勢だけを示したが、それらは結局無視された。 5人中の一人、山本教育長の発言があったのか黙っていたのか? あればどの発言だったのか?が、はっきりわからない。
ひどい方針提起であるために、賛成者でさえ疑問点を多く出している。今後、問題点・反動性を一つひとつ明らかにした批判していく必要がある。
こんなことにエネルギーと人員・予算を使っていること、会議で論議していること自体が、無駄であり大阪市の子ども達のために全くならない。このエネルギーと予算を、給食無償化、資料集問題集や副教材等の無償化、教職員増のために回さないのか?考えられないのか?と、あきれるばかり。
「学力をつける要素に遺伝的なものもある」「遺伝的要因」とか、差別的な問題発言が公然とされることにも驚かされた。