本日(6/9)の、「君が代」不起立減給処分取消訴訟辻谷事案・奥野事案、両法廷にたくさんの方に傍聴にお越しいただきありがとうございました。
本日配付しました、Tネット通信号外転載しますのでお読みいただければ幸いです。
Tネット通信号外2014.6.9
「君が代」不起立減給処分取消訴訟の経過と今後
大阪「君が代」強制条例(2011.6.13施行)ならびに、その処分条例とも言うべき大阪府職員基本条例(2012.4.1施行)は憲法に違反すると、2014年1月20日、不起立減給処分の取消を訴えました。提訴、第1回口頭弁論、多くの方々の支援に深く感謝しています。今後とも、大阪の教育のあり方について考えていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。
教育裁判として~
司法に訴え、多くの市民と語り合うことから始めます。
これまでの「君が代」裁判を振り返れば、いまだ司法は公教育の本質を理解していないように思えます。本裁判は、教育への「日の丸・君が代」強制に対して起こされたこれまでの数々の裁判を引き継ぐとともに、大阪の特質とも言うべき、教職員の思考停止を招く問答無用の条例による教職員の「君が代」起立・斉唱の強制が公教育をどのような悪影響を与えるかを問います。そしてそもそも公教育とは何か、教科書はだれのものか、教育委員会制度はどうあるべきか、教育への政治の介入はなぜ問題であるのか等々、多くの方々と意見を交わす契機にしたいと考えます。
労働裁判として~
不起立を3度すればクビ!
そんな条例をそのままにしておくわけにはいきません。
大阪府・市職員基本条例では、同一職務命令に3回違反すれば免職と規定しています。これは、労働者にとって生命線そのものと言える職を失いたくなければ、自らの人権を放棄し面従腹背で「君が代」起立斉唱せよということに他なりません。最高裁は、「君が代」不起立処分について、自らの思想・良心、世界観に基づく行為であり、減給・停職等戒告を超える処分は、給与上等の不利益とその拡大の危険等を勘案し、それまでの東京都教委によって行われていた累積加重処分を戒め、減給処分を取り消す判決を示しました。それにもかかわらず、大阪では、「君が代」不起立三度でクビ!と定めた条例をあえて制定施行しました。教育公務労働者の職を理不尽に奪う職員基本条例をこのままにしておくわけにはいきません。
憲法裁判として~
ないがしろにされつつある憲法の精神を生かします。
そして、解釈改憲が政権によって主張される今、憲法を通して条例・職務命令・処分の不当性を訴えていくことが公務員として憲法を尊重し擁護する義務を果たすことにつながると考えます。そしてそれこそが、本裁判の最も大きな課題かもしれません。
原告より
2011年6月13日「君が代」強制条例施行以来、府立学校教員で「君が代」不起立のより減給処分を受けたのは、私と奥野さんの2人だけです。今春2014年の卒業式「君が代」不起立被処分者のなかには、2度目の「不起立」の教員が2名いました。しかし、私や奥野さんとは違い、いずれも戒告処分でした。これは、差し止め訴訟が提起されたことも大きな要因ですが、府教委がこれ以上、減給処分を出し、提訴されることを嫌ったためではないかと考えています。
2012年1月16日、最高裁第一小法廷は、「君が代」処分取消について、分断判決を出しました。同じ不起立行為の処分に関して、河原井純子さんの停職一カ月は裁量権の濫用と取消を認め、根津公子さんの停職三か月は、裁量権の濫用とまでは言えないとして上告を棄却し取消を認めませんでした。判決文では、不起立行為は、歴史観・世界観に由来する行為であることを認め、いわゆる累積加重処分による減給・停職処分は多大な給与上ないし職務上の不利益をもたらすものとして深く戒めました。
このとき、大阪維新の会は、既に「君が代」不起立免職条例案を公表していたのですが、大阪府松井知事は、報道陣の取材に対して「不起立で免職を定める規定については考え直す必要がある」と答えましたが、橋下市長は、譲らず「機械的に、処分を加重しなければいいんでしょ」と答え、結局、数か月後、維新の会の原案通り同一職務命令に3度違反すれば免職、つまり3度の不起立でクビと規定した職員基本条例を制定施行させました。
このことから考えれば、大阪府(教育委員会)は、累積加重処分では、法的争いに勝ち目がないことは十分に認識しているはずです。しかし、橋下市長の言うところの「機械的な処分ではない」ことにする為の処分後の過剰な研修を大阪府教委は実施していません。「機械的な処分ではない」」という為には、処分後、量・質とも過剰な研修を実施し、それでも繰り返したと言うような、いわばアリバイ的な研修を課す必要があるわけですが、大阪府教委の研修は良くも悪くも短時間のお粗末なものでしかありません。
にもかかわらず、昨年の卒業式、2度目の不起立行為により、教育委員会は私と奥野さんに減給処分を下しました。その時点で累積加重100%処分です。そして私たち2名は2名とも訴訟を起こしました。
アリバイなしで減給処分を下した府教委は、法廷で、それが、最高裁が戒めた累積加重処分ではなく、減給処分を出すに相当する「過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情が認められる場合」であったことを主張し、それを裁判官に認定させるため血みどろの苦闘をしかけてくることが予想されます。
つまり、最高裁のダブルスタンダード―市民の多くの声を考慮して、累積加重処分による減給・停職には、待ったをかけながら、一方で「君が代」装置つまり「君が代」を使って学校の規律や秩序の保持等の必要性のためには「戒告⇒減給」処分というウルトラショブンも確保しておく―大阪地裁でもそれが踏襲される可能性があります。
そうさせないためには、本裁判に多くの方に注目していただき、条例により有無を言わさず「君が代」起立・斉唱を強制し、処分されたくなければ面従腹背で従えというような遣り方が果たして大阪の教育で許されるのかどうか、ともに声を発していただきたいと思います。それが裁判所にも必ずや影響を与えると信じます。このような条例のもとで、一元的な価値観すなわち「君が代」のもとにすべてが日本人として束ねられるような教育の先に何が待っているのか、そのことについて多くの方々と思いを共有したいと思います。