晴れ上がった空のように・・

日常の出来事や読んだ本の紹介

青山娼館

2006年02月23日 | 
「からだを売る」ことは、なんと潔いことなんだろう・・

新刊書籍の「おび」の表紙をかざるこのショッキングなキャッチコピーから、思わず本を手にとった人も多かったことでしょう。小池真理子のこの作品は文学史上衝撃的事件と言える問題作とまで・・ちょっと大げさに宣伝していました。

小池真理子さんの新刊本を読むのは久々とあって、期待は大きく膨らんでいました。いつものようにぐいぐい引き込まれ300ページほどをめくるのにそう時間はかからなかったです

ストーリーは・・2歳の娘を不慮の事故で死なせてしまった、シングルマザーの「奈月」(32さい)。絶望と孤独に苦しんでいる時、高級娼館で娼婦をしている旧友と出会い、自分も興味をもち、そこで娼婦として働くようになる・・

とまぁ、こんな話ですが・・
率直に言って、主人公、「奈月」の不幸なおいたちは心情的に理解できるが、その生き方や考え方にはついていけない部分がありました。もちろん「娼婦」という、特異な職業?でもあるし、きわめて現実ばなれした、高級娼館での暮しはまるで中世ヨーロッパの
貴族の秘密クラブのようです。

スリリングな話の展開と人物の心理描写はいつものことながら、唸るほど巧みであります。性描写はこの手の小説には欠かせない場面としてでてきますが、大人の読者には充分楽しめた部分でもあるでしょう・・しかし、決してこれが「官能小説」でないことは言うまでもありません。

「慟哭(どうこく)」という言葉が何度もでてきました。深い怒りと悲しみ・・
人生において絶望的で致命的などうしようもない悲しみに追いやられた時、人はどんな風に心とからだを癒すことができるのでしょうか?

死と隣り合わせの人間の再生・・そんな絶対的な強さ、を書きたかったんでしょうね

読み終えて直後は、理解するのに時間がかかるような気がします・・
「奈月」に共感はあまりもてないけれど、(私にはおそらく娼婦という仕事はできないから)多くの登場人物のありかたは痛ましく、力強く、深い感動すらおぼえるのは何故でしょう・?
一言では表せない、問題作です




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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-02-23 22:34:03
最近のニュースでは毎日誰かが逃れられない苦しみに直面している…もしかしたら、もっとつらい現実に身を置く!そして娼婦に身を置き、慟哭をしているほうが楽ということなのかもしれない。
慟哭 (yuyupure)
2006-02-24 17:00:58
Unknownさん、コメントありがとうございます(*_*)



そうでうね・・極限状態の悲しみや怒りのなかで、もがき苦しみ、そして、いつしか何も感じなくなる。すべてが無機質になる。自分の肉体も心も。でも、生きている、生きていこうとおもう時、人は強くなれるのでしょうか・・。精神世界の修行ですね。子供を亡くした友をおもった時、改めて、彼女の苦しみ悲しみを知ったような気がしました。私はまだまだ甘いです。

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