9月4日にアウェーで行われた2024JリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド準々決勝第1戦川崎フロンターレ戦ですが、試合結果は0対1でヴァンフォーレは敗れてしまいました。
☆リーグ戦から先発2人変更
先週末のリーグ戦から中2日の川崎と中3日のヴァンフォーレ。ともに過密日程となっていたため大幅な選手入れ替えが予想されていました。その予想通り7人変更と普段出番に恵まれていない選手を多数メンバー入りさせてフレッシュな状態で臨む川崎に対し、ヴァンフォーレはリーグ戦の鹿児島戦からわずか2人の変更に留めます。まず1人目は3バックの一角を務めていたヘナトアウグスト選手に代えてリーグ戦のほとんどの試合に出場し守備貢献している関口選手の起用。そして1トップには三平選手に代えて力強いドリブル突破が武器のブラジル人アダイウトン選手を抜擢。今シーズンのリーグ戦のほとんどの試合に出場してきた関口選手は前節休養の意味合いも込めての欠場だったので元に戻ったかたちとなりましたが、アダイウトン選手は本来サイドを主戦場にしているアタッカーなので、中央の最前線に起用したことで多少相手からのプレッシャーを受けても怯まず当たり負けせずにゴリゴリと前に進んでいく推進力が期待されていたと思います。チーム的には選手たちの試合勘が失われていないこととあまり選手を替えてないことによる連携力の持続で川崎に勝負を挑みました。
☆先制は川崎
試合が動いたのは前半27分。川崎はこちらの3バックの脇にスルーパスを出すとエリソン選手が反応。一旦はGK渋谷選手が飛び出して先にボールに触れるものの、そのクリア先にいたのが得点した遠野選手でした。ボレー気味のパスを横にいた脇坂選手に送るとすぐにリターン。すると再び叩きつける弾道のボレーを放ち、豪快なシュートがGKがいないゴールに突き刺さります。ヴァンフォーレ守備陣も渋谷選手が飛び出してからゴールライン付近でカバーしていたものの、やはりバウンドした強烈なシュートにはうまく反応できませんでしたね。このシーンでは最前線で仕掛けようとしたエリソン選手に守備陣の目線が集中してしまったことが良くなかったポイント。それにより少し下がり目でポジショニングを取っていた遠野選手や脇坂選手をフリーの状態にしていたことが痛かったですね。クリアした先でボールを受けた遠野選手は全くのフリーの状態で、その時点で色々な攻撃の選択肢を考える時間の余裕を与えてしまいました。またパスを出しリターンをもらってもまだなおフリーだったのは直前まで遠野選手についていた飯田選手のマークが緩んだからだと思います。ゴール前でフリーになるポジショニングをとる遠野選手や脇坂選手のしたたかさ&相手の心の隙を見逃さない冷静さはさすがJ1のクラブだなと思いましたね。
☆存在感を示す鳥海選手
1点を先に決められたヴァンフォーレでしたが、戦う気持ちは落ち込むことなく前を向いて自分たちの得意とするスタイルを出そうと努力していきます。その反撃の中心になっていたのは鳥海選手。シャドーの一角に入ってチームに躍動感を与える攻撃の主軸になっていた鳥海選手は、ゴールが見えたら強烈なミドルシュートを放つなど積極的な姿勢をみせます。飛んだコースは良かったのですが、川崎GK山口選手に防がれてゴールならず。また三沢選手のパスを受けた鳥海選手がピッチ中央でドリブルを開始。相手選手をフェイントでかわしながら強烈な右足を振り抜くと、このシュートも伸ばした相手GKの手に当たって弾道が変わりゴールバーに直撃してゴールならず。鳥海選手は前半を中心に惜しいシーンを作り出せており、川崎側も彼にボールを持たせたら危険という認識に変わったと思います。ここで1点が取れたらまた違う試合展開になっていたと思うので、少しもったいない気がしましたね。鳥海選手の他にも飯田選手が攻撃参加し地を這うようなシュートはわずかにゴール右隅を外れていくなど、守勢にまわっていたものの決して防戦一方ではなくやり返していたところが良かったですね。
☆VAR発動でノーゴール
1点のビハインドで折り返した後半も川崎にボールを保持される展開が続きます。後半12分にはクロスボールをトラップしたエリソン選手がゴールに押し込んだかと思われたシーンはハンドによりノーゴールに。今大会の準々決勝から採用されているVAR(ビデオ アシスタント レフェリー)が発動し、追加点の危機を免れたヴァンフォーレ。追加点を決められて2点差となるのとゴールが取り消されて現状をキープできるのとでは精神的にもだいぶ違うということで、そこからゴール裏サポーターの応援がより一層ヒートアップ。その声援に後押しされるように選手たちの動きも一段階ギアが入ったように思いましたね。ヴァンフォーレが最後まで踏ん張れるようになったのもこのVAR判定の転機が大きかった気がします。
☆懸命なディフェンス
1点は決めていたものの接戦の状態から2点目を狙いたい川崎は、後半29分にJ1で現在11得点を挙げている山田選手&大黒柱の家長選手&元ヴァンフォーレの三浦選手を次々と投入。さらに後半39分には抜群の突破力をみせるマルシーニョ選手も出場するなど、リーグ戦の主力を起用して突き離しにかかります。しかしヴァンフォーレの粘り強さは継続しており、3バックの中央に位置する林田選手が統率する守備ブロックはなかなか崩れず。ポゼッションで細かくパスを繋ぎながらジリジリと人数をかけて攻撃を仕掛けてくる川崎に対して、焦れずに体を張ってディフェンスできていたことが素晴らしかったですね。気持ちが途切れずに最後まで集中して守れたことは必ず次に繋がると思います。
☆決定的チャンスは…
長い時間耐えてきたヴァンフォーレですが、後半43分にこの試合最大のチャンスが訪れます。途中出場のウタカ選手が相手選手のGKに返すバックパスをエリア内でパスカット。突然フリーとなり相手GKと1対1の場面が生まれますが、ウタカ選手は向かってくるGK山口選手を振り切れずに時間を使うと、最後は角度のない位置からシュートを放ちますが戻ってきたセサルアイダル選手にブロックされます。絶好の機会を逸してしまったヴァンフォーレ。最近のリーグ戦では5試合ゴールに遠ざかっているウタカ選手。突然巡ってきた決定機に決めたいという欲が強く出てしまい、横で押し込むだけの体勢で待っていた中山選手に気づけなかったのは痛かったですね。終盤の決定的チャンスをモノにできずに終わったこの試合は0対1で敗れてしまいました。
☆敗因は?
この試合ヴァンフォーレが敗れてしまった要因として、アダイウトン選手の1トップ起用が不発に終わったことを挙げたいと思います。大塚監督の狙いでは彼の屈強なフィジカルを駆使して中央の位置でボールをキープしながら力強いドリブルでグイグイと押し込んでいくことにより、そこを攻撃の起点としてチームの攻撃を仕掛けたいと思っていたはずです。また前線にできたスペースにアダイウトン選手を走らせてチャンスメークすることも想定に入れていたと思います。しかし川崎守備陣は屈強なセサルアイダル選手が彼と競り合い、そのこぼれ球を車屋選手が回収する複数人が対応することでアダイウトン選手を封じることに成功していましたね。またアダイウトン選手はボールを受けて反転して裏に抜け出そうとするプレーを頻繁に狙っていましたが、その動きも川崎守備陣はセーフティにタッチラインに蹴り出すことで対応ができていました。スピードに乗った重戦車のアダイウトン選手を止めることはJ1のクラブでも難しいと思いますが、今回はスピードに乗る前にうまく川崎守備陣に対応された印象で試合中彼が輝く場面は終始訪れませんでした。
またヴァンフォーレはトップのアダイウトン選手と鳥海選手&三沢選手のシャドーの位置関係は保っていたものの、その3人から2ボランチの位置が離れていたため川崎の選手がヴァンフォーレの守備のファーストコンタクトでうまくいなすことができたらその後は比較的プレッシャーの少ない時間が生まれていたので、前に出ていく組織的な守備の陣形のコンパクトさの維持も少し気になるポイントでした。そういう隙を見せていると川崎は徹底的かつしたたかに狙ってくるので、第2戦に向けて意識して修正していかないといけないところだと思います。
…この敗戦により1点のビハインドで次の第2戦に臨むことになりました。しかしヴァンフォーレは懸命なディフェンスをみせて追加点を奪われなかったこと、そしてたくさんのサポーターが集まるホームゲームでリベンジの心が燃えているなど、第2戦に向けてポジティブになれる要素は確実にあると思います。勝敗は2戦トータルで決まるのでまだまだ分かりません。ヴァンフォーレが不利な状況というのは確かにありますが、一発でその状況がガラリと変わる可能性も秘めています。可能性を信じて力強く戦い、逆転での準決勝進出を目指しましょう!
【AWAY REPORT】ルヴァン杯 7年ぶりの川崎と接戦へ。
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