最近よく聞くようになった「リスキリング」という言葉、<新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること>(経済産業省のここから)ということらしいが、テレビで「リスキリング」の音を聞く度に、居心地が悪い発音に違和感がいっぱいになるのは、私だけだろうか。
「リスク」があるの?「リス」がどうしたの?と最初は訳が分からなかった。実際の発音はどうかというと、Cambridge Dictionaryのココで、英国と米国の両方の発音が聞けるので聞いてみてほしい。
米国の発音では確かに今放送で発音されているように、リがやや強く発音されているようにも聞こえるが、意味としては、英国の発音のように「リ・スキリング」のように、リがやや強く感じられるように発音してほしい。米国の発音を真似するにしても、「reー」が連想されるくらいには「リ」の後に微かな隙間がほしいと感じる。 是非、「リスキリング」を発音する時には、頭に”reskilling”という字を思い出せるくらいには、[re]を感じて発音してほしい。
ところで、発音に関して、今、ちょうど読み終えた黒沼ユリ子さんの「おんじゅく日記」に<「R」と「L]は別の音です>という話が出てきて、「確かに!」と同感したことがあった。 ヴァイオリニストの黒沼さんはチェコ、メキシコ、日本を中心に世界を巡り活躍する中で、日本人が「R」と「L」の区別がつかないことについて、車のライトも、右のライトも区別をつけず、ドレミの歌を「レモンのレ」と間違って使っている問題を指摘していた。 ドレミ(Do-Re-Mi) の”Re”は”LemonのLe”ではないのだ。
実は、黒沼さんはスペイン語での「R」「L]も同じとして書いていたようだが、私も「レモンのレ」で育って、ポルトガル語を習った時に苦労した。ブラジルでもこのRとLの発音の違いは、目立つようで、"Magali"という現地では人気のMonicaの友達シリーズの漫画本で、主人公のMagaliが、よくRとLの発音を間違えるのをわざと、間違ったRやLの使い方をした時には、それを太字にして表現していたのを思い出した。当時の私を含む日本人のポルトガル語は、きっと太字で強調したくなるように、現地の人の耳には「?」と注意を引いてしまうことがあったと思う。幼児が間違えのように聞こえたのかと思う。
さらに、黒沼さんが指摘していたのが、「ト」。私も「ヴァイオリニスト」と最初に書いたが、この「ト」も”Violinist" で最後の音は子音のtで終わり、ト(to) とoの音はいらない。確かに! ついでながら、「バイオリニスト」と書く時もあるが、Vを「バ」にするのも間違い。ボリュームやボイス(Vollum , Voice)も、(Botanist, Boss)のBの発音とは区別をつけたい。明治時代の指導者は区別をつけていたのに、誰が変えてしまったのかと黒沼さんは日本語のカタカナについて言語学会に再考察を訴えていた。
外国語を話す時、カタカナ英語は役に立つときもあったが、欠点もある。それをなくしていく努力を言語学会には担っていってほしいと私も思った。