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原発被災者の今を知る(堀川さんご夫妻に聞く)

2023-01-21 22:12:55 | 知ろう福島のこと

   中筋純さんの写真展については、このブログのココに書いたが、昨日行ってみたら、中筋さんが動画でその解体の様子を撮影し公開した(”Fine” 11分ほどの動画がココで見られます)家の家主・堀川さんご夫妻が来ていた。明日のイベントトークのために、静岡県から遠路を車でいらしてくれたとのことで、お話することができた。

   堀川さんご夫妻は、下にある本を出版したご夫妻でもあり、本の下のところに書いているように、浪江町で小さな塾をしていたとのこと。「小さな」と書いてあるが、67人の塾生がいた塾を経営しながら、趣味の釣りやソーシャルダンスを楽しんでいた話を聞いた。自然に恵まれた素晴らしい土地で楽しく人生を過ごしていたのが分かった、福島原発事故までは・・・。

   この「手紙」という本を書くに至った経緯は、今ご夫妻が住んでいる静岡のテレビ局が報道したものがyoutubeのココで見られて、7分ほどでとても分かりやすいお知らせになっていた。実際の震災後の自宅の様子などもみられるので、下の写真クリックでも見られるので、まず見て頂くのがお薦め。

     

    突然起こった東日本大震災と福島原発事故。福島県内外への避難者は16万人以上にも及んだ(ココに統計がある)というが、その一人一人が大切な自分の居場所から引き裂かれた生活を余儀なくされた痛みは、想像を絶する。

    今回、堀川ご夫妻とお話しながら、(福島県の避難者が負った被災は、単なる大地震・津波などの自然災害にとどまらなかったこと。他地域の被災者との決定的な違いを、日本中の人が、深く心にとめておかないといけない)と、強く感じた。

    救助活動も、原発の放射能飛散に伴い中断せざるをえず、緊急の待避を迫られたことは、食堂や宴会場の食べ物がそのままに放置され埃にまみれになった写真(2014年から福島の帰還困難地区に入った中筋さん撮影のもの)の数々が物語る。

    これが、大地震や津波の問題だけだったなら、余震は気をつけないといけないが、直ぐに復旧作業に入ることもできた。でも、福島では目に見えない放射能により、帰還が禁止されまったく入れなくなる地域も多かった。また、除染が進んでもなお、防護服に線量計をつけて、限られた時間のみしか立ち入れない地域があった。ただの地震災害ではなかった「違い」を頭に刻みこまないといけない。

    堀川さんの話を聞いて、驚かされることが多々あった。

    それは、直接にもお話でも聞いたが、堀川さんが教えてくださった椎名誠さんの奥様の渡辺一枝さんの「一枝通信」のココにも詳細に載っている話だ。渡辺一枝さんは、原発事故以降、頻繁に福島を訪れ、問題を発信し続けているとのこと。実は、椎名誠さんは知っていたが、奥様のことは全く知らなかった。どんな方なのかは、ココに書いてあった>

    一枝さんが、2022年7月2日(土)午後2時~神楽坂のセッションハウスギャラリーで<トークの会「福島の声を聞こう!」vol.41>として、堀川ご夫妻と、その家の解体記録を録って公開した中筋さんを招いて話を聞いた会合の記録を通信に残している。そこから抜粋させて頂いた。       (通信からの直接転載させて頂いた所は、緑色で表示。記録に残してくださった一枝さんに感謝!

    堀川さんは、奥様が震災時に足を骨折。最初の2ヶ月は、奥様の実家の埼玉県に移動してその治療に当たり、回復したところで、今度は「震災ホームステイ」というサイト(犬や猫を連れての避難で避難所に入れなかった人たちのために、家、部屋、別送などを無償で貸す人たちの情報サイト)で静岡県にある家をみつけ、これまではまったく縁のなかった地へと引っ越した。 このようなサイトがあったことを知らなかったので、「災害ボランティア」にしても、最近は非常に多くの方が活躍しているが、こんなサイトもあったのかと非常に驚き、その「支え合いの力」に感動した。素晴らしい人たちがいるものだ。

    そして、このあと、福島の住居に関して、政府が解体を急がせた経緯について、聞きはじめた辺りからが、「驚きの連続」だった。まずは「家の解体」。

   地震で傷み危険家屋と判定され、解体するように言われた。解体申請期限内なら国が無償で解体するが、それ以降だと自費での解体となる。避難指示区域内の家屋解体は放射性廃棄物処理ということになり、800万円かかると言われた。それで解体申請をした。

   解体費用800万円は、放射能汚染されたものの処理であるため通常の解体費用の5倍近いらしい。でも、これが、補助の対象期限を超えれば、(自分のせいで放射能汚染したのでないのに、全額が被災者負担となる)と言われたそうだ。本来なら、思い出深い家の解体を引き延ばしたかったが、期限がきて、他の選択肢もなくサインをし、解体することになったそうだ。

   「手紙」の本の最後は、その解体のために作業員が入り家財などを処分して準備をしている場面で終わっている。

   ところで、この本の最初には、手紙のように次のような紙が入っていた。

   

    そして、実はさらに驚いた話が続きます。その家を解体した土地の残った「庭木の処分」についてだ。

 堀川さんの自宅は庭付きの家の解体だったが、国のいう「解体」は家屋のみで、庭木や庭石は対象外になる。税金の問題もあるから土地を処分するには、庭の木や石を除かないといけない。それで堀川さんはついに庭木を処分することを決めた。

    この庭木の処分は、公費の援助がなくて、土地を処分するためにと多額のお金を自分たちで支払い庭木を処分したとのこと。そして、その庭木にも思い出があり、実は、先日このブログのココで紹介したように、関西テレビのテレビ番組「もやい福島に吹く風」(2月7日までの限定公開なのでお早めに!)で、紹介されていたエピソード、これは素敵でうれしいエピソードであった。   

  (堀川さんの)庭には、その木陰で憩う家族の団欒の場であったような、家の守り神でもあるような大きな楓の木があった。その楓を伐採しなければならなくなった。それで、今度は楓にまつわる映像を一本つくった。嬉しいことに(中筋さんが主宰する)「もやい展」のアーティスト仲間が絵を描いたり彫刻家が木彫を作ったりして、楓にまつわる作品ができていった。  

   さて、この話で終わりと思ったら、さらに続きがあった! 「土地が売れない」問題。 庭木も処分して、これで更地になった土地を売ってと思ったが、買い手をみつけるは難しい。それなら、東電か政府が買い取ってくれるのかと思ったところ・・・売れない。政府も買わないということで、今も堀川さんは土地を所有した状態なのだという。驚いた。

   ネットで調べてみた。

   宅地買い取り「平時」の半額で 福島・中間貯蔵施設用地(日経新聞)東京電力福島第1原発事故後の除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設を巡り、政府は29日、福島県大熊、双葉両町の建設予定地の地権者を対象に、用地補償に関する初めての説明会をいわき市で開いた。土地の買い取りについて、政府は「住宅地は原発事故がない場合の評価額の5割、山林は同7割」とした標準価格を算出。

  「先祖伝来の土地、被災者だますようなことはいけない」 地権者団体会長<あの日から・福島原発事故10年>(東京新聞)中間貯蔵施設という事業で国は当初、福島第一周辺に広がる1600ヘクタールの国有地化を目指した。「最終処分場にされるのでは」と懸念する地権者ら住民に対し、国は説明会を開いた。その直後の2014年6月、石原伸晃環境相(当時)が「最後は金目でしょ」と口にした。 地権者らは一斉に反発。国は全面国有化を断念し、地権者が土地を国に売るか、貸すかを選べるようにした。だが、これには国に有利な面が隠されていた・・・。

   東北被災地の買取価格安すぎるため「被災者難民化」の懸念も(Newsポストセブン)

「このまま避難生活を続けるのはもう限界。新しい土地で生活を再建するため、政府に家と土地を買い取ってほしい」 全町民が避難生活を強いられている福島県双葉町ではそんな声が強まっている。すると、それを待ち構えていたように、政府は原発事故被災地の“土地買い叩き”を始めたのである。(略)「条件面で贅沢いえる立場ではありません。買い手がない土地や家を買ってもらえるなら仕方がないとあきらめて売る人が多い。新しい土地に居を構えるには、先立つものがなければどうしようもありませんから」(同市の避難者) それでも、買い取ってもらえるだけまだいい。国の買収予定地は帰還困難区域の約20分の1で、残りの土地の所有者は売りたくても売れず、東京電力から支払われる賠償金が頼り。しかし、国と東電が決めた賠償基準は、宅地は震災前の時価、農地(田)は双葉町の場合1平方メートルあたり600~960円にすぎない。

 そして、堀川さんの話にもどると、堀川さんの土地は買い手がつかず、政府の施設の建設予定もないのか、安くてもしょうがないとさえ思ったが、それでも処分できず、堀川さんは土地を所有し続けている。そして、酷いのもここまでと思ったのに、実は、さらに、話には先があった!

 なんと、「土地の固定資産税」の支払い問題があるという。

  3.11被災 固定資産税の減額終了へ 原発避難者、税6倍にも(東京新聞)2019年の記事 

  東日本大震災や東京電力福島第一原発事故で住宅を解体した後の更地について、二〇二二年度から固定資産税が大幅に増額される。住宅の立つ土地並みに減額する特例が二一年度末で終わるためで、額は六倍程度まで上がる恐れがある。とりわけ原発事故で避難し、帰還できないでいる福島県の被災者は、避難生活での収入減に税の増額が重なり、影響は大きい。しかし、国はどの程度の人が減額を受けているか把握しておらず、特例の延長も議論していない

  町民からは不満の声が上がる。塾経営、堀川文夫さんは当面、避難先の静岡県富士市で買った家で暮らす。浪江町の自宅は動物に荒らされたため、解体して更地のままにする。「故郷の自宅が傷んだのは避難のせい、東電のせいなのに納得がいかない」と語る。

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  これから、再稼働される原発の周辺にお住まいの方、新設の原発を受け入れる可能性がある地域の皆様。

  原発の被災者の方々がしっかり保障を受けていると信じていた方は、しっかりここにリンクしたオリジナルの記事も読んで、<原発の再稼働や新設を受け入れていいか>、確かめてみて下さい。

  忘れてならないのは、狭い日本で、原発の被害を絶対受けない地域がどの位あるかということです。

  福島原発事故の時、関東以西に至るまでホットスポットはありました。それを考慮にいれて、下の図をよくみて、あなたの家がどこにあるか確かめてみて下さい。

      

 

  

    

        <福島県避難地域復興課>

 

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