みなさん、G7広島で、岸田首相が平和のためにどう行動したか。様々な報道が続きました。(さすが広島出身だけあって、被爆の実相を世界に知らしめてくれて素晴らしい働きだった~)との評価の声が高まっているとの声もあがり、内閣支持率が上がったと言われています。
そんな大事な時期なので、G7が閉会した翌朝の5月22日に新聞が、どう評価を書いているのか気になりました。さあ、恒例の6紙新聞比較をしてみようと思います。
その前に、まず、共同通信の次の記事を読んでみましょう。NHKでもニュースでも伝えられた「被爆者のコメント」です。昨日の夜7時半の「クローズアップ現代」では、さらに詳しく放送されていました。
タイトルは、 G7サミット「期待裏切られた」 被爆者団体、失望と怒り となっていましたよ!
青字で<写真 被爆者「サミットは大きな失敗」>とあるのを見ると、サーロー節子さんの大きな写真とともに、したのような記事がでていました。
広島で被爆し、カナダを拠点に核兵器廃絶を訴えている被爆者のサーロー節子さん(91)は21日、広島市で記者会見し「G7広島サミットは大きな失敗だった。首脳たちの声明からは体温や脈拍を感じなかった」と批判した。「原爆資料館で何を感じ、何を考えたのか。その声を聞きたかった」とも指摘した。
被爆者らは核保有国や「核の傘」の下にある日本などに核兵器禁止条約参加を求めてきたが、G7の共同文書「核軍縮に関する広島ビジョン」などで条約への言及はなかった。サーローさんは「声明には何も新しい内容がなかった」と述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領の出席に関して「武器支援のことばかりで、話し合いによる解決策が聞こえてこない。広島でそうした話をされるのはうれしくない」と複雑な心情を吐露した。
サーローさんは13歳の時、爆心地から約1.8キロの学徒動員先で被爆。姉や4歳のおいたち親族と、多くの級友が犠牲になった。
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さあ、上記の記事はネットで拾った共同通信の記事ですが、いつものように、こういう大事な時は6紙をコンビニで買いそろえて、比較してみました。さっそく、並べてみましょう。
まず、1面の印象は、いかがですか?
産経新聞:ウクライナ連帯 世界に誇示 +(小見出し)国際秩序守る決意
読売新聞:G7 ・ウクライナ結束 +ゼレンスキー氏 平和訴え
日経新聞:G7 ・ウクライナ結束 +被爆者と対話「歴史的意義」
毎日新聞: G7「国際秩序守り抜く」 + 「ここから」が問われる
朝日新聞: 「戦争なくさねば」広島で + G7 国際秩序回復へ宿題
東京新聞:核なき世界「追求」 抑止力「強化」相反するメッセージ発信 +「平和外交より軍事力」突出
政権の今回のG7の成果に対して、政府の発表したままを伝えたのが、産経、読売、日経新聞です。
1面で+の後に 問われる、宿題といった言葉で「でも、問題が残った」ということを伝えているのは、毎日と朝日新聞です。
そして、東京新聞だけが、核なき世界「追求」 抑止力「強化」と、(あれっ?)というようなタイトルを出し、その下に「相反するメッセージを発散」と、核なき世界「追求」しておいて、自分たちは抑止力を「強化」する矛盾を明確に指摘。さらに、左に、「平和外交よりも軍事力」突出と、去年の11月のG20の「核兵器の使用・威嚇は許されない」との宣言から後退。「ロシアによる」核の威嚇や使用は許されないと限定的表現になってしまったことに言及している。この矛盾を明確にするため、タイトル下に左右で対比するように表でしめされている(下に、拡大したものを転載しました)
さて、6紙の中で、あなたがいつも読んでいる新聞、他の新聞と比べていかがでしたか?
あなたの思っているような平和理念にそった新聞はどれでしたか?
ところで、1面でG7の成果に疑念を挟まずに、政権の言ったままを掲載した3紙も含めて、全ての新聞が、中の面を開いていくと、共同通信が書いたように、被爆者の方たちがみな失望感を表現して、今回の広島の会合は失敗としていることについて、下記のように掲載をしていました。<社会面に掲載したものが多数>。正直、全ての新聞が、批判的な意見もちゃんと掲載していたのには、心から安心しました。
産経新聞:「首脳の思い感じられず」サーローさん、声明に苦言 として、「(核軍縮への)リーダーたちの思いが感じられなかった。この街で起こったこと、私たちが体験してきたことを理解してくれたのか」と資料館で一人の人間として、どんなことをリーダーたちが視察や被爆者との対面が非公開でをあったことを批判したことなどが書かれていた。
読売新聞:「核廃絶の議論 続いて」 被爆者ら 首脳の行動期待 「NPT堅持」は批判 「実効性ない」被団協は不満 サーロー節子さんの「広島まできてこれだけの内容しか(声明に)書けないかと思うと残念だ。サミットは失敗だったと思う」については、よく読むと批判しているサーローさんの写真入りで書いてあった。ただし、小さく。
日経新聞: (核廃絶と停戦 ともに祈り)のタイトルの下に 被爆者、思い届いたか サーローさんの言葉の引用もウクライナの戦争を早く中止してほしいと祈るのコメント。(さらに、小さい記事で 広島開催の意図「どこに」と怒り被爆者団体が会見も掲載)
*上記3紙の中での比較では、まともに被爆者の方たちの失望が伝えられていたのは、産経新聞だとの感想をもった。ただ、これを持って産経を評価しているといったら大違い。2面3面を読むと、政権と足並みを揃えている以上に、「(ウクライナに)G7議長国の日本も殺傷力を持つ兵器の提供を実現するときである」「核兵器の脅威には自国または同盟国の核兵器で備えで抑止するしかない現実があるのに、目をそらしている人がいる」「核なき世界 抑止力強化から」などの言葉が並ぶ。
「殺傷力のある兵器」の言葉に、私は背筋が凍った。核兵器で抑止するしかない。脅威には脅威で対抗する考えは、軍拡と破滅を招くだけと私は考える。
毎日新聞:社会面に大きな見出し <平和 同じ空に誓っても> (ゼレンスキー氏原爆慰霊碑訪問)の中に、
「がっかり」「失敗」被爆者手厳しく として、広島で原爆資料に多くの要人が接していったことは評価しても、核兵器禁止条約への言及がなかったこと。「核抑止の前提にたった議論で、戦争を煽るような会議になった」などの憤りの声も。被爆者の児玉三智子さん「武器の供与(の約束)を広島でしてほしくなかった、兵器で命はまもれない」の言葉など、数多くの被爆者の声を紹介していた。
朝日新聞:社会面に大きな見出しで<被爆地 喜びも失望も>
喜びはウクライナ人の声。ゼレンスキー大統領の広島訪問を歓迎しウクライナへの支援が表明されたことなどへの評価。ただ、2014年にロシアに併合されたクリミア半島出身者の人の話は少し違い「ゼレンスキー大統領のサミット参加はプーチン大統領を刺激し、逆に平和を遠ざけるのではないか。両国が直接話し合って戦争をやめ、核兵器が使われないようにしてほしい」とコメントを入れている。
失望は、元広島市長の「岸田首相はヒロシマの願いを踏みにじった」「ヒロシマに集まるならば核を全否定し、平和構築にむけた議論をすべきだった」「停戦と戦後復興について話し合ってほしかった」の言葉。広島出身で核廃絶を目指す若者らの団体「カクワカ広島」の高橋悠太さんは、「一体何のための被爆地・広島でサミットをやったのか分からない」との怒り。サーロー節子さんの「これだけしか(声明に)書けないのか。死者に対しての侮辱だ」「サミットは大変な失敗でした」など多くの人の失望の声を伝えていた。
東京新聞:1面の扱いから他の紙面と群を抜いた被爆者やヒロシマの人たち、平和を望む人たちの声に寄り添った表現になっていましたが、2面にも大きく「被爆地 踏みにじられた」 として I CAN・川崎氏 G7に「失望」が述べられていた。さらにその理由が簡潔にどこにあるのかを下のように△,Xなどで表に分かりやすく表記。その下にあるように、「広島ビジョン」についての自賛した首相と、「(ビジョンは)、核抑止力を正当化している」の質問には答えなかったことが書かれていた。
そして、社会面では、2面にわたるさらに大きな記事で
核なき世界へ 具体的一歩を として、被爆者の森下さんとサーローさんの訴えを掲載。核軍縮・不拡散を柱にした首脳声明も「米英仏が核兵器を放棄するのでなく、抑止力として持つことを容認する内容には賛成できない」という被爆者の思いと、「武器支援のことばかりで、話し合いによる解決策が聞こえてこなかった。広島でそうした話をされるのはうれしくない」の声が載せられていた。
また、ウクライナの人の声としても、ウクライナ避難民の女性が <ウクライナ侵攻>「武器より優しさを」のタイトルで、
「核兵器は本当に非人間的」。母国では、核兵器があれば侵攻されなかったという意見もあるが、核軍拡の先にあるのは悲劇だけだと感じる。「国は守らなきゃいけない。だけど、ウクライナ人でもロシア人でも、人が死ぬのは苦しくて悲しい」。侵攻への怒りは消えないが「必要なのは、武器より優しさであってほしい」「平和と優しさが絶対に勝つ。私たちはこの事態を乗り越えます」と、広島の資料館の感想ノートにウクライナ語で綴ったとありました。
今回のG7。あなたはどう思いましたか?
戦争が長期化している中、戦争を倦むような緩みが生じないように、ゼレンスキー大統領が来日。ウクライナへの支援を確固たるものにして、民主主義を守る国の結束を高め、平和をもたらす。そんな雰囲気が醸造されたように私には思えました。
でも、悲惨な戦争がウクライナとロシアの間で続き泥沼化していることに、私の心は痛み続けています。被爆者の人たちもそうですが、平和を愛する人なら、最後にあげたウクライナの人のように、「人を殺すなかれ」という人間としての大前提を捨てることはできないのです。
だから、いくらロシアの侵攻が非道で、許されない行為でも、(兵器を強化して平和を得ようとすることが続くことに耐えられない)と感じることが自然なはずです。
「必要なのは、武器より優しさであってほしい」
彼女の言葉が心に沁みました。こうした思いこそが、本当の平和をこの地球にもたらせる唯一の道だと、私は疑いません。
武器で勝ち取った平和には恨みが残り、次の戦争の種が残るからです。