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月の満ち欠けに時の流れを感じながら、皆でそれぞれの持ち時間を楽しく意味あるものにしていきたい。

心が清やかになる内村鑑三「後世への最大遺物」

2018-03-09 13:15:39 | 日記

 内村鑑三。名前は知っていた。でも、名前しか知らなかった。

 ペシャワール会中村哲さんが、アフガニスタンでのその灌漑活動を認められて、大統領から国家勲章を贈られたニュースに触れながら、中村さんの本を読んでいて、彼が若い時に内村鑑三「後世への最大遺物」から影響を受けたとあったので読んでみようと思い立った。

 もともと、これは明治27年(1894年)に箱根の山頂で人々に向かって語られた講演を文章にしたようで、しかも、三笠書房のものが現代語訳だったことから、言葉も優しく語りかけられるような心地よい文章だった。それも助けになったかもしれないが、心に沁み込むように言葉が入ってきた。

 中村哲さんのその後の人生を決定づけるだけの力をもったことも頷ける素晴らしい内容だった。人間は生まれて何をすればよい人生になるのか。若いうちにこういう本に出会っていると、いい人生が送れるだろうと思った。

 これを読んで下さっているあなたのご年齢は?もう人生の残り年数を数えている私にも意味があると思えたので、大丈夫です(笑)

 人生において何を残せるのか。ユーモアと人を飽きさせない話術で、今120年後にいる私の心をも温かく人間らしい気持に高めてくれる内村鑑三という人に魅了された。

 たとえば、

・ 今ここに丹羽さんがいませんから、少し丹羽さんの悪口をいいましょう(笑いが起こる)後でいいつけてはいけませんよ(大笑)丹羽さんが青年会において「基督教青年」という雑誌を出した。それであの雑誌を何でも私のところへだいぶ送ってきた。

 そこでこの前東京へでましたときに、先生が「どうです、内村君。あなたは『基督教青年』をどうお考えなさいますか」と問われたから、私は真面目に、また明白に答えた。「失礼ながら『基督教青年』は私のところへ持ってきますと、私はすぐあれを厠(かわや=トイレ)へ持って行って置いてきます」。ところが先生がだいへん怒った。それからわけをいったのです。(略)じつにつまらぬ雑誌である。なぜつまらぬかというと(略)青年が青年らくないことを書くからである。(略) 私の欲するところは、社会の欲するところは、女よりは女の言うようなことを、男よりは男のいうようなことを聞きたい。老人よりは老人の思っている通りのことを聞きたい。それが文学です。それゆえに、ただわれわれの心のままを表白してごらんなさい(略)それが、われわれの遺物です。 

    *あんまりな発言に思われたが、なんとも伸びやかな語り口に、悪口もみんなの笑いを誘い、きっと悪口をいわれた人をも説得してしまうかもしれないと思える人柄だったのだろうと思えた。

・先生になる人は、学問ができるかー学問はなくてなりませんけれどもー学問ができるかよりか学問を青年に伝えることのできる人でなければいかん。その伝えることは一つの技術であります。短い言葉でありますけれども、この中に非常の意味がはいっております。

    *物事の本質を見ることに、内村鑑三は長けていたのだと思う。

・二宮金次郎の言葉として 「天というものはじつに恵みの多いもので、人間を助けよう助けようとばかり思っている。それだから、もしわれわれがこの身を天と地にゆだねて、天の法則に従っていったならば、われわれは欲せずといえども天がわれわれを助けてくれる」という考えを紹介している。

    *人間世界の法則より、もうひとつ空を見上げた世界をもって信じて生きると、きっと救われることも多いと感じる。それが、ある人にとっては何かの宗教だったりするかもしれないが、そうでなくても天の法則を心に感じて生きるのでもいいのだ。

・種々の不幸に打ち勝つことによって大事業というものはできる。それゆえに、われわれに邪魔のあるのはもっとも愉快なことであります。反対があるほど面白い、私はそう思う。(略)われわれが熱心をもって(困難に)勝てば勝つほど、後世への遺物が大きくなっている。ヤコブのようにわれわれの出会う艱難についてわれわれは感謝すべきではないかと思います。

     *挫けない心を培う。邪魔者を愉快と感じる。これは困難に立ち向かう時に力になるだろう。

「デンマルク国の話」というのが、この本にはついていたが、これも素晴らしかった。

  戦いに敗れたデンマルク人が、国を削られ、国民も意気消沈していたが、帰国して故国復興はできると、荒漠を豊かな地に変えればいいのだと、敵に対する復讐戦を計画するのではなく、鋤と鍬で残っている領土の荒漠と戦い、敵に奪われたものを補うために、水をそそぎ、研究を重ねてそこにモミの木を植えた。植林の成功で、農業が一変し、夏季の降霜もなくなり、小麦や、砂糖大根、穀類や野菜も植えられるようになった。

  国は戦争に負けても亡びません。戦争に勝って亡びた国は歴史上、決して少なくない。国の興亡は戦争の勝敗によるのではない。その民の平素の修養による。大陸の主が富者とも限らない。小島の所有者が貧者でもない。

  富は有利化されたるエネルギー。エネルギーは太陽の光線にもある。海の波濤にもある。吹く風にもある。噴火する火山にもある。もしこれを利用することができれば、ことごとく富源となる。外にひろがらんとするよりは、内を開発すべきである。

     *まるで、今の再生可能エネルギーの潮流が見えていたような、その先見性に驚かされた。

  国の実力は軍隊ではない。軍艦でもない。金でも銀でもない。信仰である。

     *ちょっとコピーが大変なので、端折った書き方になったが、解説者の竹内均が(特にこの「デンマルク国の話」からは、感銘を受けた。敗戦の混乱の中に放り込まれた日本人に未来の日本のいくべき道を示した。当時33歳の内村の預言書ともいえる)、とあとがきで述べており、愛国者でありながら決して排他的、盲目的な愛国者でないところを評価している。クラーク博士は去った後だったが、その影響の強く残る札幌農学校に学び、キリスト教徒となった内村。渡米して学んだ経験も手伝い、広い視野を持っていた内村は、日露戦争では開戦に反対し、天皇を神として崇めることにも反対したという。あの時代に、凄い人だったと思う。

  さてさて、最後まで私の覚書のような、内村鑑三「後世への最大遺物」についてのブログを読んで頂き有難うございます。ここまで読んで頂いたお礼に、もし内村鑑三に興味を持ってくれた方にプレゼント(?)です。本を買えない、図書館に借りにいく暇がない方のためにいいものを見つけました。

 「青空文庫」です。クリックして頂くと、たくさんの著作権が切れた本が無料で読めるようになっています。 上記の「後世への最大遺物」もここで無料で読めます。「デンマルク国の話」も無料で読めます。ココで内村鑑三の本がなんと9冊も読めるように公開されていました。

 偶然気づいたのですが、たくさんの作家の名作が無料で見られるようです。どうぞ、利用して良書にいっぱい巡り会って下さい!!!  

 

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