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como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

風林火山 第36話「宿命の女」

2007-09-10 23:41:08 | 過去作倉庫07~10
Story 由布姫の意向をうけ、殺意を抱いて於琴姫の宿に向かった勘助は、姫の大らかな人柄に触れ、毒気を抜かれる。生まれる子供が四郎の下に位置することを念押しするが、服従した家の娘である於琴姫には、それは承知のことだった。いっぽう、武田への恨みが再燃していた由布姫は、大井夫人と語り合い、領国の平和を維持してはじめて武田に勝ったと言えると諭されて、涙を流す。勘助は郡内に小山田を訪ね、初めて胸襟をひらいて語り合う。敗軍の将の娘であり、室であった美瑠姫を側室に迎えた小山田の心境に、大いに感じるものがあったが、その正月、小山田が美瑠姫に閨で刺殺されたとの急報に、武田家中に激震が走る…。

庵主のCheck!
 寂しいですね。風林火山のメンバーの中でも異色の存在で、薬味かスパイスの役をしてきた小山田信有@田辺誠一が、今回で退場です。この人のイヤミな突っ込みやふざけた態度が、クールなイケメンと相まって、なんともいえずいい味をだしていたのになあ。
 でもまあ、史実は動かせないですからね。板の間評定も華がなくなって寂しくなってしまいます。なんだか最終回にむかってしずかに降板や交代のはじまった風林火山36回。先週のコメディ劇場((笑)とはうってかわって、今週はシリアスです。今回のテーマは「武田家に敗れた家の子弟というものはいかに矜持をたもつべきか」というわけで、於琴姫、由布姫、美瑠姫の3つのケースに、小山田のケースが検証されていきます。ついでに史実上「小山田信有は討ち死に、あるいは戦病死」とされているカラクリ(?)も明かされますぞ。

 幕開けは先週のお笑い劇場の続きからです。
 積翠寺に忍び込み、於琴姫の住まいを覗き…いや、偵察していた勘助は、間抜けなことに、リツに見つかってしまった、というところ。相変わらずハジケまくっている乙女リツは「あっ於琴姫さまのことが由布姫さまにバレたのですね! 勘助様は姫様のために於琴姫さまを!バサーッて!キャーーー!!」と一人で妄想して大騒ぎしたから大変です。
「何ごとですか?」と奥からゆるゆると現れた美しい女性。そう、この人が騒ぎの火種になっている当事者、於琴姫です。
 やはり於琴姫は妊娠してました。しかも「男の子ならいいと思っています」と悪びれず言うので、勘助は思いっきり警戒。「失礼ですが、お屋形様には御曹司様のほかに立派な和子様がいらっしゃるのをご存知ですか」…と言われて、於琴姫は大ショック。他にも側室?そんなの聞いてない!とワッと泣き伏し、なにを言うかと思ったら「その方、私より美しい人ですか!」と…。
 この於琴姫って人はどうも、いわゆる天然ちゃんらしい。一言もの申す!という意気込みに対し、天然は最強のバリアーで、当然勘助も毒気を抜かれ、唖然呆然、しかも「あの~、あなたの赤ちゃんは諏訪の四郎様の目下になるわけなんで、そのことは」と打診しても、「ええ、勿論そうですよ」と切りかえされて、返す言葉がありません。

 たぶん晴信は基本的に天然ちゃんがタイプなんでしょう。新婚当時の三条さんもそうでした。
 だからといって比べられ、「怖いのー」とか言われちゃう由布姫もたまったものじゃありません。その葛藤を見るに見かねたか、大井夫人が優しくフォローしてくれます。貴女のような気高い方が晴信を好きになってくれて嬉しい…と言われても褒められてるのかわかんないですが、「諏訪が平和であってこそ武田に勝ったと言えるのですよ」と諭され、張りつめた気が緩んでほろほろ涙をこぼす姫。こういうところは、まだ可愛いですね。
 このあたりから、今回のテーマ「武田に下った家の子はいかに矜持を保つか」という問題に切り込んでいきます。
 
 さて、少し前から懸案だった、駿河に晴信の娘を嫁がせる問題が再浮上しています。まだ幼い甲斐の姫に代わって、駿河の今川の姫を、武田の嫡男の太郎の嫁に迎えるという案を勘助は持ち出しました。
 これは非情な二者択一で、ようは「いずれ駿河を攻め取ることになったら、太郎様と梅姫様とどっちが苦しむほうがマシですか」ということです。というか駿河を攻め取ることがすでに話の前提になってますが、それはさておき。
 ここで晴信は「太郎のほう」と選んでしまうんですね。男親の本音ではありましょうが、これが後年の大きな憂いに繋がることは、覚悟できていたってことでしょう。

 ということで、駿河の今川家へは末弟の武田信廉と、駒井政武が使者にたって縁談の申し入れをします。
 日ごろ見下している武田家から「こっちに人質をよこせ」なんていわれて義元は面白くありません。しかし「義元様の姫様は東海一のお美しさ…」なので、太郎もメロメロになるにちがいなく、武田家操縦は思いのまま!となんだか遣り手ババアのようなことをデスラー雪斎が提案し、義元もまんざらじゃないわけです。
 ただしこれが山本勘助の提案なら要注意、諏訪の姫と組んで今川を陥れる作戦かもしれない、と釘を刺された義元は、駒井たちに「ところでこれは山本勘助の企みごとかね?」とストレートに聞きます。どうも、いつも思ったことをそのまま言ってしまうみたいで、案外シンプルというか、素朴な人ですよね。
「とんでもない。山本勘助など軍師でもなんでもなく、只の足軽大将。雪斎様の足元にも及びませぬよ」と駒井がとっさの機転でかわします。何気に相手をヨイショしつつ、誠実な顔をしてウソをつく。さすがは駒井委員長です。…が、駿河に行くんで貫禄をつけようとしたのか、突然生やしたヒゲがとても気になりました。全然似合ってなくて…。

勘助は郡内の小山田信有のところへ行き、駿河との縁談が始まったときの相模へのフォローを頼みます。
 そこは根っから策謀好きの小山田さん。仮に駿河と戦になって今川家からの嫁が孤立したら、誰が一番得をするのかな…とか言って勘助にカマをかけますが、「まあ、いいわ」と話を打ち切り、どうもいつものテンションと違います。
 そう、所領の郡内で愛する美瑠姫と満ち足りた生活をしている小山田さんは、そんな陰謀ごとが、なんだかどうでもよくなっちゃったんですね。思い起こせば自分の父親も武田の先代に降り、そのおかげで自分は領地をついだわけだし。下った家の子としていつまでも突っ張っていたけど、美瑠姫といるうちにそんなカドもとれてしまった。いまは美瑠の安心した寝顔をみているのが一番シヤワセなんだ…と、やけにサッパリした顔をして言うわけです。
 バカだろ。でもお前もバカだし。由布姫様のほうが実はお屋形様より大事だと思っているお前が、バカで好きだぜといわれ、ある意味図星を衝かれた勘助。なにかひどく感じ入るところがありましたが、しかしまさか、これが小山田さんと会った最後になろうとは…。

 美瑠姫と結ばれてから「常より二月早く」生まれた子・藤王丸に、小山田さんは男なら当然持つ疑惑を抱いていました。でも、それももういい…美瑠姫が幸せなら。敵の懐に飛び込んで前夫の子を生んだなら、それはそれで天晴れじゃないかと、そこまで広い心になっていたんです。ですが、いざその藤王丸が死んでしまうと、やはり「ほ~~~っ…」と安堵の溜息をついてしまう。ずーっと抱え持っていた重荷が、、急にフッと消えたわけですから。
 だからといって、わが子にすがって号泣する美瑠姫を抱いたまま、つい「ウフフッ」と笑ってしまったのは、無意識にしてもまずかったですよ。美瑠姫はこれを聞き逃しませんでした。そしてそのとき、彼女のなかで何かが決壊してしまったんですね。

 年明け早々、躑躅崎館に衝撃的なニュースが持ち込まれます。小山田さんが褥で美瑠姫に刺し殺された! その猟奇的なできごとを報告したのは、小山田家の嫡男・弥三郎でした。
 美瑠姫は小山田さんを血の海に残し、同じ短刀でのどを突いて、雪の中で果てました。武田に滅ぼされた実家の父と前夫、死んだ子供に許しを請いつつ、呪詛の言葉を吐きながら…。
「なんでそんな女を」「いやいやそれが男女の睦みごとというもので」「いい女だから惜しかったんだ」等々ゴシップ話のやまない家臣たちを、さにあらず!!と勘助が制します。「小山田様はそのお子さんを、敵将の子と知ってなお引き受けて育てようとしたのです!」
 故人の人知れぬ心境はともかく、この事件の発端は志賀城の戦後処理で、女子供を売り飛ばしたりしたこと。美瑠姫をモノみたいに小山田さんに下げ渡したのも自分なので、晴信には忸怩たるものがありました。よって、小山田は側女に寝首を掻かれたのではなく名誉の討ち死にをしたのだ。そういうことで内外にアナウンスするように!
と、この晴信の下知により、今に至るも郡内領主・二代目小山田出羽守信有は「砥石城攻めによる戦病死」ということになっているわけなのですね、はい。

「辛きことをよく話してくれた」「よき跡取りになるのだぞ」と弥三郎をねぎらう晴信・信繁兄弟が、情があってホントに良かった。戦を重ね、みんなそういう戦国の世の悲哀が身にしみてきたのでしょうね。
 そんなとき、いよいよ大井夫人が旅立ちの時を迎えようとしています。息子たちや家臣たちにどんな言葉を残していくのかは、来週のお楽しみ、ということで。では!


4 コメント

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「その心根、まことに天晴れ」 (SFurrow)
2007-09-15 00:09:34
と美瑠姫を評価する小山田さんも、勘助の「さにあらず!」も良かったなぁ。一つ間違うと、突拍子もない思いつきだけになってしまう危険性のある「史実無視オリジナル脚本」ですが、今回の試み、なかなかうまい落とし所でしたよね。
小山田といえば、忠臣蔵に出てくる小山田庄左衛門という、腕の立つ家臣だったのに、結局討ち入りから落ちこぼれて遊女と心中か何かしてしまう人がいたと思いますが、ちょっと共通するイメージがありますね。これが小山田さんの子孫・・・なんてことだったら、出来過ぎというものですが。

学習会のジュニアたちのカップル解説も、すごくタイムリーで助かります! この後じっくりと読ませていただきます。
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上手いと思います (庵主)
2007-09-15 10:20:51
SFurrowさん、こんにちは。

>一つ間違うと、突拍子もない思いつきだけになってしまう危険性のある「史実無視オリジナル脚本」ですが、今回の試み、なかなかうまい落とし所でしたよね

ですね。
この時代の、大名の家臣クラスの人だと、実像がハッキリしないことが多いようで、小山田信有も「天文21年頃病死したと思われる」くらいの史実しかないので、そのへん上手く使ってるな~と感心しました、はい。
小山田家は次の小山田信茂が殺されて嫡流が断絶してしまったので、まとまった記録も残っていないんでしょうね。この頃に病死?というのと、笠原清繁の室を側室にしたという記録で、こういう人物像を造形したのは「まことに天晴れ!」(笑)…というか、これって田辺誠一のキャスティングによるアテガキか?

忠臣蔵の小山田庄左衛門、面白いですね! 息子の小山田信茂のほうが、最後の最後で勝頼を裏切ったことで後世に名を残しているから、そっちのイメージもあるのかな?
ちなみに小山田さんという姓は、いまでも富士吉田市にゴロゴロしています。嫡流ではないですが、子孫の方も、たしか富士吉田で続いているはずです。
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ありがとうございました。 ()
2007-09-17 13:38:55
庵主さま。
≪小山田クラブ≫ではお世話になり、ありがとうございました。
それから、こちらにはTBのみで、なかなかコメント出来ず、申し訳ありません。
いつも、自分のところに書いただけで燃え尽き症候群みたいになっちゃうので・・・。(苦笑)

小山田の最期については、自分のところに、例によって妄想過多の感想を書きましたが、勘助の今後の行動を考えると、小山田と美瑠姫の死が彼に与えた影響というのも、少なからずあったんじゃないか、という感じもしますね。
・・・まぁ、どうしても小山田贔屓の目線になっちゃうので、そう思うのかもしれませんが。(笑)

≪小山田クラブ≫も、小山田の死とともに最終回、となりました。
最終回のコメントにも書かせていただいたのですが、庵主さんをクラブにお誘い出来たことは、我ながらグッジョブだったと思っております。(笑)
クラブは≪風林火山クラブ≫と名称を変えて、これからも続くそうですので、また、何か資料等お借りすることがあるかもしれませんが、その時は、どうぞよろしくお願い致します。(って、私が言うことじゃないかな。笑)

とりあえず、一息ついた、ということで、お礼のご挨拶まで。ありがとうございました。
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こちらこそ! (庵主)
2007-09-17 22:12:39
>翔さん

こちらこそ、ありがとうございました!
小山田クラブに紹介していただいて、どんなに有難かったか…。おかげさまで当学習会もグッと世界が広がり、本当に有難かったです。

blog拝見しました。いや~もう「愛あればこそ!」の熱い文章に、思わず追体験して感動してしまいました。
妄想過多なんてとんでもない、あのような繊細な考察で、これからの物語が倍も三倍も豊かになるのだと思いますよ。
お疲れ様でした。
というか…これからまたヨロシクおねがいしますね~♪
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