como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「太平記」を見る。その15

2012-08-28 22:18:57 | 往年の名作を見る夕べ
第29話 「大塔宮逮捕」

 さて、大塔宮(堤大二郎)がかき集めた反・足利チームが武装して京都に集結、一触即発の緊張のなか、尊氏(真田広之)邸では、佐々木道誉(陣内孝則)を交えて、対策会議が開かれてます。もっぱら警戒しているのは、楠木正成(武田鉄矢)の動きが読めないことで(尊氏なんかは無条件で信頼してるんだけど)、なんせ正成は大塔宮と絆が強く、それに速攻や騙し討ちの奇襲が得意、ということで、最大級の警戒で出方を伺っているのですね。 
 そんな中、道に迷って夜の都をウロウロしてたという女性の供づれが、挙動不審で奉行所に連行されてきます。なんとこれが、正成の室の久子さん(藤真利子)と、嫡男の正行=もと多聞丸でした。多聞丸のときと子役変わってるけどね。
 久子さんは、ほんと何も知らず、なんの意図もなしの丸っきりの天然で、ただただ夫の無聊を慰めたい一心で河内から上京してきて、たまたま、内戦寸前でピリピリしてるとこに来てしまったわけです。「主人がいつもお世話に…」みたいなことをのん気に言ってる奥様を、師直(柄本明)なんかは、「いい人質、拘束しときますか」とか言うんですけど、尊氏は、自分で奥さんを送って正成邸に乗り込むことにします。これはこれで、利用方法ってやつですね。

 で、のん気な上京奥様も、危ないから尊氏自ら送っていくとか言われて、さすがに普通じゃない状況を察するわけです。
 奥様を人質(?)に楠木邸に入った尊氏は、正成と対面。単刀直入に、「明日の戦で楠木殿に御味方になって貰いたくて来た」といいます。しかも、正成の味方を得れば「明日の戦を止めてみせます」と、なんか矛盾した言い方ですが。
 ようは、正成が尊氏につくと明らかにすれば、正季(赤井英和)も大塔宮から離れる。様子見していた武将たちも全員離れて、大塔宮は丸裸。戦にならない、というわけですね。都を灰にしないためにもこれが一番いい方法だ、と。
 だけど正成は、ちょっと厳しい見方をします。都の平和を方便に武家全員を足利派につける、というのが引っかかるわけです。
「こう申すものがおる。足利殿は鎌倉に再び幕府を作らんとしておる。北条に化けるつもりぞと」
 畿内の武士はそれを警戒している。自分ら畿内の武士や土豪にとっては、北条時代より帝の親政のほうがはるかにいいし、経済的にも、将来に希望が持てるわけですね。それを毀して再び鎌倉政権みたいなのを作るのは見過ごしておけない、と。
 尊氏は、正成の言葉をキッパリと否定します。「それがしは己のため、私利私欲で戦うたことはござらぬ。しかと申し上げる。そのことは、楠木殿がいちばんようご存知と思うておりましたが」

 翌日、正成の肝いりで奉行所に主だった武将が(この前の社会改革会議とだいたい同じメンバー)集まって、大塔宮対策について話し合います。
 今回は、都に乱を起こして世を乱さないために団結してほしい、と呼びかける尊氏。ようは、一時的に高氏に従ったという形をとって貰いたい、というわけですね。
 これには当然、ブーイングが起こるんだけど、でも大塔宮について勝ち目があるじゃなし。勝ち馬に乗るしかないわけです。いろいろ胸算用した結果、全員が、とりあえず尊氏に従うと納得します。新田義貞だけは多少抵抗するんですけどね。いままでの経緯から精神的な抵抗もあって。
 といっても決裂して得になることはないので、正成の音頭で皆が手を打って、解散となります。全員帰った後で、「これでよろしいか」と言う正成に、尊氏は無言で、ただただ頭を下げるのでした。

 そして蓋を開ければ、大塔宮の周りに武家はひとりもいなくなった、と。全員がバックレて姿を消してしまい、がらーんとした庭で、戦装束の宮は真っ赤になって怒り狂います。「まだ叡山がある!僧兵を鞍馬口に集結させよ!!」と。
 といってもすぐどうこうというわけではなく、雪が降ると、内裏から悠長にも「初雪の宴」を開くのでおいで下さいと、ご招待がかかります。鎧を脱いで優雅にお出かけする宮様。うっすら雪の積もった御所の庭を見ながら、「御所から雪を見るのは何年ぶりであろう。戦、戦で、雪がいつ降りいつ止んだかも、とんと覚えぬこの年月であった…」とか、しみじみと述懐します。
 それを見て、お供の公家さんが「もっ申し訳ござりません!!」と急に叫んで、逃げてしまいます。びっくりしてる宮を、名和長年(小松方正)を筆頭に、御所の警備員が取り囲み、問答無用で縄をかけてしまうのですね。
 皇族に縄をかけるなんてありえないこと。ですけど、これが「帝の御命でござる。御叡慮でござる」と言われて、がく然とする大塔宮…。偽りを申すな。帝は身の父じゃ。父君これが御叡慮か!帝はいずこ、帝!!…と悲痛な叫びを残しながら、宮様は連行されていきます。
 後醍醐帝(片岡孝夫)は、宮の身柄は足利尊氏に預けよと命じます。「あれほどの者じゃ、よもや殺しはすまい…」と。ようは始末に困って丸投げなんですけど。密殺されても仕方ないし、それはそれで…みたいな感じですよね。言外に。そして実際……。

 大塔宮の身柄を預けられた尊氏は、はじめて一対一で、囚われの宮と対面します。
「宮は、北条討伐の道を我らに示したもうた御方。こうしてお目にかかるは畏れがましゅう、胸ふさがる思いにございます」と呼びかける尊氏に、宮は意外と落ち着いて対応します。。
「奇妙じゃのう。子が道を間違うたというのに、なぜ帝ご自身の手で殺さぬ。なぜご自身の敵に子を渡す。足利とて、こうして麿を預けられれば殺すに殺せまい」
 宮を殺す気もないし、帝が敵だなんてことはないし、帝も自分を敵と思ったりしていない、と言い聞かせる尊氏に、宮はこう返します。
「いずれそちは武家をあつめ、幕府を作る。而して帝と戦う。いまは、そうは思わん。が、そちは武家の棟梁。源頼朝の血を引くものぞ。武家がそれを望めばそちは公家と戦い、武家がそれを望めば、帝に抗し奉り、幕府を開かんと欲するであろう。そちには、それだけの器量がある。それゆえ、殺しておきたかった」
「望むと望まざると、麿は帝の子、そちは武家の棟梁。それゆえあい争うた。そして、負けた。虚しいかぎりじゃ…」

 この大塔宮の言葉の、呪術的な重さはすごいですよね。尊氏が望むわけじゃなくても、帝と争わなくてはならない宿命、みたいな。そういうのを、負けて死んでいく人の口を通して語らせる。
 そういう、宿命の呪縛的なことで尊氏の道が決まっていく、というのも、これはこれで緊迫感があるのですが、でも、あくまで尊氏の「意思に反し…」という、主人公をきれいなままにしておくおり方が、若干気にになるな。どうなんだろうか、そのへんは。

第30話 「悲劇の皇子」

 さてそこは、大河ドラマ的には難しいところなんですよね。主人公をベビーフェイスにしておく塩梅というのは。
 ワタシ的には、主人公といえどややヒール寄りのエグさがあるほうが好きです。陰謀や密殺に手を染めるのも辞さない、くらいのですね。だからあくまで主人公が手を汚さないのもどうかと思っちゃうんだけど…まあ、足利尊氏と言う人には、歴史を分かつ大ヒールの役割があるわけですから、ストーリー上、あまり細かい悪事なんかはさせないでおくほうが、いいといえばいいのかもしれません。
 ということで、毀誉褒貶激しい尊氏の人生のステージに入っていくのですけども。その発端は、前回の大塔宮逮捕から半年後におこります。都の郊外で、とある公家さんが、大陰謀を企てていました。これが、フェードアウトかと思った西園寺公宗(長谷川初範)で、北条家の滅亡後は落ちぶれ果てていたものが、北条高時の弟・泰時を担いで、後醍醐帝暗殺の陰謀を企んでたのです。
 この一座にいた、西園寺卿の弟が、ビビって御所へ密告しにいこうとしたところを、一色右馬介が身柄を確保します。発覚する前に陰謀の情報を入手した尊氏は、それを、武者所の長の新田義貞のところに注進にいきます。
 義貞は、協力に感謝しつつも、どうして自分に手柄を譲るようなことをするのかと。尊氏は、「先の大塔宮の騒動のときに味方に付いてもらった借りもあるので」といい、義貞はちょっと毒気を抜かれた顔をするんですが、この義貞のリアクションも後半できいてきます。
 それにしても反乱が頻発しすぎ。治安もままならないのに、帝は大内裏を造営するとかいって、地方に税を課している。上つ方はなに考えてるんだろうなとこぼしつつ、「わしは戦をすればよい。帝をお守りすればそれでよい。それが武士というものじゃ」と自分に言い聞かせるようにつぶやく義貞でした。

 この、増税による経済の混乱と地方の疲弊は、美濃の農村の代官になった石(柳葉敏郎)のところにも波及しているんだけど…あれですね、架空の人物というのは、主に底辺の目線を担当することになるので、どーしてもこう、了見が狭いというか。多少バカっぽくなってしまうもんですよね。
同じ敵役でも新田義貞みたいに、一面ではない複雑な事情を抱えているのと比べると、キャラクター的にも精彩を欠く。架空人物のむずかしさですね。たいがい半端にフェードアウトするのもわからんじゃない
 石は、税が払えない、助けて下せえという地元の百姓と、生き血を絞ってでも取り立てて来いという都の収税吏の板挟みになり、イライラして、こんな世の中ちっとも良くねえじゃねえかと思う。田を耕してのんびり暮らすというオレの夢はどーしてくれるんだ、と。まあ、その夢がそもそも根拠薄弱だったんだけど。
 そんな残念キャラな石に寄り添う藤夜叉(宮沢りえ)は、きっと世の中よくなるよ、がんばろうとか言って励ますんですけど…
 鎌倉では、北条高時の遺児・時行を担いだ反乱軍が関東を席捲し、みるみるうちに膨張して、鎌倉にいる足利軍を各地で撃破。ついに鎌倉が陥落してしまいます。その余波は美濃へも波及し、のんきな農村に、鎧武者がなだれ込んできて…ということになるのでした。

 これがいわゆる中先代の乱で、小規模な叛乱とは違う、国を揺るがす危険レベルに発展してしまいます。尊氏は、鎌倉へ兵を送りたくても要所の三河を空にはできず、都にはわずかしか手勢がいない。
 そこで、全国の武士に連合を呼びかける、兵を募る、と言い出すんですが、でも尊氏にそんな権限はありません。そこで、「征夷大将軍に任じていただく!」と言って、尊氏は立ち上がります。
 立ち上がった主君を、熱い感動の眼で見つめる師直(柄本明)。この人は、ずーっと尊氏のベビーフェイスぶりにイライラしてたんだけど、これだよこれが聞きたかった!という思いですよね。
「征夷大将軍…ようやく仰せられた…」
 ですが、尊氏が参内しても、またぞろ阿野廉子(原田美枝子)と、お取り巻きの千種忠顕(本木雅弘)、坊門清忠(藤木孝)の嫌がらせに阻まれ、帝に取り次いでもらえません。取次役の匂当内侍(宮崎萬純)に、とにかく取り次ぐだけ取り次いでくれ、一刻を争うのじゃといくらいっても、「申し訳ありません、できません」の一点張りでらちが明かないわけです。
 もう、どんどん帝の部屋でもなんでも踏み込んでけよ、と思うんですけど、そういうことが出来ないんです。そこはもう、今年の大河ドラマと違って(爆)。

 そうこうするうち、直義がみずから率いて出た軍が鎌倉手前の関戸でやぶれ、ついに鎌倉が陥落。登子(沢口靖子)と千寿王も鎌倉から脱出、成良親王も落ち延びさせて、では幽閉中の大塔宮はそれがしが三河へ…と急ぐ右馬介を、細川和氏が制止します。「逃がさずともよいと、ご舎弟様の命じゃ」と。
 つまり、このどさくさで始末しろというわけですね。「そのようなことは殿から聞いておらぬ!」と抵抗する右馬介ですが、「いや、ご舎弟様の命じゃ」。
 結局、反乱軍に宮が拉致されて、担がれてしまうのを、かなり切羽詰まって恐れたということなんでしょうね。この当時は、反乱などを起こすには、まず旗印として皇族を担ぎました。大塔宮は絶好の人材であり、それが北条の残党の手に渡るのを、直義はもっとも恐れた、と。
 刺客と対面した大塔宮は、自分の運命を受け入れます。「尊氏に伝えよ。すでに護良は鎌倉にて死せし者。足利は死せし者の影に怯え、死者を鞭打つかと」
 こうして抵抗もせず、斬られて死んでいくんですが、斬ったほうもトラウマだろうなあこれ…。

 就寝中に鎌倉陥落の急報を受けた帝は、千種・坊門のふたりと、新田義貞をその夜のうちに招集します。同じタイミングで、尊氏が強行参内。とりあえず尊氏を待たせ、義貞を呼んで、坊門・千種に意見を聞くのですが、「足利は存外戦が弱い」とか、「関東のことは自分の腹ひとつで決めて公家に相談もないからダメ」とか尊氏を罵って、ほかの武家に反乱軍を鎮圧させるべきです、その人選はすでに御叡慮のうちにおありでしょう、とか言います。
 ま、そのために義貞を呼んでいるんですけどね。義貞としては、こういう場面はむちゃくちゃ苦手だし、思うところを言えとか言われても、口下手なのでうまく言えません。とりあえず、これは北条残党の怨念が集結した戦で、苦戦するのは当然だし、どこの武家に言われても一人で鎮圧するのは無理だと思う。自分が命じられたら、とりあえず関東に軍を率いていって、一か八か戦ってみるしかないと答えますが、千種忠顕が、「愚かな。足利に軍を与えて関東にやれば、増長して、勢いに乗じて関東に幕府を開きかねん」なんていうわけですね。出陣はさせない。でも反乱を押さえろとか、むちゃくちゃです。で、あげく、武家なんて行って戦って勝ってくりゃいいんだ、一人前な口聞くな、みたいな。
 このオツムの軽い貴族のボンを演じるモックン、絶品ですわ。見ててすごいムカムカする(笑)。こういう残念な役もあって、のちの華々しい主役もあるのよね。人に歴史ありです。
 いやもとい。この義貞の、不器用ながら誠実な答えに帝は心を動かされ、「あれは信ずるに足るものぞ…」と呟きます。でも義貞は、なんかオレやらかしちゃった?みたいな気持ちで、退出の案内をする匂当内侍に、「帝に何か奇妙なことを申しませなんだか。うまくお答えせねばといつも思うのだが、お公家に囲まれると臆してしまって…」と弱気なことを云います。が、内侍は、キラキラした目で義貞をみつめて、
「新田様の申されたことは、奇妙なことはなにひとつございません。お公家の方々がよほど奇妙でございました…」
 そして見つめ合う義貞と内侍。ラブストーリーは突然に…みたいな空気が流れたところへ、帝のもとへ参内に急ぐ尊氏と、義貞の目が合います。
 このふたりは1年後、天下を分けて争うことになる…と、盛大にナレーションでネタバレのおまけまでつきますが。戦が無い平時でも、戦の下地をじっくり描いているようなドラマづくりは、どこぞの大河ドラマにぜひお勉強していただきたいところです。
 ってか、昔はそんなの当たり前だったんだけどねえ、大河ドラマのクオリティとしては……。


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