えっと、この「黄金の日日」をやってたころは小学生だったので、大河ドラマと時代の関連性だとか、そんなこと考えたことなくて(当たり前だよ)、大河ドラマとゆーのは正しい王道的な歴史ドラマなんだと漠然と思ってたわけです。そんなお子ちゃまにも、大河ドラマが急に、路線を変えるんだ!新鮮なアプローチをするんだ!という感じで頑張りだしたのが、なんとなく伝わってきました。それが「獅子の時代」でした。ちなみにその次が「おんな太閤記」。これも「初・主婦もの!」ということで話題になってたよな…。
でも、「黄金の日日」より前の大河ドラマ・ラインナップを見ても、そんな硬直した王道歴史もののオンパレードとは思えぬのです。どうみても、この直近10年よりバラエティに富んでるし。
戦国・戦国・幕末・戦国・戦国・幕末・戦国……と続くルーティーンに固着した最近のほうがあきらかにマンネリ・スパイラルに入ってる。イケメン俳優や歌手や、若い女の子なんか主役に引っ張ってくるより前に、見直すべき方向というものがあるんじゃないかなあ。
というわけで、この「黄金の日日」も、戦国ものにはちがいないんだけど、その方向性はものすごい斬新ですよ。その斬新さを、これからじっくり見て生きたいと思っております。
第二話「岐路」
さて、堺の町を救うため、信長に会うべく濠を泳ぎ渡った今井宗久(丹波哲郎)。使用人の中から選んだ、助佐(市川染五郎)、善住坊(川谷拓三)、五右衛門(根津甚八)の三人の背には、天下に隠れもなき名物・松島の葉茶壷と紹鴎の茄子という茶器セット。このお宝に堺の命運が掛かってるわけですが、信長軍の包囲は厚く、突破するため、宗久は善住坊に、オトリになってくれと頼みます。こういう貧乏くじを引かされる役どころ、川谷さんすごく似合ってて…泣き笑いの顔とかホント、懐かしくってホロッときちゃう。
宗久と助佐・五右衛門は、とりあえず、濠外の村に、しま(竹下景子。アタリマエだがわっかーい!!)という女の家を訪ねます。しまは今井家の下女だったらしいんだけど、宗久のお手つきだったんですね。そこは妾宅で、彼女は宗久の子供をうんでいました(この艶福ぶり、「真田太平記」とかぶるなあ)。
エロエロオヤジの宗久は、やはり下半身事情を抱えてるみたいですね。長男の兼久(林隆三。これも若っ!)はそんな父と折り合いが悪く、今井邸で養女の美緒(栗原小巻)にむかって「おまえはもう親父に抱かれたのか」とか言ったりします。どうせお前なんか売り払うために人買い舟から買ってきた娘だ…と、この美緒にもなんか事情がありそうです。
宗久の妾宅に泊まった夜、五右衛門は、ふと出来心を起こし、松島の葉茶壷を盗んで逃亡しようとしますが、マジメな助佐に体を張って止められます。マジメというか、助佐は、このミッションが成功したら船に乗れるんだということで頭が一杯。その成功を五右衛門に邪魔されてなるものか!というわけで、堺の町を救うとか、そういう使命感とはどうも方向性が違うんですけど、とにかく一生懸命。五右衛門を軽々投げ飛ばした助佐は、実は、恐るべき怪力の持ち主…らしい。
翌朝、宗久一行は信長の本陣を訪ねます。スムーズに通ることができた裏には、実は、京都の商人・小西隆佐(宇野重吉)の根回しがあったんですね。隆佐のむすこが信長の小姓をしていて、そこに話を通してくれた。これが小西弥久郎、のちの行長(小野寺昭)です。同僚に高山重久、のちの右近(鹿賀武史)もいます。きゃー若かりし鹿賀さんの前髪小姓すがたっなんてっ!!(壊)
ということで、右近と助佐・五右衛門は、いよいよ信長(高橋幸治)とご対面となります。信長は、9年前に堺を訪ねたとき、船に搭載できる巨大鉄砲を宗久に発注したことを忘れていませんでした。
そして、松島の葉茶壷と紹鴎の茄子はうけとりますが、それを担保に堺を開放するというわけにはいかない。メンツというものがある。矢銭二万貫が出ないなら…というわけで、信長は宗久に、娯楽のために連れてきていた力士と相撲を取るように命じます。勝ったら二万貫は免じて撤退してやろう…ということで。
いくら信長の戯れでも、そういうことなら宗久は死んだ気になってやるしかありません。「それがし老体にて…」と一度は拒むのですが。それでも、丹波さんの裸体は老体どころかピチピチで(!)バッチリ筋肉も付いちゃってます!俳優さんは体が若いなあ。
本職の力士にあっけなく投げられてしまった宗久のかわりに、助佐が土俵に飛び出し、力士を軽々と押し出しで池に突き落とします。その怪力と度胸を気に入った信長は、矢銭二万貫はチャラにしてやる、そのかわりワシに仕えろと、その場で助佐をスカウトするのでした。
ですが、天然ボーイの助佐はすかさず「侍になる気ないです!オレは船乗りになるんで!」と信長のスカウトを断わり、褒美の代わりに堺から撤兵してくれといって信長の怒りを買います。
あわや斬り捨てられそうになった助佐でしたが、峯打ちされても動じません。その、変な度胸に感じるものがあった信長は、「いずれ侍になりたいと言わせてやる」といって助佐を解き放つのでした。
信長軍は撤収し、宗久の努力を知らない堺の町は、信長軍を敗走させたと勘違いして祝勝会のどんちゃん騒ぎです。その陰で、実は信長軍の撤退には、小西隆佐とならんで木下籐吉郎(緒形拳)の根回しがあったことを宗久は知り、籐吉郎と知己を得ます。
助佐も、偶然堺の町で籐吉郎に再会し、あの永楽銭のお侍だ!と駆け寄るのですが、籐吉郎はなぜか「お人ちがいでございます…」と言って、そそくさ立ち去ってしまうのでした。
第3話「羅針盤」
宗久(丹波哲郎)の礼金を蹴って、水夫を志願した助佐(市川染五郎)は、美緒(栗原小巻)に連れられて、琉球丸という船に乗り、船長の才蔵(花沢徳衛)を紹介されます。才蔵は助佐の亡き父を良く知っていて、自分の息子と助佐は同い年、生まれたときから知ってる、うちの子のほうが体が一回り大きいな…などといってガハハと笑うのですが、美緒はあとで、才蔵のむすこは、1年前に土佐沖で難破して死んでいると耳打ちします。
念願の船に乗れてウキウキの助佐なのですが、とりあえず出航の予定はなく、それでも当座半年、陸に上がることは許されず、船のそうじや下働きをすることになりました。そんな助佐を善住坊(川谷拓三)がからかいにきますが、善住坊も、もらった礼金をあっというまに遊んで使ってしまい、いまは、宗久のドラ息子の兼久(林隆三)のパシリをやっているわけです。その兼久が、堺の後ろ盾として織田方に戦をしかけようという三好家の、これまたパシリになって、戦につれていかれそうになってるので、「オレ戦なんかいやだ…」と悲しんでいるのでした。
戦なんか嫌だとはっきり言えよ!と助佐に勇気付けられて、その気になった善住坊でしたが、兼久に「さっさと来いボケ」とか強く言われるとなにも言えず、すごく情けない泣き笑いの顔で、鉄砲かついで戦についていくしかない。人がいいというか主体性が無いというか…。
そう、織田信長(高橋幸治)は、堺から軍を撤収したあと、将軍・足利義昭が申し出る副将軍も管領の位も蹴って、草津・大津・それに堺の統治権だけを確保、将軍を置いて都をがら空きにし、さっさと岐阜に引き上げてしまったのでした。
草津は交通の要所であり、堺は流通の要。そして大津は、鉄砲の産地である国友村を領内に抱えている…と、この三箇所を抑えると、日本国内での鉄砲の流通は、すべて織田家が握ることになるのですね。その野望の行き着く先に、そら恐ろしさを覚えた宗久でしたが、信長との和睦のスタンドプレイいらい、堺の会合衆では総スカンをくらっているんですね。結局会合衆の合議は、足利義昭を包囲して都を奪還しようとする阿波の三好家に、全面的に協力して信長と敵対するという方針に決定してしまいます。
結局、これは信長の罠だったんですね。三好勢は一時的に、将軍を包囲して都を制圧するものの、これを待っていたように岐阜から攻めあがってきた信長の速攻に、あっという間に敗退して、尼崎まで追い詰められます。信長は、反旗を翻した堺を許さず、女子供にいたるまで皆殺し、街は跡形もなくなるまで焼き払うと、おぞましい予告をしてきて、堺では大パニックに陥ります。
会合衆を代表して、津田宗及(津川雅彦)が、信長と和睦に一肌脱いでくれまいか…と宗久に頭を下げにきます。結局、三好家との手切れと武装解除、さらに矢銭二万貫の拠出という条件を丸呑みして、堺は信長に下ることになりました。助佐の相撲の手柄(笑)もまったく水の泡です。
っといっても、そんなことは夢にも知らない助佐。尼崎の残党の中に兼久がいるときき、一緒に善住坊もいるにちがいない、助けにいく!と船を下りようとするのですが、才蔵に、「船を下りるのは勝手にしろ、でも二度と戻るな。半年船の上で持たない者に水夫は務まらん」と厳しく言われてしまいます。
そういう助佐の窮状をすくったのが…以外や、千宗易(鶴田浩二)だったんですね。雪の降る夜、琉球丸を訪ねてきた宗易は、この船を尼崎まで動かして、三吉の残党、とくに兼久を救い出してほしいと才蔵に頼みます。
この鶴田浩二さんが、なんつうか、ビジュアルが海原雄山なんだけど(爆)、いやでも海原雄山より「黄金の日日」のほうがずっと前だよね。そんなことどうでもいいけど、とにかく利休に扮した鶴田さんのエレガントさったらなく、なんかこう、色気なんか漂ってたりするの。助佐に手を貸されて船に乗る場面なんか、手を引かれるかわりに、さして来た赤い傘を差し出して引っ張られていくんだけど…こういう何気ない絵が、ホント優雅なんですよ。なんか、いいなあ。利休の役者はたくさんいるけど、別格でそれらしい。
宗久は、五右衛門(根津甚八)を間者に使っていて、尼崎に兼久が残っていることも、いち早く知っていたんですけど、我が子を助けるために動く気はないんですね。でも、立場と信条のため、宗久は動きたくても動けないのだ。だから他人の自分たちが動く。とくに、似たような立場上のことで子供を見殺しにした過去のある才蔵だから、それが出来るはずではないか…と。この申し出に心動かされた才蔵は、尼崎まで琉球丸を回航することに同意します。助佐にとっては一石二鳥ですよね。善住坊を助けにいくのを、半年船を下りないという禁を破らず実行できるのですから。
ということで、琉球丸は出航します。尼崎で、善住坊は兼久と一緒に燃える砦に取り残されて、絶体絶命になっているんだけど、スルスル猿のようにロープをつたって現れた助佐に、助けの手を差し伸べられて、あわや九死に一生を得るのでした。
結局、堺は信長に降伏したわけなんですが、宗久は五右衛門に言います。「堺が信長に負けたと思うな。信長という新しい武将とともに、新たな時代を切り開いていくのだ」。
そう…。信長が堺を引き込んでやろうとしているのは、今までにない戦国エポックメイキングなんですね。流通・経済を握ることから戦を展開していく。それはやがて、古いタイプの守護大名や宗教勢力を向こうに回して、革命的な戦争になっていくんだけど…。
その変革の嵐の中で、「助佐は19歳になっていた」。19歳………。いや、見えないこと無いですよ。染五郎(幸四郎)さんまだまだお若いし。それに、昔の古い映像って、ソフトフォーカス効果もあったりしますしね。なによりも、妙に天然で、視界が他の人とずれてる感じの助佐が、やたら可愛いではないか!という話なのでした。
(つづきます)
でも、「黄金の日日」より前の大河ドラマ・ラインナップを見ても、そんな硬直した王道歴史もののオンパレードとは思えぬのです。どうみても、この直近10年よりバラエティに富んでるし。
戦国・戦国・幕末・戦国・戦国・幕末・戦国……と続くルーティーンに固着した最近のほうがあきらかにマンネリ・スパイラルに入ってる。イケメン俳優や歌手や、若い女の子なんか主役に引っ張ってくるより前に、見直すべき方向というものがあるんじゃないかなあ。
というわけで、この「黄金の日日」も、戦国ものにはちがいないんだけど、その方向性はものすごい斬新ですよ。その斬新さを、これからじっくり見て生きたいと思っております。
第二話「岐路」
さて、堺の町を救うため、信長に会うべく濠を泳ぎ渡った今井宗久(丹波哲郎)。使用人の中から選んだ、助佐(市川染五郎)、善住坊(川谷拓三)、五右衛門(根津甚八)の三人の背には、天下に隠れもなき名物・松島の葉茶壷と紹鴎の茄子という茶器セット。このお宝に堺の命運が掛かってるわけですが、信長軍の包囲は厚く、突破するため、宗久は善住坊に、オトリになってくれと頼みます。こういう貧乏くじを引かされる役どころ、川谷さんすごく似合ってて…泣き笑いの顔とかホント、懐かしくってホロッときちゃう。
宗久と助佐・五右衛門は、とりあえず、濠外の村に、しま(竹下景子。アタリマエだがわっかーい!!)という女の家を訪ねます。しまは今井家の下女だったらしいんだけど、宗久のお手つきだったんですね。そこは妾宅で、彼女は宗久の子供をうんでいました(この艶福ぶり、「真田太平記」とかぶるなあ)。
エロエロオヤジの宗久は、やはり下半身事情を抱えてるみたいですね。長男の兼久(林隆三。これも若っ!)はそんな父と折り合いが悪く、今井邸で養女の美緒(栗原小巻)にむかって「おまえはもう親父に抱かれたのか」とか言ったりします。どうせお前なんか売り払うために人買い舟から買ってきた娘だ…と、この美緒にもなんか事情がありそうです。
宗久の妾宅に泊まった夜、五右衛門は、ふと出来心を起こし、松島の葉茶壷を盗んで逃亡しようとしますが、マジメな助佐に体を張って止められます。マジメというか、助佐は、このミッションが成功したら船に乗れるんだということで頭が一杯。その成功を五右衛門に邪魔されてなるものか!というわけで、堺の町を救うとか、そういう使命感とはどうも方向性が違うんですけど、とにかく一生懸命。五右衛門を軽々投げ飛ばした助佐は、実は、恐るべき怪力の持ち主…らしい。
翌朝、宗久一行は信長の本陣を訪ねます。スムーズに通ることができた裏には、実は、京都の商人・小西隆佐(宇野重吉)の根回しがあったんですね。隆佐のむすこが信長の小姓をしていて、そこに話を通してくれた。これが小西弥久郎、のちの行長(小野寺昭)です。同僚に高山重久、のちの右近(鹿賀武史)もいます。きゃー若かりし鹿賀さんの前髪小姓すがたっなんてっ!!(壊)
ということで、右近と助佐・五右衛門は、いよいよ信長(高橋幸治)とご対面となります。信長は、9年前に堺を訪ねたとき、船に搭載できる巨大鉄砲を宗久に発注したことを忘れていませんでした。
そして、松島の葉茶壷と紹鴎の茄子はうけとりますが、それを担保に堺を開放するというわけにはいかない。メンツというものがある。矢銭二万貫が出ないなら…というわけで、信長は宗久に、娯楽のために連れてきていた力士と相撲を取るように命じます。勝ったら二万貫は免じて撤退してやろう…ということで。
いくら信長の戯れでも、そういうことなら宗久は死んだ気になってやるしかありません。「それがし老体にて…」と一度は拒むのですが。それでも、丹波さんの裸体は老体どころかピチピチで(!)バッチリ筋肉も付いちゃってます!俳優さんは体が若いなあ。
本職の力士にあっけなく投げられてしまった宗久のかわりに、助佐が土俵に飛び出し、力士を軽々と押し出しで池に突き落とします。その怪力と度胸を気に入った信長は、矢銭二万貫はチャラにしてやる、そのかわりワシに仕えろと、その場で助佐をスカウトするのでした。
ですが、天然ボーイの助佐はすかさず「侍になる気ないです!オレは船乗りになるんで!」と信長のスカウトを断わり、褒美の代わりに堺から撤兵してくれといって信長の怒りを買います。
あわや斬り捨てられそうになった助佐でしたが、峯打ちされても動じません。その、変な度胸に感じるものがあった信長は、「いずれ侍になりたいと言わせてやる」といって助佐を解き放つのでした。
信長軍は撤収し、宗久の努力を知らない堺の町は、信長軍を敗走させたと勘違いして祝勝会のどんちゃん騒ぎです。その陰で、実は信長軍の撤退には、小西隆佐とならんで木下籐吉郎(緒形拳)の根回しがあったことを宗久は知り、籐吉郎と知己を得ます。
助佐も、偶然堺の町で籐吉郎に再会し、あの永楽銭のお侍だ!と駆け寄るのですが、籐吉郎はなぜか「お人ちがいでございます…」と言って、そそくさ立ち去ってしまうのでした。
第3話「羅針盤」
宗久(丹波哲郎)の礼金を蹴って、水夫を志願した助佐(市川染五郎)は、美緒(栗原小巻)に連れられて、琉球丸という船に乗り、船長の才蔵(花沢徳衛)を紹介されます。才蔵は助佐の亡き父を良く知っていて、自分の息子と助佐は同い年、生まれたときから知ってる、うちの子のほうが体が一回り大きいな…などといってガハハと笑うのですが、美緒はあとで、才蔵のむすこは、1年前に土佐沖で難破して死んでいると耳打ちします。
念願の船に乗れてウキウキの助佐なのですが、とりあえず出航の予定はなく、それでも当座半年、陸に上がることは許されず、船のそうじや下働きをすることになりました。そんな助佐を善住坊(川谷拓三)がからかいにきますが、善住坊も、もらった礼金をあっというまに遊んで使ってしまい、いまは、宗久のドラ息子の兼久(林隆三)のパシリをやっているわけです。その兼久が、堺の後ろ盾として織田方に戦をしかけようという三好家の、これまたパシリになって、戦につれていかれそうになってるので、「オレ戦なんかいやだ…」と悲しんでいるのでした。
戦なんか嫌だとはっきり言えよ!と助佐に勇気付けられて、その気になった善住坊でしたが、兼久に「さっさと来いボケ」とか強く言われるとなにも言えず、すごく情けない泣き笑いの顔で、鉄砲かついで戦についていくしかない。人がいいというか主体性が無いというか…。
そう、織田信長(高橋幸治)は、堺から軍を撤収したあと、将軍・足利義昭が申し出る副将軍も管領の位も蹴って、草津・大津・それに堺の統治権だけを確保、将軍を置いて都をがら空きにし、さっさと岐阜に引き上げてしまったのでした。
草津は交通の要所であり、堺は流通の要。そして大津は、鉄砲の産地である国友村を領内に抱えている…と、この三箇所を抑えると、日本国内での鉄砲の流通は、すべて織田家が握ることになるのですね。その野望の行き着く先に、そら恐ろしさを覚えた宗久でしたが、信長との和睦のスタンドプレイいらい、堺の会合衆では総スカンをくらっているんですね。結局会合衆の合議は、足利義昭を包囲して都を奪還しようとする阿波の三好家に、全面的に協力して信長と敵対するという方針に決定してしまいます。
結局、これは信長の罠だったんですね。三好勢は一時的に、将軍を包囲して都を制圧するものの、これを待っていたように岐阜から攻めあがってきた信長の速攻に、あっという間に敗退して、尼崎まで追い詰められます。信長は、反旗を翻した堺を許さず、女子供にいたるまで皆殺し、街は跡形もなくなるまで焼き払うと、おぞましい予告をしてきて、堺では大パニックに陥ります。
会合衆を代表して、津田宗及(津川雅彦)が、信長と和睦に一肌脱いでくれまいか…と宗久に頭を下げにきます。結局、三好家との手切れと武装解除、さらに矢銭二万貫の拠出という条件を丸呑みして、堺は信長に下ることになりました。助佐の相撲の手柄(笑)もまったく水の泡です。
っといっても、そんなことは夢にも知らない助佐。尼崎の残党の中に兼久がいるときき、一緒に善住坊もいるにちがいない、助けにいく!と船を下りようとするのですが、才蔵に、「船を下りるのは勝手にしろ、でも二度と戻るな。半年船の上で持たない者に水夫は務まらん」と厳しく言われてしまいます。
そういう助佐の窮状をすくったのが…以外や、千宗易(鶴田浩二)だったんですね。雪の降る夜、琉球丸を訪ねてきた宗易は、この船を尼崎まで動かして、三吉の残党、とくに兼久を救い出してほしいと才蔵に頼みます。
この鶴田浩二さんが、なんつうか、ビジュアルが海原雄山なんだけど(爆)、いやでも海原雄山より「黄金の日日」のほうがずっと前だよね。そんなことどうでもいいけど、とにかく利休に扮した鶴田さんのエレガントさったらなく、なんかこう、色気なんか漂ってたりするの。助佐に手を貸されて船に乗る場面なんか、手を引かれるかわりに、さして来た赤い傘を差し出して引っ張られていくんだけど…こういう何気ない絵が、ホント優雅なんですよ。なんか、いいなあ。利休の役者はたくさんいるけど、別格でそれらしい。
宗久は、五右衛門(根津甚八)を間者に使っていて、尼崎に兼久が残っていることも、いち早く知っていたんですけど、我が子を助けるために動く気はないんですね。でも、立場と信条のため、宗久は動きたくても動けないのだ。だから他人の自分たちが動く。とくに、似たような立場上のことで子供を見殺しにした過去のある才蔵だから、それが出来るはずではないか…と。この申し出に心動かされた才蔵は、尼崎まで琉球丸を回航することに同意します。助佐にとっては一石二鳥ですよね。善住坊を助けにいくのを、半年船を下りないという禁を破らず実行できるのですから。
ということで、琉球丸は出航します。尼崎で、善住坊は兼久と一緒に燃える砦に取り残されて、絶体絶命になっているんだけど、スルスル猿のようにロープをつたって現れた助佐に、助けの手を差し伸べられて、あわや九死に一生を得るのでした。
結局、堺は信長に降伏したわけなんですが、宗久は五右衛門に言います。「堺が信長に負けたと思うな。信長という新しい武将とともに、新たな時代を切り開いていくのだ」。
そう…。信長が堺を引き込んでやろうとしているのは、今までにない戦国エポックメイキングなんですね。流通・経済を握ることから戦を展開していく。それはやがて、古いタイプの守護大名や宗教勢力を向こうに回して、革命的な戦争になっていくんだけど…。
その変革の嵐の中で、「助佐は19歳になっていた」。19歳………。いや、見えないこと無いですよ。染五郎(幸四郎)さんまだまだお若いし。それに、昔の古い映像って、ソフトフォーカス効果もあったりしますしね。なによりも、妙に天然で、視界が他の人とずれてる感じの助佐が、やたら可愛いではないか!という話なのでした。
(つづきます)