「奥の細道」より
半紙
●
かつみ刈(かる)比(ころ)も、やゝ近うなれば、
いずれの草を花かつみとは云(いふ)ぞと、人々に尋(たづね)侍(はべれ)ども、
更(さらに)知(しる)人なし。
沼を尋(たづね)、人にとひ、「かつみかつみ」と
尋ありきて、日は山の端(は)にかかりぬ。
【口語訳】
かつみを刈るころも、もうそう遠いことではないから、きっとこの辺で見つかるに違いないと、
どの草を花かつみというのかと、土地の人々に尋ねまわったが、
一向に知っているものがいない。
沼のほとりをさがし歩き、人に問い、「かつみ、かつみ」と尋ねまわっているうちに、
日は早くも山の端に傾いてしまった。
●
「かつみ」というのは、古くは真菰(まこも)の異名だったのが、
芭蕉の頃には、「あやめ」の一種をさしていたらしいのですが
まだ当時はそれもはっきりしていなかったとのこと。
で、「かつみ、かつみ」と尋ねてまわるということになったというわけです。
何だか、最近のぼくみたいで、おかしいです。