スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

Vatternrundan 2005 (終)

2005-06-25 06:45:59 | コラム
これまで、3回にわたって書いてきた自転車大会の体験談だけれど、長くなってもしょうがないので、この締めくくりをもってひとまず終わりにしますね。
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今年は実は40周年記念だった。年を重ねるごとに参加者が増えていき、今では応募者が17500人を超えるとと参加受付をもう打ち切ってしまう。今年は早くも1月終わりには打ち切られた。

15000以上の参加者が300kmという長さを一般道を使って走る、という規模から、この大会は世界的に知られているようで、外国からの参加も多い。ドイツ人が957人、デンマーク人が746人、ノルウェー人が611人、フィンランド人が286人と、やはり隣国からの参加者が多いが、人数は少ないものの、アメリカ(18人)を始めとして、カナダ、南米、オーストラリアなど遥々この大会のためにスウェーデンへやってくる人もいるので、スウェーデンを含めて28カ国からの参加者が集まる。

(ちなみに、参加申し込みの時の住所で、国別に分類されるから、厳密な国籍別の参加人数ではない。例えば、今年は私の父のほかに、東京から一人参加があったが、実は東京在住のスウェーデン人だったり、シンガポールから応募した人も実は、現地勤務のスウェーデン人だったりする。私は、といえば、登録した住所からスウェーデン人として数えられてしまっている。)

二年前に父と二人で参加したときには、日本からの初めての参加者ということで、ちょっとした注目を集めた。地元の新聞が第1面に写真つきでわれわれのことを取り上げたし、全国的な主要タブロイド紙も「今年はスタートラインに日本人が登場!」と一言書いてくれた。出発前には、公共テレビの地元のニュースに現場でインタビュー。走っている最中に、道端で観戦していた家族に「あっ、テレビに出てた人だ」と瞬間的に声をかけられたのは、悪い気がしなかった。(ちなみに、その年は、もう一人日本人がいた。この自転車の大会だけでなく“スウェーデン4大クラシック”と呼ばれる、クロスカントリー(スキー)、マラソン、水泳の大会もすべて制覇するという強者だった。)


二年前のヨンショーピン新聞

参加登録をした17580人の男女比は、約15000人と2600人。このうち、5800人、つまり3分の1が初めての参加者らしい。初めての参加者がいれば、その一方ではベテランもいるわけで、なんと11人が過去40回の大会をすべて制覇したらしい。(第1回大会であった1966年には370人が参加。第3回大会からは、左側から右側通行になった。1988年から、参加者が15000人を超えるようになった。)


過去40回の大会にすべて参加したベテラン11人。第40回を記念して作られたモニュメント

大会の直前に都合が悪くなったりする人もいるため、実際に会場にやってきてスタートを切るのは15108人。そのうち14121人が完走。987人が途中リタイヤ。300kmの途上に9つもサービスステーション(デポ)があることは既に書いたが、その他にもしっかりとしたサポート体制ができていて、レース中は常にサポート車をコース上に走らせて、接触事故などの事態に備えたり、負傷者の運搬、それから、トラブルを起こした自転車や脱落者を次のデポまで運んだりする。987人もリタイヤということは、彼らをバスで無事モータラまで送り届けるための、輸送力も用意されている。受付や各デポの要員は地元のスポーツ・クラブのボランティアによってなされている。国防軍は野戦病院のテントを提供し、そこで応急処置やマッサージなどが行われる。

速い人でどのくらいの時間がかかるのかというと、1977年にイタリア人のプロが6時間23分(平均時速46km)。しかし、この記録は伴走車や様々なサポートのおかげで、しかも大会とは別に走って達成されたものなので、公式記録には数えられていない。公式には、スウェーデン人男性の6時間42分。今年は、大会に先駆けて、ノルウェー人の一団が記録更新に挑戦。結果は6時間41分45秒、とわずかだが新記録を達成した。それにしても、すごいものだ。

最初のグループのスタートが金曜日20時、最後のグループがスタートするのが土曜日5:10。そして、朝の6時になると、一人目がゴールするのだそうだ。その後、少しずつ人々がゴールをしていき、午後にピークに達する。そして、夜中24時にゴールが締め切られる。だから、ゆっくりでもいいから完走だけでもしたいという人は、金曜日20時にスタートを切れば、次の日の24時まで28時間かけて走ることも可能なのだ。

多くの人がレース用のロード・レーサーで参加する一方で、カゴつき荷台つきのママチャリでの参加もある。タンデム(二人でこぐ自転車)もたまに見かける。タンデムは上り坂で抜群の威力を見せる。寝そべって乗る自転車は去年から禁止。

ウケ狙いの参加者もいて、例えば、かつてスウェーデン軍で使われた歩兵用の自転車に、迷彩服で参加した若者二人がいた。歩兵用の自転車は切替なしで、ブレーキもバックブレーキ(ペダルを逆回転させるとタイヤに両側から抵抗がかかり減速するタイプ)なので、大変そうだった。スターウォーズのダースベーダに扮装した人もいた。炎天下の中の黒装束はとても暑そう。併走したときに、横を見たら、彼が黒いマスクの下から、ニヤッと笑った笑い顔が不気味だった。

こうやって、プロの人とアマチュアの人が一緒くたになって走るので、誤解が起きたりや事故になることもある。たとえば、ルールを知らないアマチュアが、後方確認もせずに急停車して、後続の自転車が猛スピードで追突することもある。大会の公式ホームページに今年の大会のあとに書き込まれたメッセージにこんなのがあった。「ヴェッテルンルンダンはもうこりごりだ。ゴールまであとわずかのところで、ルールを知らない参加者がフラフラっと横から出てきて、スピードを出していた私に側面から突っ込んできた。おかげで、あばら骨が折れ、歯が二本欠けて、散々だった」 だから、こういうことがあってもおかしくないと、覚悟して参加する心構えも必要だ。私も、前を走っていた人がたまたま友達を見つけて急減速したので、あわや追突するところだった。

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何はともあれ、今年も完走できたのがとても嬉しい。未だ興奮が冷めず、来年もぜひとも出たいと、すでに気がはやる。

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