スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

SVTのレトロな広告 「Fri television」

2007-11-26 07:40:17 | スウェーデン・その他の社会
ちょっとした小ネタです。

スウェーデンの公共放送(テレビ・ラジオ・教育放送)も日本のように予算の大部分が受信料によって賄われている。テレビを持つ世帯は、見る見ないに関わらず受信料を納めることになっているが、その徴収にはスウェーデンも苦労している。

ともかく、徴収率を上げるためには、「公共放送の意義」と「公共放送運営における受信料の重要さ」を訴えることが重要だというわけで、公共放送の一つSVT(スウェーデン・テレビ)では自分たちの広告を流している。

レトロな感じがとても気に入っているので、紹介します。2バージョンあります。両方ともキャッチフレーズは「SVT. Fri television.」(SVT。独立したテレビ)です。


「Barnreklam är förbjudet i svensk tv. Men TV3 och Kanal 5 är inte svenskt tv. De är engelska kanaler som sänder på svenska. Och då kan man strunta i det förbudet.」
(子供向けの広告は、スウェーデンのテレビでは禁止されている。でも、TV3とチャンネル5はスウェーデンのテレビではない。スウェーデン語で放送しているイギリスのチャンネルなのだ。だから、この禁止事項を無視することができるのだ。 (それに比べて、SVTはスウェーデンの放送であり、民放でもないので、広告に依存せずに放送することができる。でもそのためにはあなたからの受信料が必要、という意味が込められている)

この短いクリップを見ていて何か気がつきませんか? そう、後ろで流れているコーラスが実は日本語なのです。どこかの少年少女合唱団が歌っているのでしょうね。それにしてもよく見つけてきたものだ。「海を越えて~」の部分で、船のアニメが使われているし、「まわるまわるよ~」もアニメに合っているということは、SVTも歌詞をある程度、把握しているのでしょう。もしかして、もとのアニメも日本製かな?

次のはスウェーデンのメディア所有について。

「Expressen, DN, Dagens Industri, SF, Sydsvenska Dagbladet, TV 4 ägs av Bonnier. TV3, TV6, TV8, TV1000, VIASAT, METRO ägs av Stenbeck. E24, Svenska Dagbladet, Aftonbladet ägs av Schibsted. SVT ägs av dig.」
(Expressen, DN, Dagens Industri, SF, Sydsvenska Dagbladet, TV 4はBonnierが所有している。TV3, TV6, TV8, TV1000, VIASAT, METROはStenbeckが所有している。E24, Svenska Dagbladet, AftonbladetはSchibstedが所有している。(でも)SVTの所有者はあなたなのですよ。)

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1番目のクリップについて、ちょっとだけ補足。スウェーデンのテレビ放送は、スウェーデンの国内法が適用されることになっているのだけれど、その規定が厳しすぎることを嫌ったTV3やKanal 5などの民放テレビは、放映の拠点をイギリスに置き、あくまで「イギリスのテレビ」として登録した上で、衛星放送によってスウェーデンに放送を流しているのだ。そうすることで、スウェーデンの国内法の規制を逃れているのだ。(スウェーデン人向けの放送だけで、イギリス人向けの放送はやっていない。)

ここでの規制とは、上のクリップに登場する「子供向け広告の禁止」のほかにはよく知らないけれど、2001年頃までは「一つの番組の途中で広告を流すことの禁止」っていうのもあった。これは視聴者にとっては嬉しいもの。

でも、上記の通り、TV3やKanal 5などは規制を逃れていたし、ちゃんとスウェーデンから放映している民放TV 4も、1時間番組の途中に、数分の別の番組を挟んで、あくまで3つの別々の番組、という形にして広告を入れるという、離れ業を編み出したので、ザル法になってしまい、結局廃止された。

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Ma)
2007-11-26 21:22:07
わあ、一番目の、うれしいですね。
たまたま、このうた知ってますが、母の小さい頃のNHK合唱コンクールの課題曲が有名になって童謡集にもはいっているようです。私も小学校のとき歌いました。合唱団で。『花のまわりで』ですね。
Unknown (Yoshi)
2007-11-26 22:46:17
やっぱり、訊いてみるもんですね。
知っている人がいるとは。しかも、歌ったことがあるとは。

SVTもどういうきっかけでこの歌を知ったんでしょうかね?

あのアニメはもともと日本のものだ、ってそんな思いが強くなってきました。
なるほど、 (Nei)
2007-11-28 02:01:36
このCMはそういう意味だったんですか。
「~世界のこどもー」が耳に残って気になっていました。でもスウェーデンテレビもアメリカ・イギリスの番組を字幕付きで流してばっかりですよね…。

先週だったか、SvDで「スウェーデンテレビは他の局の商業主義を批判する前に子供達に共産主義を教え込んでいたことを自己批判すべきだ」といった記事が載っていた記憶があります。そんな事実があるんでしょうか?
Unknown (Yoshi)
2007-11-28 08:41:01
コメントありがとうございます。
このネタは、結構反響があってビックリしました。

>でもスウェーデンテレビもアメリカ・イギ
>リスの番組を字幕付きで流してばっかりですよね…。

やはり、テレビ番組作成は音楽や出版といった他のメディア製品と同様、製作にかかる固定費用(fixed costs)が高く、一方で、流通にかかる変動費用(variable costs)が小さくなります。つまり、一つのドラマを作るのにかかる制作費は高額なのに対して、それを100人の人が見ようが1億人の人が見ようが、放送にかかる費用はさほど変化しないのですね。(一方で、収入は視聴者の数に比例して増えていくと言えると思います)

そのため、ドラマ制作の費用を視聴者の数で割った平均費用、そして、製作したドラマ一本あたりの収益を考えた場合、スウェーデンのような小国はどうしても不利になってしまうのですね。一方、イギリスやアメリカのように自国の内部市場も大きく、しかも英語といういわば世界共通語のために、国外の市場も期待できる国には、とっても有利なのでしょうね。

人口30万人で、他の国から地理的にもかなり離れているアイスランドのテレビは、もっとご指摘の傾向がもっと激しいのだと思いますよ。
Unknown (Yoshi)
2007-11-28 09:05:01
それから、SVTと共産主義との関係についてですが、スウェーデンは東西陣営のどちらにも属さない中立国という立場があったため、60年代、70年代(80年代も?)の頃は、子供向けの番組にもアメリカやイギリスなど西欧・北米の番組だけではなく、共産圏の番組も輸入して放送していたそうです。

例えば、東ドイツ製の子供向け番組のJohn Blund(Sandmann)などが有名らしいですよ。これは子供を眠りに付かせるための番組で、人形のコマ送りによる動画だったと思います。あまり内容は知りませんが、こういった東欧からの輸入物の番組に共産主義のプロパガンダが入っていた、ということを指摘する声はあるようです。

(なぜSandmannを知っているかというと、この番組の歴史と背景を扱ったノルウェー製のドキュメンタリー番組をたまたま見たことがあるからなんです。)

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