スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

キプロスの預金課税 (その後)

2013-03-21 01:57:02 | スウェーデン・その他の経済
キプロスの預金課税案は火曜日に議会で否決。その後、ユーロ加盟国・欧州中銀・IMFとの協議が続けられているが「100億ユーロの支援を得るためには58億ユーロをキプロスが自前で捻出すべき」という条件に今のところ変化はない。キプロス救済策の負担の大部分を負うことになるドイツのメルケル首相は、今日も「キプロスは打開策の新たな案を自ら打ち出してほしい。10万ユーロ以上の預金を持つ者は、財政負担に協力すべきだ」と強調していた。

ユーロ加盟国・欧州中銀・IMFとの交渉と並行して、キプロス財務相はロシアを訪問している。実は、キプロスは2012年夏の段階でEU・ユーロ加盟国に対し財政支援を要請していたが、交渉に失敗。ロシアはこの時、25億ユーロの特別融資をキプロスに提供している。

キプロスが現在続けいるロシアとの交渉議案の一つは、間もなく期限を迎える、この時の融資の延長。

もう一つは、預金課税によって捻出する予定だった58億ユーロをどうにかして手に入れること。しかし、これ以上の融資はロシアからも期待できないため、資金を得るためには、キプロスは国営銀行や天然資源の採掘権をロシアに販売するといった方法しかないと見られている。

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低い法人税率(現行10%)を利用し、キプロスを「タックスヘイブン(租税回避地)」に使っている企業はスウェーデンにも少なくないようだ。租税回避だけを目的としてキプロスに登録されたスウェーデン系持ち株会社は4000にのぼるという。

スウェーデン国税庁によると、過去5年間にキプロスのためにスウェーデンが失った税収は約12億ユーロにおよぶ。(ただし、だからといって、スウェーデンの法人税がEU諸国や先進国の中で高いというわけではなく、90年代以降は比較的低くなっていることに注意。91年:28%→ その後:26.3%→ 今年から:22%で、EU平均以下か同じくらい。)

課税逃れを少しでも防ぐため、スウェーデンとキプロスの間には企業情報を共有する協定が結ばれているものの、スウェーデン国税庁によると、キプロス側はその義務を十分に果たしていない、とスウェーデンの国税庁は不満を述べている。

いずれにしろ、今回の預金課税をめぐる混乱のため、タックスヘイブンとしてのキプロスの魅力は大きく低下することになるだろう。そうなれば、金融部門が大きな割合を占めてきたキプロス経済の低迷に拍車が掛かることになり、皮肉なことに自助努力を強調しているEU・IMFの意図とは裏腹な結果になってしまうだろう。

スウェーデンはユーロ加盟国ではないため、キプロス支援において直接的な負担を負うことはない。そのため、スウェーデンのボリ財相も「キプロスに残るのはいずれ綺麗な砂浜だけになるだろう」と少し他人事にも感じられるコメントをしていた。

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