先日、日本のジャーナリストの方と話をさせていただく機会があり、その時に瀬戸内海の祝島(いわいしま)について知った。山口県に属するこの島の周辺は昔から好漁場と知られており、海草や藻が豊富に生える浅瀬は魚にとって大切な産卵の場となっているようだ。そして、この浅瀬で繁殖したさまざまな魚が周囲の海域へ広がっていくことで、漁師たちの貴重な収入源となり、そして、食卓にも食糧を提供してくれた。環境汚染が進んできた瀬戸内海では残された数少ないの漁場の一つだという。
まさにその浅瀬の目と鼻の先に、中国電力が上関原子力発電所の建設を計画している。そして、20数年にわたる地元の反対運動にもかかわらず、その工事がちょうど今始まろうとしているところだという。
http://www.iwaishima.jp/
http://stop-kaminoseki.net/
原発が建設されれば、埋め立てそのものや土砂の流出によって大切な漁場が被害を受けるだけでなく、原発が排出する温排水のおかげで周辺海域の環境も大きく変化することになるだろう。日本にも環境影響評価法(環境アセスメント法)が1997年に制定されたが、この原発プロジェクトに対して果たしてきちんと適用されたのかどうか、気になるところだ。
それ以上に不可解なことは、日本の報道を見ていてもこのような大きなプロジェクトについて、ほとんど報道されないことだ。原発で事故や不祥事があればニュースにはなるものの(一方で、重大な不祥事やミスにも関わらずニュースにすらならないケースもある、という声も聞く)、では、日本のエネルギー政策や原発政策がどこに向かおうとしているのか?など、普段の報道から伝わってくる情報はわずかだ。
「様々なしがらみから、一般のメディアは原発問題には触れたがらない」という声も耳にする。日本の電力需要を時系列で見てみると右肩上がりで増え続けていることが分かるが、それを支えてきたのが原発の増設や石炭・天然ガスによる火力発電だ。しかし、一部の人々が「クリーンなエネルギー」と呼ぶ原子力発電をめぐる不祥事や安全面での問題は尽きることがなく、このような重大な問題を電力業界や産業界、経済産業省だけに任せても果たしていいのか?と不安も抱く。
スウェーデンの原発に関しては、少し前にこのブログで私が書いた文章を紹介した。あの記事は1500字程度のものだったが、あの内容をより詳しく説明した13000字程度の記事を別の雑誌に書かせてもらった。発売の日程について詳しく分かり次第、追って連絡します。
――――――――――
ところで、スウェーデンの原発(現在10基)でも、事故や不祥事が絶えない。
例えば、ヨーテボリから60kmほど南位置するリングハルス(Ringhals)原発では、原発監視のための国の機関である放射能安全管理委員会(Strålsäkerhetsmyndigheten)が、この原発における安全管理の実態を抜き打ちで調査したところ、2割から3割のケースで安全管理の規則違反があることが判明した。そして、この委員会はこれらの違反がこの時だけの稀なケースではなく、常習的に行われていたと判断し、今後、この原発の操業活動を特別な監視下に置くことに決定した。
実はこの原発は、2005年にも同様の問題で放射能安全管理委員会の前身である原発監視委員会(Statens kärnkraftinspektion)から改善勧告を受けていたのに、4年経った今でも問題が残されていたのだ。
スウェーデンのエネルギー政策は、産業省と環境省の両方が管轄している行政分野だが、環境省の権力も比較的大きいようで、例えば放射能安全管理委員会は環境省のもとにある。そのため、今回の事件に対しては、環境大臣であるアンドレアス・カールグレーンが放射能安全管理委員会のすばやい決定を評価する発言を行っている。
安全管理をめぐる同様の不祥事は、スウェーデンの他の原発でもよく聞かれる問題だ。
2006-08-08:忘れられた論争のカムバック?
もう一つ別のケースは、今週ドイツで起きた事件だ。ただし、スウェーデンの電力会社であるヴァッテンファッル(Vattenfall)の所有している原発であったため、スウェーデンでも報道された。
クリュンメルン(Krümmeln)にある原発で、変圧器が故障し、その影響で原発自体が運転を停止することになった。ドイツの法によると、原発が運転停止をした場合は直ちに監督する行政機関に通告しなければならなかったが、それを怠ったという。
その日は原発の外で反原発団体による抗議デモが行われており、このデモを監視していた警察官が、運転停止の話を原発の職員からたまたま耳にしたことで発覚したのだという。
この原発では今年初めにも変圧器の火災のために運転がしばらくの間、停止されたことがあり、運転を再開して間もなかった。このほかにも、いくつかの事故や不祥事がこれまであったため、ドイツの行政機関の勧告をたびたび受けてきたという。
今回の出来事を受けて、この原発はしばらくの間、停止されることになった。ドイツの環境大臣は、この原発に対してより厳しい安全管理水準を求める構えだという。
まさにその浅瀬の目と鼻の先に、中国電力が上関原子力発電所の建設を計画している。そして、20数年にわたる地元の反対運動にもかかわらず、その工事がちょうど今始まろうとしているところだという。
http://www.iwaishima.jp/
http://stop-kaminoseki.net/
原発が建設されれば、埋め立てそのものや土砂の流出によって大切な漁場が被害を受けるだけでなく、原発が排出する温排水のおかげで周辺海域の環境も大きく変化することになるだろう。日本にも環境影響評価法(環境アセスメント法)が1997年に制定されたが、この原発プロジェクトに対して果たしてきちんと適用されたのかどうか、気になるところだ。
それ以上に不可解なことは、日本の報道を見ていてもこのような大きなプロジェクトについて、ほとんど報道されないことだ。原発で事故や不祥事があればニュースにはなるものの(一方で、重大な不祥事やミスにも関わらずニュースにすらならないケースもある、という声も聞く)、では、日本のエネルギー政策や原発政策がどこに向かおうとしているのか?など、普段の報道から伝わってくる情報はわずかだ。
「様々なしがらみから、一般のメディアは原発問題には触れたがらない」という声も耳にする。日本の電力需要を時系列で見てみると右肩上がりで増え続けていることが分かるが、それを支えてきたのが原発の増設や石炭・天然ガスによる火力発電だ。しかし、一部の人々が「クリーンなエネルギー」と呼ぶ原子力発電をめぐる不祥事や安全面での問題は尽きることがなく、このような重大な問題を電力業界や産業界、経済産業省だけに任せても果たしていいのか?と不安も抱く。
スウェーデンの原発に関しては、少し前にこのブログで私が書いた文章を紹介した。あの記事は1500字程度のものだったが、あの内容をより詳しく説明した13000字程度の記事を別の雑誌に書かせてもらった。発売の日程について詳しく分かり次第、追って連絡します。
ところで、スウェーデンの原発(現在10基)でも、事故や不祥事が絶えない。
例えば、ヨーテボリから60kmほど南位置するリングハルス(Ringhals)原発では、原発監視のための国の機関である放射能安全管理委員会(Strålsäkerhetsmyndigheten)が、この原発における安全管理の実態を抜き打ちで調査したところ、2割から3割のケースで安全管理の規則違反があることが判明した。そして、この委員会はこれらの違反がこの時だけの稀なケースではなく、常習的に行われていたと判断し、今後、この原発の操業活動を特別な監視下に置くことに決定した。
実はこの原発は、2005年にも同様の問題で放射能安全管理委員会の前身である原発監視委員会(Statens kärnkraftinspektion)から改善勧告を受けていたのに、4年経った今でも問題が残されていたのだ。
スウェーデンのエネルギー政策は、産業省と環境省の両方が管轄している行政分野だが、環境省の権力も比較的大きいようで、例えば放射能安全管理委員会は環境省のもとにある。そのため、今回の事件に対しては、環境大臣であるアンドレアス・カールグレーンが放射能安全管理委員会のすばやい決定を評価する発言を行っている。
安全管理をめぐる同様の不祥事は、スウェーデンの他の原発でもよく聞かれる問題だ。
2006-08-08:忘れられた論争のカムバック?
もう一つ別のケースは、今週ドイツで起きた事件だ。ただし、スウェーデンの電力会社であるヴァッテンファッル(Vattenfall)の所有している原発であったため、スウェーデンでも報道された。
クリュンメルン(Krümmeln)にある原発で、変圧器が故障し、その影響で原発自体が運転を停止することになった。ドイツの法によると、原発が運転停止をした場合は直ちに監督する行政機関に通告しなければならなかったが、それを怠ったという。
その日は原発の外で反原発団体による抗議デモが行われており、このデモを監視していた警察官が、運転停止の話を原発の職員からたまたま耳にしたことで発覚したのだという。
この原発では今年初めにも変圧器の火災のために運転がしばらくの間、停止されたことがあり、運転を再開して間もなかった。このほかにも、いくつかの事故や不祥事がこれまであったため、ドイツの行政機関の勧告をたびたび受けてきたという。
今回の出来事を受けて、この原発はしばらくの間、停止されることになった。ドイツの環境大臣は、この原発に対してより厳しい安全管理水準を求める構えだという。