スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

ちょっとだけ帰国

2008-04-23 11:03:37 | Yoshiの生活 (mitt liv)
前回のブログから分かるように、今、ちょっとの間だけ日本に戻っています。更新が遅れているのもそのため・・・。


昨日はいつもお世話になっている東京経済大学のある先生のゼミで、講義をさせていただきました。テーマは「スウェーデンの育児支援と女性の社会進出」

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スウェーデンでは1960・70年代から「女性の社会進出」が進められてきたものの、育児・家事の負担の多くは相変わらず女性の側に押し付けられてきたので、仕事と家庭の両方を背負うことになった。これは見方を変えれば、仕事と家庭が両立できる社会である、ということでもあるので、評価できる。しかし、家庭での負担が減らされることなく、家庭外での仕事も持つようになったことが新たな問題となった。

そのため、労働時間を柔軟に変化できる職場(公的部門、パートタイム)に女性が多く雇用されるようになった。また、1990年代半ばまでは育児休暇のほとんどを女性がとっていたので、民間企業は責任ある地位に女性をあまり付けたがらなかった。

つまり、「女性の社会進出」という目標は達成したものの、次のステップとして「職場・労働市場における男女平等」「キャリア追求における男女平等」を目指す必要が出てきたのだった。

そこで、今スウェーデンで熱い議論は、いかにして男性の家事・育児負担を増やしていくべきか? つまり「男性の家庭進出」家事・育児のために生じる“キャリア上の不利”を男女で等しく分担していこう、という方向に社会を動かしていくことなのだ。

一つの方策としては育児休暇保険の一部を父親の側に固定することで、父親が取得しなければ、この分の育児休暇は活用できない、とすること。実際、1995年から育児休暇保険の給付期間の450日のうち、30日分を男性に固定した(パパの月)。2002年からは育児休暇保険が480日に延長され、そのうち60日分が父親に固定された。

男性の意識の面でも変化が見られ、家事・育児負担を積極的に分担しようとする若い世代の男性が増えつつある。男性による育児休暇の取得率も増えつつある・・・。

とはいえ、変化は遅い。「二人で稼ぐ家族モデル」から「二人で稼ぎ、二人で家事・育児をしていく家族モデル」への道のりはまだまだ長い。そのために様々な議論がスウェーデンで今、行われている。

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というのが、趣旨でした。

25日には再びスウェーデンへ戻ります。