Galterö島の神隠し
現在住んでいるBrännö島の裏には、別の島Galterö島が接している。Brännö島の中心部から砂利道を1kmほど進み、さらに海沿いの小さな畦(あぜ)道を苦労しながら500mくらい進むと、Brännö島の裏側にたどり着く。細い岩場の道をさらに歩くと、このGalterö島に渡れるのだ。
今日土曜日は日中は大学関係のことを自宅で処理し、夕方からこの島に散歩に行ってみることにした。大家の話だとこの島の草原にはキノコがたくさんあるとのことだ。
------
以前は道が分からず途中で引き返したあぜ道を、今日はさらに進んでいく。海沿いは湿地帯が続き、あぜ道もところどころ雨水で水没している。水没すらしてなくても、ちょっと足を踏み込むと、とたんに、はまり込むところもあるので注意が必要。Galterö島に渡る岩場まで来ると、ピクニックをした人たちだろうか、私が来た道を逆に引き返していく人々に出会った。16時を少し回るので人々がちょうど帰っていく時間だ。
さて、Galterö島。この島はどうやらBrännö島と同じくらいの大きさだが、Brännö島とは対照的に、人がほとんど住んでいない。サマーハウスが数件あるくらいだろうか。しかし、それも岩場などの隠れたところにあるので、島はほとんど荒野だといっていいほどだ。岩場がたくさん続き、ところどころに草が生え、そんな丘を越えると平原がしばらく続く。ここには羊が放牧され、のどかに草をかいつまんでいる。あちこちに糞が落ちている。
道といえるような道はなく、人が頻繁に通ることによってできるあぜ道程度のけもの道しかない。そんな中を道に沿って歩いていく。キノコらしいものは残念ながら見当たらない。海沿いにぽつんと立つ一軒家を見つけた。サマーハウスのようで今は人はいない。
ゴツゴツした岩盤からなる丘陵がある。見晴らしがいいのかと思い、あぜ道をそれて登ってみる。真っ青な大西洋が広がっていた。ヨーテボリから海外に向けて大きなフェリーが立て続けに発っていく。島自体はそれほど大きいものではないだろうと思い、丘陵づたいにそのまま歩いてみることにした。道なき道を歩いていく。
しまった!と思った。あぜ道からかなりそれてしまい、自分の居場所が分からなくなった。回りの景色を頼りに方角を推測する。海が開けている方角が西のはずだ。しかし、行く手には湿地帯が開け、進めない。かといって、引き返すにも、どちらから来たか分からない。遭難した? 小さいはずの島で? すぐ近くをデンマーク行きの大きなフェリーが横切っていく。もし助けを求めることが必要になったら、どうしようか? 携帯を忘れてしまった。船に叫ぶしかないのだろうか?
数十分歩いた。別の一軒家の横を通り過ぎたが、ここも人の気配がない。その後しばらくして、それらしきあぜ道を発見した。しかし、どちらに向かえばよいのか、分からない。勘を頼りにあぜ道を歩いていく。島の反対側に出た。どうやったら、戻れるのだろう。と、そのとき、遠くに二人の人影を見つけた。助かったと思った。その方角にひたすら歩いていった。しかし、そこには誰もいなかった。太陽が低くなりつつある。冷たい秋の風が吹き始める。背筋がゾッとした。やな予感がした。
どこに続くか分からない、あぜ道をたどって進んでいく。見覚えのない新しい景色が次々と広がる。この島ってこんなに大きかったのか? 数十分してポツンと立つ一軒家に遭遇した。この島に来て3軒目に見る家だと思った。でも、まてよ・・・。このとき気がついた。実は同じ家だった。つまり、1軒目も2軒目も、そしてこの家もみんな同じ家。ということは、出口はこの近くか?
最初の記憶をたどりながら、しばらくして出口を見つけることができた。
---
2年ほど前にタブロイド紙に、孫を連れてキノコ狩りのためにスモーランド地方の森に入ったおばあさんが、道に迷ってしまい、孫とともに一晩森で明かした後、救助された話が載っていた。自宅への道を探すべく焦るあまり、同じ場所を何度も回りながら、結局、発見されたのは自宅のすぐそばだったとか。焦ったときのあの感情は思い出すだけでも怖い。同じ風景がまったく違って見えてしまうこともある。まるで神隠しに遭ったようだ。それにしても、途中で見かけた二人の人影、何だったのだろうか?
現在住んでいるBrännö島の裏には、別の島Galterö島が接している。Brännö島の中心部から砂利道を1kmほど進み、さらに海沿いの小さな畦(あぜ)道を苦労しながら500mくらい進むと、Brännö島の裏側にたどり着く。細い岩場の道をさらに歩くと、このGalterö島に渡れるのだ。
今日土曜日は日中は大学関係のことを自宅で処理し、夕方からこの島に散歩に行ってみることにした。大家の話だとこの島の草原にはキノコがたくさんあるとのことだ。
------
以前は道が分からず途中で引き返したあぜ道を、今日はさらに進んでいく。海沿いは湿地帯が続き、あぜ道もところどころ雨水で水没している。水没すらしてなくても、ちょっと足を踏み込むと、とたんに、はまり込むところもあるので注意が必要。Galterö島に渡る岩場まで来ると、ピクニックをした人たちだろうか、私が来た道を逆に引き返していく人々に出会った。16時を少し回るので人々がちょうど帰っていく時間だ。
さて、Galterö島。この島はどうやらBrännö島と同じくらいの大きさだが、Brännö島とは対照的に、人がほとんど住んでいない。サマーハウスが数件あるくらいだろうか。しかし、それも岩場などの隠れたところにあるので、島はほとんど荒野だといっていいほどだ。岩場がたくさん続き、ところどころに草が生え、そんな丘を越えると平原がしばらく続く。ここには羊が放牧され、のどかに草をかいつまんでいる。あちこちに糞が落ちている。
道といえるような道はなく、人が頻繁に通ることによってできるあぜ道程度のけもの道しかない。そんな中を道に沿って歩いていく。キノコらしいものは残念ながら見当たらない。海沿いにぽつんと立つ一軒家を見つけた。サマーハウスのようで今は人はいない。
ゴツゴツした岩盤からなる丘陵がある。見晴らしがいいのかと思い、あぜ道をそれて登ってみる。真っ青な大西洋が広がっていた。ヨーテボリから海外に向けて大きなフェリーが立て続けに発っていく。島自体はそれほど大きいものではないだろうと思い、丘陵づたいにそのまま歩いてみることにした。道なき道を歩いていく。
しまった!と思った。あぜ道からかなりそれてしまい、自分の居場所が分からなくなった。回りの景色を頼りに方角を推測する。海が開けている方角が西のはずだ。しかし、行く手には湿地帯が開け、進めない。かといって、引き返すにも、どちらから来たか分からない。遭難した? 小さいはずの島で? すぐ近くをデンマーク行きの大きなフェリーが横切っていく。もし助けを求めることが必要になったら、どうしようか? 携帯を忘れてしまった。船に叫ぶしかないのだろうか?
数十分歩いた。別の一軒家の横を通り過ぎたが、ここも人の気配がない。その後しばらくして、それらしきあぜ道を発見した。しかし、どちらに向かえばよいのか、分からない。勘を頼りにあぜ道を歩いていく。島の反対側に出た。どうやったら、戻れるのだろう。と、そのとき、遠くに二人の人影を見つけた。助かったと思った。その方角にひたすら歩いていった。しかし、そこには誰もいなかった。太陽が低くなりつつある。冷たい秋の風が吹き始める。背筋がゾッとした。やな予感がした。
どこに続くか分からない、あぜ道をたどって進んでいく。見覚えのない新しい景色が次々と広がる。この島ってこんなに大きかったのか? 数十分してポツンと立つ一軒家に遭遇した。この島に来て3軒目に見る家だと思った。でも、まてよ・・・。このとき気がついた。実は同じ家だった。つまり、1軒目も2軒目も、そしてこの家もみんな同じ家。ということは、出口はこの近くか?
最初の記憶をたどりながら、しばらくして出口を見つけることができた。
---
2年ほど前にタブロイド紙に、孫を連れてキノコ狩りのためにスモーランド地方の森に入ったおばあさんが、道に迷ってしまい、孫とともに一晩森で明かした後、救助された話が載っていた。自宅への道を探すべく焦るあまり、同じ場所を何度も回りながら、結局、発見されたのは自宅のすぐそばだったとか。焦ったときのあの感情は思い出すだけでも怖い。同じ風景がまったく違って見えてしまうこともある。まるで神隠しに遭ったようだ。それにしても、途中で見かけた二人の人影、何だったのだろうか?