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南信州で地域エネルギーに関わりながら思うこと

ドイツの社会的銀行/GLS銀行

2013-02-13 | 環境
GLS銀行という、社会的事業にのみ融資する銀行のお話を聞いて来ました。


1 勢いに乗った社会的銀行

GLS銀行は1974年に設立した市民組合が起源のドイツの社会的銀行です。社会福祉やエコロジー的な事業に特化して貸出を行っています。つまり、GLS銀行に預けたお金は、社会を持続的にする事業にのみ使われることになります。

ドイツではフクシマ原発事故の際、すぐに原発を停止し早期の原発全廃に方針転換しましたが、「私が銀行に預けたお金は原子力産業に使われていないだろうか」という疑問を多くの人が持ったそうです。その結果、GLS銀行の口座開設者および預金額は増え続け、近年うなぎ上りとなっています。

右肩上がりな売上高、運用額のグラフ。

2012年の売上は27億ユーロとメガバンクに比べると小さいものの、まさに乗りに乗っている勢いのある金融機関です。



2 運用先の公開

驚くことに、GLS銀行は運用先を全て公開しています。4半期に一度、冊子を発行しているのですが、そこに各案件の概要と貸付額を掲載しているのです。これはドイツでも非常に珍しいことだそうです。日本では聞いたことがありません。

この公開性は、GLS銀行にとってはプラスに働いていると思います。自分のお金がどんなことに役だっているのか、預金者は知ることができ、成果を感じられればさらにファンになります。これはおひさまファンドにも参考になりました。おひさまと同じく、事業成果を視察する出資者ツアーも実施しているそうです。


すごくおしゃれな冊子です。子供向けのイラストなど一切なし。写真、デザインがかっこいいです。


冊子の巻頭の代表者。美人ですね~


3 お金に意志を乗せる

日本の銀行、ゆうちょなどでは、預けたお金に意志をもたせることが非常に難しくなっています。もしかしたら、原発推進の大電力会社や、CO2削減に反対している経団連の所属企業に流れているかもしれません。メガバンクへの貯金だとその可能性が高く、信用金庫や地方銀行ならその割合は少ないけれど、それでもどこの誰さんのどんな事業にお金が使われたか知ることはできません。(おひさまファンドのような「市民出資」であれば、出資金を「自然エネルギー事業に使う」ということははっきりしています)



4 民主的な運営

GLS銀行では、「組合事業」として金融業務を行なっています。「組合」では、いくら出資しようと「一人一票」の発言権です。株式会社だと、大株主が発言を持っているため、株を持っていても庶民は意思決定から排除されます。僕はこの話しを聞いた時に東電、中電、関電の株主総会を思い出しました。「原発から撤退」を求める株主提案をしらっと無視する議事進行が平然と許されていました。これは、大株主が原発推進を賛成していたからで、少数派に何を言われても経営陣は全然関係ないのです。

しかし、一人一票の組合総会であれば、どんな声も無視するわけには行きません。GLS銀行は現在3万人の総会参加の権限をもった組合員がいて、実際に参加するのは約800人だそうです。800人の声を聞く年次総会って、運営はかなり大変なことでしょう。開催場所を分けたり、数を増やして分散開催を検討していることでしたが、そうまでしても「みんなの声を平等に聴く」という民主制にこだわって、組合を続けているそうです。



日本でも、おひさまファンドやミュージックセキュリティーズなど、「市民ファンド」として、お金に意志を持たせて社会を変えようという活動が始まっています。将来はGLS銀行を手本に、社会的銀行もできてきたらいいですね。同時に、地域内で活動しているローカルな信用金庫があり、「信用金庫がグリーン(エコ)になる」、という方向も現実的だと思います。FITができて長期的な安定性が高い再生可能エネルギーの分野には、地域金融機関がどんどん資金を入れるようになるでしょう。GLS銀行でも市民のエネルギー組合への融資をたくさんしているのですが、「FITがあるので、太陽光発電事業については3つの指標を入れればある程度の事業判断が出てくるようにマニュアル化して審査している」というほどポピュラーなものになっているようです。長野県でいえば、飯田信金、八十二銀行、茨城で言えば常陽銀行、水戸信金の役割は大きくなります。ドイツのように個人や農家、中小企業がエネルギー事業の担い手になるとき、スムーズに資金を融資できるかどうか。FITによる20年間の安定した収入は、預貸率が50%程度の地方銀行にとっても、有力な貸出先になると思います。ちなみに、GLS銀行では75%近くまで貸し出したいと言っていました。

GLS銀行にはまだ日本の銀行関係者は視察に来ていないそうです。

我々が一番早いというのは、うれしいような残念なような・・銀行の人が視察されたら、本当に参考になると思います。

ドイツの太陽光発電

2013-02-01 | いろいろ
※一部、修正しました。産業用をまずは普及させて次は家庭用が普及したと書いていたのですが、よく確認しましたらむしろ意識ある市民から導入が始まり、家庭も産業も一緒に普及してきたということです。



2000年に固定価格全量買取制度(長期間、高い価格で全て買い取る)が始まっていたドイツでは、2009年から家庭向けの余剰売電(自家消費して、余った分だけ高く売れる)を進めてきた日本とは違った太陽光発電の普及がされていました。(日本でも2012年からは、産業用は全量売電になりました)

日本だと家庭用の太陽光発電(3~4kW)をよく見かけますが、ドイツでは20kW~50kWくらいの中規模なものが目立っていて、僕の回った市街地では家庭用の普及率は飯田市の半分くらいな感覚でした。
なぜドイツでは大きなものが存在感があるのか。

ドイツでも、まずは意識ある市民が太陽光発電に取り組み始めたそうですが、10kW以上でもそれ未満でも、全て全量買取の対象であったため、小規模な家庭用、市民共同出資および農家や中小企業による中規模なもの、メガソーラーの大きなもの、すべてが同時に普及してきたそうです。

ただし、都市部では日本に比べて持ち家比率が低いので、家庭用はあまり普及していません。農村部で日照条件のよいところでは、家庭用も普及しているそうです。

ドイツでは今はすでに買取価格が大きく下がったため、大きいパネルでないと収益がでないため、今後は中・大規模がさらに増えていくことが予想されています。なお、通常に買うよりも太陽光の電気のほうが安くなるグリッド・パリティに到達したので、これからは売電ではなく自家消費型も増えていく見込みです。

さて、ドイツで見た太陽光の様子を紹介します。

農家の大きな屋根。農家にはよく付いていました。

フライブルク・ボーバン地区(車が厳しく規制されている)の公共駐車場の屋上パネル。市街地の周辺部で車を降りてトラムに乗り換える交通政策のシンボル的拠点に、ソーラーがたくさん付いています。

フライブルクのサッカー場。15年前、ドイツではじめてサッカー場に全面的にソーラーが載ったところ。市民が多く出資しています。

高速のサービスエリアの屋上が全面ソーラー。30~40kWくらいかな。

カッセル市エネルギー公社屋上の薄膜ソーラー。ここにみんなで立って、記念撮影したけど発電量減っちゃったかな?