自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

ベートーヴェンの自然観

2013年03月17日 | Weblog

 ベートーヴェンの「田園」交響曲のリストによるピアノ編曲版の楽譜を入手して以来、時々練習を試みたが、歯が立たない。それでもテクニックが易しいところを弾くのは楽しい。
 ところで、ベートーヴェンにとって「田園」(Pastorale)はどんな意味における「田園」であったのだろうか。解説を参考にして僕なりに少し考えてみる。
 パストラーレとは本来、牧歌を表し、牧歌にはイエスの降臨を喜ぶクリスマス音楽としての役割と、牧人の音楽としての役割という二つの側面がある。「田園」交響曲の終章に「牧人の歌」と記されているのは後者の意味である。だが、牧人の歌は単に羊飼いの音楽なのではなく、ヴェルギリウス以来西欧に流れているアルカディアにおける牧歌であろう。アルカディアでは神と人が調和した生活を営むことができる。僕には実感できないが、神の恩寵に満たされた安らぎのある調和した生活の場がアルカディアであるなら、ベートーヴェンの「シンフォニア・パストラーレ」は音楽における「田園(アルカディア)の生活誌」である。
 「田園」は神の創造になる自然である。「嵐」は神の怒りの象徴であり、終章の「嵐の後の感謝の念」が「牧歌の歌」であることが、神の創造たる自然を表していると考えられる。
 簡単に言って以上のようなことは僕には実感できないが、この曲の美しさは、やはり自然の秩序を表す、ただならぬ美しさである。現代文明が忘れてきた自然である。