「自然は飛躍せず(Natura non facti saltum.)」とはスウェーデンの植物学者リンネKarl von Linne(1707-1782)の「植物哲学(Philosophia Botanika)」に出てくる言葉。彼は穏やかな人物であったらしく、植物を相手に仕事をしていたからか、自然の急激な変化を好まなかった。
彼のこの言葉は、当時のカントのような哲学者にも受け入れられ、以後、自然学の公理のような位置にある。確かに植物の成長には飛躍がない。植物だけではなく、動物の成長にも飛躍はない。人間も動物として自然の中にある。
ところが、人間の営みには飛躍があるみたいだ。人間の議論には飛躍があるみたいだ。僕も気をつけなければ。
議論における飛躍のみならず、極めて危険な建造物を造り、それをメンテする過程でも飛躍というか、するべきことをしないで先に進む場合がある。
福島第一原子力発電所で深刻なトラブルを招いた、非常用を含めた電源喪失事故。電源が常備されていてこそ、炉などを冷却できる。
原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は昨年5月、電源喪失は「あり得ないだろうというぐらいまでの安全設計はしている」と発言していたが、昨日は「当時の認識について甘さがあったことは深く反省をしている」と述べた。
これまでの法廷証言などで電源喪失の可能性を否定してきた班目春樹・原子力安全委員長は「事故を深く反省し、二度とこのようなことが起こらないようにしたい」と述べた。今さらこんなことを言われても・・・。
電源喪失の事態に備えてこなかったことは痛恨の極みである。