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大野岳翠
野火を背に男黙せり遠筑波
野の芦や枯草を焼いている。害虫も駆除出来るが灰が新しい下草の肥やしにもなる。私は関東住まいなので渡良瀬遊水地とか霞ヶ浦湖畔で実際に見分した。一回はタナゴ釣りで霞ヶ浦に注ぐ用水路に居て火に囲まれそうになってしまった。実際燃え盛る炎の現場にいると足ががくがくと震え腰が抜けるほどの脅威を覚える。黒煙の中をちろちろと炎上する赤い炎は怪物の舌にも似て風景をなめ尽くしてゆく。ふと気が付いて後ろを振り向けば何事も無かっような田園風景。その先に散髪をし終えてさっぱりした体の筑波嶺が遠く浮かんでいる。冬去れり。:「新版・俳句歳時記」雄山閣(2012年6月30日)所載
大野岳翠
野火を背に男黙せり遠筑波
野の芦や枯草を焼いている。害虫も駆除出来るが灰が新しい下草の肥やしにもなる。私は関東住まいなので渡良瀬遊水地とか霞ヶ浦湖畔で実際に見分した。一回はタナゴ釣りで霞ヶ浦に注ぐ用水路に居て火に囲まれそうになってしまった。実際燃え盛る炎の現場にいると足ががくがくと震え腰が抜けるほどの脅威を覚える。黒煙の中をちろちろと炎上する赤い炎は怪物の舌にも似て風景をなめ尽くしてゆく。ふと気が付いて後ろを振り向けば何事も無かっような田園風景。その先に散髪をし終えてさっぱりした体の筑波嶺が遠く浮かんでいる。冬去れり。:「新版・俳句歳時記」雄山閣(2012年6月30日)所載