今日の出来事

どこへでも風の吹くままに。 http://www.geocities.jp/syanagio/index.html

「ラストイニング」を読んだ。

2007-04-05 | 
 映画にもなった「バッテリー」シリーズのサイドストーリーです。本編ラストでの白球の行方がどうなったのか、あの試合が彼らをどう変えたのかが、ここで明らかにされます。
 なんといっても、あの瑞垣が主人公というところが魅力です。吉貞との掛け合いこそないものの、彼の屈折した心理が手に取るように描かれていて、非常に面白かったです。瑞垣にしてみれば、こんなふうに自分を描写されるのはごめんだろうけれど。(笑)
 あの試合によって大きく道を変えた門脇、野球の(角脇の)呪縛から逃れようとあがきながらも、捨てきれぬ瑞垣。その様子は、一見無思慮に見えて、実はあまりに真摯で大人びていることに、ある種の驚きすら覚えます。今の高校一年生って、ここまで考えるのだろうか?
 それはつまり、作者・あさのあつこが青春教養小説の書き手である、ということなのでしょう。物語におのずと入り込む読み手へのメッセージが、この作家が大人にも人気がある理由かもしれません。常識ではなく良識、他者ではなく己の望みに従って生きる難しさを、軽々とあるいは苦しみながら乗り越えていく主人公たち。諦めと妥協の中で生きていくことの多い現実に対し、もう少し頑張ってみようか、という気にさせてくれる本です。 


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