以下は原子力の研究者であった友人の近藤さんから教わったことを、分かり易く書き直したものです。
普通に原子炉を冷温停止する場合には、長期間の炉心の循環冷却の後に、核燃料棒を炉心から少しずつ取り出して、再処理工場へ運び出します。そして核燃料棒を小さく切って、それをガラスで封じ、固化します。
しかし今回は密閉型の循環冷却が困難なのです。炉心圧力容器や原子炉格納容器の壁についている数多くの配管や配線穴から冷却水が漏れ出しているのです。その漏れた水の一部を回収して浄化し、炉心へまた返すことを計画中です。完全密閉型の冷却水循環はほとんど不可能に近いことです。
その上、核燃料棒は溶融していて炉心の底部に流れ、再び固体化しています。通常の燃料棒取り出し装置では取り出せないのです。
したがって炉心容器内で核燃料を再処理しなければなりません。それは想像も出来ないような困難な技術です。
独創性と決断が要求されます。
マスコミ報道の東京電力の原発事故の収束工程では、よく「冷温停止」が可能なように書かれています。しかし、それに到達するには気の遠くなるような時間と努力が必要なのです。
福島原発の原子炉内で、全く新しく、安全な永久封じ込め方法を考え出す必要があります。これは東京電力の内部の技術者には困難過ぎると思います。
東京電力は一刻も早くその官僚的閉鎖性を捨て去り、国の内外の技術陣の支援と協力を仰ぐべきと信じています。(続く)