醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「一番美しく」

2007年05月12日 | 【あ行】タイトル
1944年。
戦時中に作られた黒澤監督による国策映画。
工場で働く女子学生たちが一丸となって、製品増産に励む物語。
履物や建物内部、当時の女子寮の様子が物珍しい。
・工場に貼ってある標語にいわく「軍神につづけ」
・レンズの調整室のドアの上部に、神道のシデが飾り付けてあるのが目を引く。
・自室に帰ったら壁に向かって正座して「ただいま帰りました」――壁には「祖父」「母」とか書いた紙が貼ってある。
・女子学生が寮から工場までを、毎日太鼓と笛で軍歌を歌いながら隊列を組んで行進する様子にびっくり。
・歌われてた軍歌が「元寇」「若鷲の歌」とやたら勇ましい選曲でまたびっくり。
発熱を隠して働く少女、母危篤の知らせにも「私事で仕事は休めない」と帰宅を拒む少女……けなげな彼女たちが作っていたのは光学レンズでした。
照準器の精密部品を素人の女子学生が作っている――熟練工を赤紙でごっそり戦場に送ってしまい、替わりに女子学生や中学生の慣れない手で兵器を作らせていた泥縄日本軍。
精度の低下は当然であります。
戦意高揚映画でありながら、そんな哀れな実情が土台にあるのでどうしても悲壮な雰囲気が漂います。
個人の犠牲的精神はたしかに美しいのですが……。


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