醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「遊侠の剣客 つくば太鼓」

2010年01月24日 | 【や・ら・わ行】タイトル
1960年、第二東映。
近衛十四郎主演。
若いなぁ、お元気だなぁ。
それはいいんだけど、なんだこの役は。
辺見一角、剣は冴えるが、精神年齢推定十歳の駄々っ子でござる。
酸いも甘いも噛み分けた花山の旦那とは大違い。
おっ! 十四郎さまが女に手を出した!
まことに珍しいことでありますが、なんか絵にならないなぁ……。
女に告白させて、しかも女にのしかかられてから、やっとその気になるのがパッとしない。
ここはやっぱりストイックに渋くかわすか、いっそのこと大人の色気全開で行くとか……無理ですかね。
で、一夜明けたらとたんに亭主面、威張るばっかりで客に挨拶ひとつできないバカ亭主。
茶屋酒大好き昼間っから釣り三昧(あ、シャレにならん)
でも殺陣はいい!
このスピード、このパワー。
ぶんぶん唸る長刀、もう十四郎さま日本一ッ!
ざんばら髪で眉間に血を流した顔が松方弘樹に瓜二つでびっくりしました。
このワンシーンだけ見たら、区別がつかないかもしれない。
変な映画だったけど、行儀の悪い浪人ということで、ドカッと座るときとか疾走するときとか、おみ足が着流しの裾からチラチラしましてね、もうドキドキ☆

「十二人の優しい日本人」

2010年01月15日 | 【さ行】タイトル
1991年。
舞台なら笑えるかもしれない。
しかし映画では……笑えん。
笑いを取る方向が映画向きではないと思う。
たとえば、登場人物はいずれも誇張された言動をとる。
極端にコミカライズされた漫画チックな人物である。
ヤクルトでもバナナジュースでもどーでもいいが、彼ら彼女らはいちいち大仰に騒ぎ怒鳴り、その騒がしさに閉口した。
なんともいえない微妙なぬるい温度、ぬるい笑い。
「ね、こういうの、面白いでしょ? シャレてるでしょ?」
と始終耳元で囁かれているような居心地の悪さを感じたのでござる。
あと、トヨエツの棒読みセリフに呆れた。
やたら鼻につくオーバーアクションも時代の流れなのかもしれないが、やかんにはあざとく感じられてなりませぬ。

「ダイナマイトどんどん」

2010年01月04日 | 【た行】タイトル
1978年、大映制作、東映配給。
ヤクザが野球で勝負する。
その設定だけで喜劇チックだが、岡本喜八監督らしい戦争の影をチラつかせながらも、パワフルな盛り上がりでしっかりと笑わせる。
「にんきょぉぉぉ!」とだけ叫ぶ嵐寛寿郎の大親分が妙に可笑しい。
水をかぶって身を清め、長ドスを用意し、タンスの底から新しい着物を引っ張り出す文太兄ぃ。
畳紙からナフタリンがいっぱいバラバラと落ちる。
「……おめぇ、ナフタリンの臭いがプンプンするぞ」
と、殴りこみ前に言われてしまう文太兄ぃがなんか可笑しい。
元プロ野球選手の傷痍軍人を演じたフランキー堺の喜劇人らしいキレの良さが随所に光る。
肝心の試合は当然死球と走塁妨害と乱闘の応酬になるわけだが――野球とヤクザをチャカしたドタバタに終わらない、球場全体を巻き込む怒涛の暴動騒ぎに発展していく流れはまさに喜劇の王道。
二時間半の長尺物だが、文太vs北大路欣也の男の勝負もバッチリと見せる中身の濃い映画。