醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「大番」

2018年04月25日 | 【あ行】タイトル
1957年、東宝。
宇和島から上京したギューちゃん(加東大介)が株屋の走り使いから独り立ちするまでの青春編。
見た目はもっさりしているけど、記憶力のいいギューちゃんが電話の代わりに出来高を暗記して、店と取引場を往復します……加東大介が走る走る。
その気働きの良さと憎めぬ性格で、周囲の引き立てを得て、とうとう無学な丁稚だったギューちゃんは株成金になり一躍名士になるのでした……。
こういう努力と汗の成長物語は、説教臭くなければ大好きです。
ギューちゃんに目をかける木谷社長に河津清三郎。
背広の似合う温厚インテリ紳士、といった風貌がたまらなく素敵。

女王のプライド

2018年04月15日 | 女王ヴィクトリア
私の脳内ヴィクトリア女王は年齢より幼い感じ。
欲しいものは絶対欲しい、直情径行、天然わがまま娘のイメージで。
一回お断りされたぐらいで引き下がらない。
──実際そうしないとこの恋は成就しませんよ。
女王が不退転の決意をもって口説き落とさないと、臣下の壁は越えられない。
メル卿は良識と臣下の壁を頑なに守ろうとするでしょうから、泣き落としでも脅しでもなんでもいいから、それこそ女王のプライドを投げ捨てて口説き落とせ。
女王のプライドのないヴィクトリアってわけでなく、メル卿の前では駄々っ子全開……という脳内甘々設定です。
メル卿もレスター伯とか恋人とか言い出すぐらいなんだから、やっぱりその気はあるんでしょ?
とにかく女王が主導権を取って、あくまでメル卿に執心して諦めずにガンガン行け!
幸せになれないとワンワン泣いておいて、公子を見たとたんにポーっとなるのは、陛下それ節操なさすぎ。
どうしてそんなにあっさり諦められるのよ?!
はいそうですかで諦められるのなら、波風立ててまで告白すんなw
メル卿がイエスと返事できるわけなかろ。
ふたりきりになったときに、ぽろっと告白しちゃうならともかく、領地までわざわざ押し掛けての告白だからたちが悪い。
メル卿の負担倍増気まずさ倍増、卿が気の毒すぎます。
でも、卿に断られて、蒼白な表情で庭園を去る女王の姿と、その後姿をしばらく見送ってくるりと背を向けるメル卿に泣ける泣ける……美しい場面なのだけど胸が痛い。
陛下、プライドなんか放り出して泣いちゃっていいよ、往生際悪く足掻いてもいいじゃない本気なら。
メル卿も必死で持ちこたえてたけど、実はグラグラだよ、即答は無理だけど脈はあるから玉砕すんな、持久戦でいけ──と、しつこく妄想が湧くのです。

「幕末残酷物語」

2018年04月11日 | 【は行】タイトル
1964年 東映
理想化された新選組像を木っ端みじんにした野心作。
防具なしで木刀で立ち会ったら、そりゃ死人続出だな……と。
有段者に木刀を頭に打ち下ろされたら、たんこぶで済むわけない、そんなもんもれなく頭蓋骨骨折ですよ。
ノーメークに近い大川橋蔵の顔は地味。
えーっ、西村晃が土方副長!? それは怖いわ。
救いも何もない、狂犬集団ぶりになんとなくリアリズムを感じてしまった。
……だろうなぁ、新選組に夢見すぎなんだよなぁ。
ラストシーンはシスティナ礼拝堂の天地創造を連想させる、求めあう指先。
で、菅貫太郎はどこ?
ほんと言うと、半分若き日のスガカン目当てで録画したのであるよ。
どこ?
何? 松永主膳! き、気づかなかった。
汐路章のホモ隊士ぶりに冷や汗が出た。