醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「上意討ち 拝領妻始末」

2006年11月27日 | 【さ行】タイトル
1967年、東宝。
藩では上司に気を遣い、家では権高な妻に頭の上がらない婿養子――だけど剣の腕前は天下無双な藩士ミフネ。
あのミフネが「長いものには巻かれろ」的処世術で勤めを無難にこなし、妻に遠慮しいしい小さくなって暮らしている?!
設定に意表をつかれましたがそこはミフネ、あの容貌ですから、さして萎縮した様子には見えないんですな。
でも婿養子ミフネ、切羽詰った状況になってからブチ切れるんじゃなくて、若い時分からきちんと奥さんに向かい合っていたら、人生も変わっていたんじゃないかなと思います。
……ミフネが冴えない顔つきで座敷で爺むさくボーッとしているなんて、家庭で奥さんが荒れたくなる気持ちもわかりますよ。
さて、いざ防戦という晩に、準備万端、屋敷の畳を全部裏返して
「血糊で足がすべらぬ用心よ」と平然とつぶやくあたりから、侍ミフネの面目躍如。
群がる敵をズバズバ倒していくミフネ、断然強し!
ミフネと仲代ときたら最後は決闘、やっぱりこうこなくっちゃ!
ラストのチャンバラ場面は大いに結構なんですが、終始ジメッとした雰囲気が漂っているのがいまひとつ。

「影武者」

2006年11月14日 | 【か行】タイトル
1980年、東宝。
勝新が黒澤監督とケンカして主役を降りたとか、制作費が底をついたとか、いろいろ話題になっていたのは記憶にあります。
若い頃のミフネが主役をやっていたら、もっと精彩があっただろうなー。
仲代達矢は良くも悪くも印象が暗いんです、目玉ばっかりぎょろぎょろして。
なぜか武将がみな白塗りっぽいメイクだから、前衛劇みたいな雰囲気がありました。
様式美っていうんですか、衣装や具足も色分けされてて綺麗だけど、現実感は薄かった。
鎧を着けていると誰が誰かよくわからん。
人物よりも、風に波打つ野天の幔幕とか、川面に流れる敗軍の旗に目を奪われました。
彩りの美しい映画でしたが、やかんにはさっぱりわからん映画でござった。

「大石長官の斜め帽子」アップしました。

2006年11月05日 | SSあとがき
ジュットランド沖海戦。
英艦隊149隻 対 独艦隊99隻。
損害は英艦隊のほうが大きく、死傷者はドイツの二倍以上にもなりました。
しかしながら勢力逆転まではいたらず、結果的には引き分けもしくはイギリスやや優位。
ですが海戦直後は英独両国ともが勝利宣言を出し、どちらの国民も自国が勝ったと信じ込んでいたという……。
日本国内でも
「ジュットランド沖海戦はどっちが勝ったのか?」
という論争が起こり、秋山真之が戦略面から制海権の保持に言及して「英国勝利」と結論付けたのに対し、
東郷元帥は「ドイツは逃げた、だからドイツの負けじゃ!」と一言で片付けたそうな。
……さすがは東郷さん、単純明快。

「獄門島」

2006年11月02日 | 【か行】タイトル
1977年、東宝。
「キィチガイじゃがしかたがない」の了然和尚に佐分利信、キャー!
恰幅のよさといい不敵な面構えといい、じつに男性的で魅力たっぷりな佐分利さんなんですが、しわがれた声もまた渋いんです。
……吊るされるのはお断りですが、ちょっと担がれてみたいかも。
雰囲気・画面作りは最高。
暗鬱な雲のかかった孤島の景色にゾクゾクしました。
狂い咲き三姉妹にピーターの鵜飼さん、いい感じにイカれてます。
それなのに、終幕の謎解きでなぜかいきなり「砂の器」。
犯人を変えてしまったら、トリックがみんなパーになってしまう上に、切羽詰った動機も薄らいでしまうのに……市川監督、理屈よりも絵作り優先か?
片手で帯を押さえ、もう一方の手で女の肩を抱え、断崖から海へ――のシーンの佐分利信が素敵だったので、それもありかなと単純に納得。
おどろおどろしい雰囲気に、芸達者たちの演じるユーモラスな息抜き場面を織り込んだ、緩急巧みな好作品。