醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「あげまん」

2007年06月29日 | 【あ行】タイトル
1990年、東宝。
宮本信子が無類にかわいらしい。
澄んだ声、澄んだ笑顔。
意気消沈した男を暖かくなぐさめ励まし、凝った肩を揉みほぐしてくれる女。
玄関を開けたら、そんな人が「おかえり」と出迎えてくれたらいいですね、いやまったく。
「無一文になったっていいじゃない、大丈夫よ、あんたぐらい私が食べさせてあげる」
そういって男の背をポーンと叩いて送り出してやれる甲斐性のある女、いやー立派なもんだ。
でも、こんなに懐の深い包容力のある女に、ひとりの男のお守りだけさせておくなんてもったいないですね……。
戯画化された登場人物も楽しい。
テンポの良いストーリー展開も楽しい。
ほっこり暖かな大人のための寓話。

「マルタイの女」

2007年06月21日 | 【ま行】タイトル
1997年、東宝。
泣いたり笑ったりハラハラしたり、忙しい映画でした。
つまり十二分楽しめました。
税務署、民暴、スーパー、そして今度は警察警備部。
伊丹映画が紹介してくれる、変わった分野の内情に毎度興味を惹かれます。
区切りをつけて、はっきり場面転換をするメリハリのきいた演出も気持ちいい。
しつこさ一歩手前(というか既にくどい?)ステレオタイプな女優像も、可愛いオバサン宮本信子だから許せてしまう。
脅しや暴力に屈するな、というメッセージが前面に押し出されていますが……見ていて一番スッとするのは、ブチ切れた津川雅彦が引き出しから拳銃を取り出して、バンバンッとオフィスに乗り込んできた脅迫者たちを射殺する場面だったりするのでござるよ……。
「ミンボーの女」でも思ったんですが、なかなか映画のようには捌けないのが実情なだけに、明るいラストは気分的に救いになりました。
……で、エンディングのひとコマはなんの意味?
「警備対象者が襲われたことは実際には一度もありません」?
あ、ひょっとして警察へのイヤミか(^^;

「下町」

2007年06月12日 | 【さ行】タイトル
1957年。
幼い子供をかかえ、辛い行商をしながら夫の復員を待つヒロイン(山田五十鈴)は、ある日親切にしてくれた気のいい男(三船敏郎)に心を惹かれます。
力仕事で激しく働き、作業小屋に寝泊りしているミフネの逞しい男臭い風貌が素敵。
……薄汚い素浪人になろうが汗臭い労務者に扮そうが、かっこいいのがミフネでござる。
「いい子だな、坊主!」
ヒロインの幼い息子の頭をクシャクシャと撫でるミフネの不器用なしぐさと笑顔がいい。
前歯にちょっと隙間のあるミフネの笑顔がなんとも人がよさそうで、ジーンときます。
侍のときのミフネは片頬でしか笑いませんが(もちろん、そのほうがカッコイイ)、この笑顔も実にいいんでござるよ。
さて、激しい雨に降られ、寝込んでしまった子供を背に飛び込んだ連れ込み宿で、ふたりは一夜の関係を持ちますが――
わびしい暮らしの中にわずかに差し込んだ希望が無残についえる様に、ただ涙。
60分の小品ながら、しみじみとした味わいの深い佳作です。

「鏡の中の裸像」

2007年06月07日 | 【か行】タイトル
1963年、松竹。
美容学校に通うヒロインに倍賞千恵子。
清楚な彼女にひとめ惚れする子連れバツイチ御曹司に池部良――赤い外車を乗り回しながらも物腰丁寧なインテリ二枚目ぶりがナカナカ渋い。
玉の輿系のラブロマンスかと思いきや、堅実なヒロインは身分違いの恋は不幸の元と、御曹司の求婚を断り通すのでした。
偶然の出会いと劇的な再会……お約束とはいえやっぱりワクワクしますなぁ。
・学校の校門前に車で乗りつけてヒロインを呼び止め、食事に有無を言わせず誘う。
・子連れデートでは子供もしっかりヒロインに懐き、男はますます求婚の意志を固める。
裕福な二枚目中年と貧乏な娘の馴れ初めといい経過といい、メロドラマの黄金パターンそのまんまなんですけどね。
池部良も素敵でしたが、この映画、神山繁と川津祐介も出ています。
ところが役はどちらも敵役のサイテー男で、DV浮気男と博打で借金まみれの大学生なり。
浴衣姿とラブシーンがあったんで、ファン的には嬉しかったです。

「燃料」アップしました。

2007年06月01日 | SSあとがき
前世日本では鋼鉄だけでなく木材までも払底していて、日光の杉並木が切られたり、神社の御神木が「応召」したりしていました。
はたして二万トン超の木製潜水艦を大量建造できるほど、後世日本に木材資源が残っていたかどうか?
前世陸軍は木材不足なら竹を使えということで、竹の筏での物資輸送を大真面目に検討していたそうな。
竹といえばこの時分、鉄材の替わりに竹を使った鉄筋ならぬ竹筋コンクリートで建築していたんですね。
……竹筋コンクリートはそこそこ強度があったようで、代替策としては成功した部類であります。
開戦後の新艦建造ラッシュの状況をみると、ウソだろって言いたくなる後世日本の鉄不足ですが、木材資源に頼るよりいっそのこと、コンクリート船を建造したほうがいいんじゃないかと。
セメントなら入手も簡単、工期も短い、もちろん強度も申し分なし! そのかわり重いけどね。