醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「あゝ決戦航空隊」

2007年12月29日 | 【あ行】タイトル
1974年、東映。
特攻作戦を推進した大西瀧治郎海軍中将(鶴田浩二)が主人公。
真面目な映画なんですが、テンションの方向というか、ノリがどうしようもなく東映です。
それに軍服を着せても、中身はヤクザ映画でおなじみの俳優さんばかりなもんだから……海軍航空隊が戦闘服を着たヤクザ集団に見えてしまいます。
主役の鶴田浩二からして、軍装であっても海軍軍人のきびきびした歩き方ではなく、肩を揺らしてヤクザ風にヨタって歩いてます。
血気に逸る若いモンを率いて、鎮守府長官に詰め寄る菅原文太兄ぃときたら……日本刀(軍刀なんですけどね)を振り回す姿はもろヤクザで、とてもじゃないけど海軍大佐には見えません。
「アメ公のドタマかち割ったる」と言い出しそうなガラの悪い飛行隊の面々は、戦争というより“出入り”のノリ。
これはもう特攻隊員というより鉄砲玉、ガンルーム士官というより愚連隊、御前会議は親分衆の寄合でござるよ。
ぎょっとしたのは、何度も出てくる天皇批判。
徹底抗戦すべき→ポツダム宣言受諾は天皇の判断ミス→天皇の命令で始めた戦争なのに無責任
かなり過激ですね。
大西中将の自決は切腹シーンなしか、へーそれは淡白でけっこう……と思ったやかんは甘かった。
エンディングは大西中将の遺書にかぶせて、延々鶴田浩二の切腹ショーでした。
通常のドスッ、グムム、バタン……ではないんですよ。
ドスッ、グググ、グググ、うおっー、ブシュ、ググ(以下略
画面真っ赤でもう長いんだから。
やっぱりこれ、ヤクザ映画ですわ。

「タンポポ」

2007年12月25日 | 【た行】タイトル
1985年、東宝。
いくつもの小話を平行させるのは必要か?
大学祭で映研の作品を見せられたときの印象を思い出しました。
わけわかんないよ、なんのこっちゃ……みたいな。
はやらないラーメン屋を徹底指導して、行列の出来る店に変身させる――ラーメンだけに的を絞ったストレート勝負のほうが面白いんじゃないかなぁ。
少なくとも小難しい映画が苦手なやかんには、そのほうがありがたいです。
ついでにいって、なんで伊丹監督は悪趣味なエロシーンを挿みたがるのだろう?
見ていて居心地が悪いことこの上なし。

「艦隊厠考2」アップしました。

2007年12月15日 | SSあとがき
海軍経験者は「トイレを探して艦内をウロウロする」という夢を戦後何十年経っても見たそうな。
手記でも厠の場所がわからず、とうとう迷子になって艦長室の前まで来てしまい番兵に追っ払われた……厠の場所を尋ねたら意地悪な旧兵が反対の方向を教えた……巡検前は厠番が厠の入り口にロープを張ってしまい、もうダメだからと泣いて頼んでもけっして使わせてくれなかった……などなど苦しい思い出が出てきます。
トイレ関連の夢って、たいてい用を足せずに焦ったままで目が覚めるんですね。
個室が並んでいても、それぞれ逆流していたりペーパーがなかったりで、使用可能なトイレはどこだー!ってかんじで。
ときどきなんとかトイレを見つけて、ふうヤレヤレ……ってところまで見るんですが、このパターンの夢は目が覚めたとき一瞬心配になります。

「恍惚の人」

2007年12月06日 | 【か行】タイトル
1973年。
70年代でなぜにモノクロ?
しかもなんだかボンヤリした画面。
痴呆老人の輪郭のぼやけてしまった精神世界を表現しているんでしょうが、カラーでは見るに耐えない場面があるからですよ、たぶん。
森繁演じる「恍惚の人」が、粗相をした排泄物を素手でこね回し壁やふすまに塗りつける、という場面。
畳ドロドロ、障子にベタベタ、寝巻きに手指に……うわわわ。
これがカラーだったら……正視できん。
電話の音に怯え、家を飛び出し、倒れるまで闇雲に徘徊する森繁の迫真の演技が怖すぎました。
見終わった後もしばらく森繁が嫁を呼ぶ「あきこさーん、あきこさーん」という弱弱しくも執拗な声が耳について離れません。
やがて直面するだろう老親の介護問題を思うと、とてもじゃないが平静に観ていられない、恐ろしい映画。