醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「黒の試走車」

2007年03月28日 | 【か行】タイトル
1962年、大映。
産業スパイの話です。
敵会社の産業スパイの元締めが元陸軍中佐というのが時代ですなぁ。
「さすがは元関東軍の情報将校だ、やることが汚い」
なんてセリフもあったりして。
すべてを投げ打って、ライバル会社を出し抜こうとする主人公の姿勢は、お国のためという名目が会社のためにという名目に変わっただけではないか? 会社人間の歪んだ滅私奉公は、戦前の軍国主義同様に人間性の喪失である――と熱く説く映画であります。
悪女好きの増村保造が監督で、主人公の恋人に叶順子。
先に「黒の報告書」を見ていますから、土壇場で裏切りがあるんじゃないかとラストまで油断なく見ていたんですが……杞憂でした。
主人公はクールな二枚目田宮二郎ですが、役回りが尻の青いヘタレ悪人だったので魅力半減。

「黒の報告書」

2007年03月24日 | 【か行】タイトル
1963年、大映。
大映の社会派ミステリー「黒」シリーズ。
モノクロ映像のシャープな陰影で、画面になんともいえない緊張感があります。
若き熱血検事に宇津井健、一筋縄ではいかない被疑者に神山繁、狡猾な敏腕弁護士に小沢栄太郎、職人気質の老刑事に殿山泰司。
物証も証人もがっちり固め、有罪確実な殺人事件と思われたのに、なぜか法廷で証人たちは次々と証言を覆しだし、宇津井検事は狼狽します――法廷での緊迫した応酬に手に汗握りました。
後半、控訴期限の迫る中、決して諦めずにこつこつと証人探しを続ける殿山刑事の姿にホロリときました……。
偽証した社長の秘書兼愛人叶順子に
「なによ、だったらあたしと結婚して!」
と逆にすごまれてオタオタする宇津井検事がかわいかったでござるよ。