醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「天皇・皇后と日清戦争」

2007年08月24日 | 【た行】タイトル
1958年、新東宝。
明治天皇にアラカン、昭憲皇太后に高倉みゆき。
「一太郎やーい」などの戦前教科書の軍国美談と、天皇皇后の御製のお歌をベースにした紙芝居的映画。
――明治天皇は戦地の兵士の苦労を思われて、真冬にも火鉢をお使いになりませんでした。
――木口小平は死んでもラッパを口から離しませんでした。
そんなエピソードが「婦人従軍歌」や「雪の進軍」などのゆるーい調子の明治軍歌をバックに次々と並べられていきます。
もはや前前世紀の戦争。
カラーの画面もどことなく色がくすみ、ほんのりセピア調。
演出も控えめで、内容が感傷的であっても押さえが効いていて見苦しくない。
そしてなにより明治軍歌がたっぷり聴けるのがいい。
戦争映画でリラックスなどというとバチが当たりそうなんですが、懐古情緒に浸れる結構な映画です。

「連合艦隊」

2007年08月04日 | 【や・ら・わ行】タイトル
1981年、東宝。
小沢中将(丹波哲郎)と宇垣中将(高橋幸治)をメインに据えた、贅沢で渋い映画。
二組の兄弟・親子の話のほうが本筋なんですが、やかん、そっちのほうはどーでもいいのであります。
宇垣中将びいきのやかんとしては、こんなにかっこいい宇垣さんを見られて大変うれしいのです。
丹波さんの飄々としたどこか人を食ったお茶目な小沢提督も良し。
この映画、将官たちの善玉悪玉の色分けが露骨で、南雲長官・栗田長官は頑迷なモウロク爺に描かれています……。
瑞鶴の貝塚艦長(神山繁)は、訓示の発声といい、答礼の風格といい、帽振れの毅然とした姿といい、素晴らしい海軍軍人ぶりでした!
これはもう、神山ファンならずとも惚れますぞ。
あと印象的だったのは、空母瑞鶴に配属された少年飛行兵の逸話。
『ワタクシたちは発艦は出来ても着艦はできません!』――大切な飛行機を使って体当たり攻撃しかできないことを、整備兵に謝る幼顔のパイロット。
彼らのけなげな決意に、特攻戦術に頼るほかない帝国海軍の末期の哀れさに、何回見ても胸がつまります。
重厚な俳優陣と細部まで考証された軍装・小道具に見とれてしまう二時間半。
正直言ってストーリーはもう二の次三の次であります。
でも、たった二時間半で、開戦から大和沈没までダダッと駆け足で描こうというんですから――戦局が進むたびに次から次へと将官の名前とポストが字幕で出てきて大忙しですよ。
……終盤で涼月(すずつき)を「リョウヅキ」と言っていたような気がするけど気のせいか?