醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「女めくら物語」

2017年05月10日 | 【あ行】タイトル
1965年、大映。
美しき按摩さんを若尾文子。
石段を踏み外しかけた若尾さんをとっさに助けた青年実業家の宇津井さん。
落した白い杖を拾い上げ、さっと躊躇なく手を引いてあげるあたり、すっかり宇津井テイストです。
宇津井さんの爽やかなフェミニストぶりに美人按摩はすっかり一目ぼれしてしまうのでした。
宇津井さんたら、照れくさそうに微笑みながら
「こんな美人と馴染になったら惚れてしまうかもしれないよ?」
馴染になったらなったで、真顔で誠実さを顔面にみなぎらせて
「……一緒に暮らそう!」
もう聞いててこっちが照れてしまう。
宇津井キャップの口説きシーン、じつは大好物でござる。
いつでもどこでも真っ向勝負、小細工なしのストレート勝負。
キザっぽさとか女々しさの片鱗もない、ひたすら誠実さと男らしさ(でも男臭くはない)と若干の照れを前面に出したプロポーズ。
どんな役でもシチュエーションでも不変の熱い宇津井節、これがいいんでござる。
ちょっと恥ずかしくて画面の前でジタバタしてしまいますが、宇津井さんのメロドラマって最高!

「乱れ雲」

2017年05月10日 | 【ま行】タイトル
1967年、東宝。
夫を交通事故で失った美しき未亡人(司葉子)と加害者の男(加山雄三)。
仇だ憎いと思いながらもいつしか心惹かれて……というメロドラマ。
加山雄三、いい味出しています。
人を轢き殺しておいて、ぬけぬけとその未亡人に求愛しても、まぁしゃーないな、と思えるのは彼だからこそ。
誠実なようで、存外図太いし、押しが強いですよ。
事件前にも重役の娘としっかりデキてたし、未亡人にも押せ押せで迫っているし。
やってること、言ってることはとんでもないのに、みんな彼の甘いマスクとお坊ちゃんらしさに騙されとるんですな。
高熱でぶっ倒れて、病床で手を握っていてくれ、という厚かましさ。
それでも、下宿に訪ねてきた未亡人を見たときの表情――驚きと感激ごっちゃまぜで声も出ないという風情。
いやあ、いい表情するなぁ、加山雄三。
加山くんの猛アタックを受けた未亡人の心の移ろいと恋の行方にワクワクドキドキできる上質メロドラマ。