醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

ドリームハウス

2020年02月14日 | 【た行】タイトル
2011年 アメリカ
念願のマイホームにウキウキ気分で帰宅したら、怪現象が。
実はマイホームは殺人事件のあった家だった。
しかも夫が妻と幼い子を殺したという……。
怪談からサイコホラー、そしてサスペンスへと変化するストーリー。
壁に銃弾の穴を見つけたり女の子のおもちゃが出て来たりのシャイニングの家買ったのかよ!な怖さから、主人公がシャイニング親父だったんか? な足元の崩れるような心細さへの転換が見事なのだ。
精神病院の監視カメラ映像を見せられたり、自分の頭に銃創があったり、周りの人がみな自分を違う名前で呼んだら……誰だって自分に自信がなくなるじゃないか。
自分は気が狂ってるのかも、と疑うのは一番怖いホラーかもしれない。
一時間半というダレない時間でピリッと話をまとめた上出来スリラー。
……主人公にしか見えない亡き妻子と会話ができたんだから、立派に怪談だともいえる。
侵入者と格闘した記憶がすっぽり抜け落ちたまんまの主人公ももどかしいが、加勢するつもりで旦那を撃ってしまった嫁が言っちゃ悪いが戦犯だなぁ。

ファントム・スレッド

2020年02月02日 | 【は行】タイトル
2017年 アメリカ
もうちょっとロマンチックな話だと思ってました。
映像も音楽も美しいです、ダニエル・デイ・ルイスの爺も美しいです。
1950年代のロンドンで、大物ファッションデザイナーに見初められた田舎のウェイトレスがヒロインで、貴婦人の豪華なドレスやアトリエの様子がいっぱい。
舞台や状況はロマンチックなんですよ。
白髪爺のデザイナーがあか抜けないウエイトレスを採寸しドレスをまとわせると……そこには夢のような美女が。
デザイナーは、ヒロインが磨けば光る彼の理想のマネキンだと即座に見抜いたのですね。
で、甘いシンデレラ物語と思うとそうではない。
この爺、採寸メジャーと待ち針を持つと仕事の鬼になるんです。
おまけに人を人とも思わぬエゴイスト。
自分の生活リズムを乱されることを嫌う彼にとって、普通に恋人らしく構ってもらえることを期待するヒロインは次第に重荷になり……。
勝手爺に劣らずヒロインもガキっぽい構ってちゃんで、よせばいいのにつまらん口ごたえはするわダダこねるわ、爺がバターは嫌いだってんのにお手製のバター炒めを食べさそうとする無駄に闘争精神旺盛な女なんです。
毒キノコ? 毒キノコをわざと?
毒に当たって吐き下しする爺を看病したい?
もう一度爺を看病したい? 正気か?
大嫌いなバターたっぷりのキノコオムレツを皿にバンと盛りつけする鬼ヒロイン。
おそるおそる料理を口にする爺。
危ないようなら医者を呼んでよね、と気弱に微笑みキノコを飲み下す爺。
……え? ええ?! わかってて喰うんか爺。
わからん、もうわからん。
この後爺がどうなったか、医者との会話は罪の告白なのか、乳母車での散歩は妄想なのか、なにがなんだかさっぱりわからん。
……ダニエル・デイ・ルイス、御年60。
まだ60なのにすっかり本爺。
美しい映像音楽に包まれながら、爺…キノコ…爺…とうなるばかりのラストでした。