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醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「恍惚の人」

2007年12月06日 | 【か行】タイトル
1973年。
70年代でなぜにモノクロ?
しかもなんだかボンヤリした画面。
痴呆老人の輪郭のぼやけてしまった精神世界を表現しているんでしょうが、カラーでは見るに耐えない場面があるからですよ、たぶん。
森繁演じる「恍惚の人」が、粗相をした排泄物を素手でこね回し壁やふすまに塗りつける、という場面。
畳ドロドロ、障子にベタベタ、寝巻きに手指に……うわわわ。
これがカラーだったら……正視できん。
電話の音に怯え、家を飛び出し、倒れるまで闇雲に徘徊する森繁の迫真の演技が怖すぎました。
見終わった後もしばらく森繁が嫁を呼ぶ「あきこさーん、あきこさーん」という弱弱しくも執拗な声が耳について離れません。
やがて直面するだろう老親の介護問題を思うと、とてもじゃないが平静に観ていられない、恐ろしい映画。

「ここに泉あり」

2007年10月10日 | 【か行】タイトル
1955年、独立プロ。
群馬県高崎のアマチュアオーケストラの物語。
人々が食べるのがやっとだった終戦後の苦しい時代に、演奏を続けた団員たちをさわやかに描きます。
雨上がりの校庭のあちこちにできた水溜りに青空が映っています。
木造の古びた校舎、セミの鳴く木々、懐かしい美しい日本の風景です。
ざわつきっばなしの観客に落胆して帰る楽団員に、そっと野花を差し出す女生徒。
らい病院での静かなしかし熱意に溢れた演奏会。
楽器をはじめて見て喜ぶ山奥の分校の生徒たち。
昔の映画は観客を泣かせるのが上手いなぁ。
あざとさのない演出で気持ちよく泣かせてくれます。

「君よ憤怒の河を渉れ」

2007年10月02日 | 【か行】タイトル
1976年、松竹。
おお、なんとドラマチックなタイトルソング! 初っ端から観客の期待を盛り上げます。
無条件にタフな男、高倉健がいいんですね、やっぱり。
自衛隊機がスクランブル発進しようが、都心で競走馬が暴走しようが、健さんだったらそれもありかなと気にならないんであります。
サスペンスありスリルありサービス満点の大作なんですが、アスファルトに蹄鉄を滑らせて転倒した馬がかわいそうなので、できればああいう危険な撮影はやめてほしいですね。
動物を虐待して撮った映像よりも、作り物丸出し映像のほうが安心して鑑賞に専念できるってものです。
……中野良子を襲ったクマは、チャックが見えそうな着ぐるみでしたが別にいいですよ、あれでも。
いくら健さんでも丸腰の爺さんを背中から撃っといて、それも弾倉が空になるまで撃って「正当防衛」もないもんだ。
人ひとり殺しておいてお咎めなしの甘い結末に呆然としながらも、ふむ、面白かったじゃないかと満足してしまう二時間半の娯楽作。
ただ、サスペンスシーンで使われる曲には激しく違和感を抱きました。
やけに明るいピクニック音楽が緊張した場面に流れるんですよ。
健さんが生きるか死ぬかの瀬戸際だというのに、チャッチャラチャッチャラ♪
これだけは選曲意図理解不能。

「鏡の中の裸像」

2007年06月07日 | 【か行】タイトル
1963年、松竹。
美容学校に通うヒロインに倍賞千恵子。
清楚な彼女にひとめ惚れする子連れバツイチ御曹司に池部良――赤い外車を乗り回しながらも物腰丁寧なインテリ二枚目ぶりがナカナカ渋い。
玉の輿系のラブロマンスかと思いきや、堅実なヒロインは身分違いの恋は不幸の元と、御曹司の求婚を断り通すのでした。
偶然の出会いと劇的な再会……お約束とはいえやっぱりワクワクしますなぁ。
・学校の校門前に車で乗りつけてヒロインを呼び止め、食事に有無を言わせず誘う。
・子連れデートでは子供もしっかりヒロインに懐き、男はますます求婚の意志を固める。
裕福な二枚目中年と貧乏な娘の馴れ初めといい経過といい、メロドラマの黄金パターンそのまんまなんですけどね。
池部良も素敵でしたが、この映画、神山繁と川津祐介も出ています。
ところが役はどちらも敵役のサイテー男で、DV浮気男と博打で借金まみれの大学生なり。
浴衣姿とラブシーンがあったんで、ファン的には嬉しかったです。

「刑務所の中」

2007年05月22日 | 【か行】タイトル
2002年。
原作は花輪和一の同名漫画。
刑務所といっても、ヤクザ映画に出てくるムショとは違って暴力と無縁。
食事の中身とか移動のときの歩調のとり方とか、係官に「用便願います!」と申告するとか、お菓子はアルフォートとルマンドだとか、日常生活の羅列……やかん、そういうの大好きです。
花輪さんの漫画は、布団の模様や独房の家具なんかを異常な情熱を持って観察しており非常に興味深いのです。
原作つきの映画として、花輪さんの描く刑務所内部を忠実に再現してあって、主役の山崎努もいい。
彼のボソボソっとしたモノローグはすごく味があります。
……だが、なにか違う、なんか物足りない。
原作はけっしてこんな幸せほのぼの漫画ではないんだけどな?
封筒張りに達成感を感じたり、刑務所の食事を喜んだりしてるけど、それだけでは違うんじゃないか?
「はぁーもう、どもこもねぇから」
同房の受刑者の口癖ににじむ、うらぶれた気分やわびしい雰囲気が欠落してないか?
いい意味悪い意味両方で、毒の抜けた映画なり。

「獄門坂の決斗」

2007年05月09日 | 【か行】タイトル
1960年、第二東映。
主演、近衛十四郎。
だから見たんですけど、時代劇パターンを適当に詰め込んだだけってかんじ?
素浪人が大名家の悪事を暴く、ていうのはいいんです。
謎のお女中が絡むのも結構。
でもスーパーヒーローの、なにもかもわかっておったわフハハハ……は旗本退屈男の世界だなぁ。
中盤までは謎解きの説明に終始し、殺陣は小出しにちょろっと出し惜しみ。
東映名物・時代不詳の総踊りがひと区切りついたところで、やっと庭先に現れる主人公。
「出あえ、出あえー!」「斬れ、斬れー!」ではじまる大詰めの大乱闘。
2/3ほど切り伏せたところで主人公が「頭が高いっ!」と一喝して将軍家のお墨付きをかざすと、みんなひれ伏しちゃう。
ラストは長屋のみんなに見送られて、にこやかに主人公がセットの日本橋を渡っていく……で「終」
……テレビの時代劇を三本ほど混ぜて見せられた気分でござるよ。
いやもう、このさいストーリーはどうでもかまいません。
十四郎さまの殺陣部分は細切れにしないで一気に見せてくださいな(涙

「雲の剣風の剣」

2007年05月06日 | 【か行】タイトル
1963年、東映。
休日の午後にぴったりな肩の凝らない娯楽時代劇。
時間もほどよく80分という軽さです。
さて、お目当ては近衛十四郎。
豪快な刀捌きに惚れました。
こんな凄い殺陣があったのかと目からうろこがぽろぽろ落ちる思いであります。
舞踊のような殺陣ではなく、殺気に満ちた力強い立ち回りにしびれます。
足場の悪い川原をダダダッと勢いよく駆けながら、片手で長剣を操るダイナミックさ……しかも移動しながら常に腰が据わっていて、身体の中心軸がずれていない。
ああこれなら人を斬れるな一撃だな、と見る側に思わせる説得力のある斬り方です。
長男の松方弘樹(18歳)と共演だったんですが、松方さんの振りじゃ斬れてないな。
パパの圧勝というか、比べるのも気の毒か。

「黒の試走車」

2007年03月28日 | 【か行】タイトル
1962年、大映。
産業スパイの話です。
敵会社の産業スパイの元締めが元陸軍中佐というのが時代ですなぁ。
「さすがは元関東軍の情報将校だ、やることが汚い」
なんてセリフもあったりして。
すべてを投げ打って、ライバル会社を出し抜こうとする主人公の姿勢は、お国のためという名目が会社のためにという名目に変わっただけではないか? 会社人間の歪んだ滅私奉公は、戦前の軍国主義同様に人間性の喪失である――と熱く説く映画であります。
悪女好きの増村保造が監督で、主人公の恋人に叶順子。
先に「黒の報告書」を見ていますから、土壇場で裏切りがあるんじゃないかとラストまで油断なく見ていたんですが……杞憂でした。
主人公はクールな二枚目田宮二郎ですが、役回りが尻の青いヘタレ悪人だったので魅力半減。

「黒の報告書」

2007年03月24日 | 【か行】タイトル
1963年、大映。
大映の社会派ミステリー「黒」シリーズ。
モノクロ映像のシャープな陰影で、画面になんともいえない緊張感があります。
若き熱血検事に宇津井健、一筋縄ではいかない被疑者に神山繁、狡猾な敏腕弁護士に小沢栄太郎、職人気質の老刑事に殿山泰司。
物証も証人もがっちり固め、有罪確実な殺人事件と思われたのに、なぜか法廷で証人たちは次々と証言を覆しだし、宇津井検事は狼狽します――法廷での緊迫した応酬に手に汗握りました。
後半、控訴期限の迫る中、決して諦めずにこつこつと証人探しを続ける殿山刑事の姿にホロリときました……。
偽証した社長の秘書兼愛人叶順子に
「なによ、だったらあたしと結婚して!」
と逆にすごまれてオタオタする宇津井検事がかわいかったでござるよ。

「雲霧仁左衛門」

2007年02月24日 | 【か行】タイトル
1995年、テレビドラマ。
山崎努版。
原作に忠実かつ豪華キャストだった「天知版」が全体としては今ひとつな出来だったのに比べ、「山崎版」はストーリーに捻りを効かせた小粋な仕上がりになっています。
まずテーマ音楽でずいぶん雰囲気に差がついたような。
「天知版」は赤いシャボン玉が乱れ飛ぶタイトルバックに、パヤパヤ~♪みたいな女声コーラスがかぶるのがなんともこそばゆくってですね(^^;
それにしても渋かったなぁ、山崎仁左衛門。
ワルっぽくて、にやりと笑った顔が悪戯っぽい。
天知茂の雲霧のおかしらは、ひたすら色男(あくまで色悪風)でニヒルな流し目がドキッとするほどセクシーでしたが、ぶっきらぼうな山崎のおかしらも、苦い顔で縞の羽織をばさっと無造作にはおる所作が、何遍見ても粋でイナセでかっこいい!
それでいて、ぞろぞろーっと韮粥?をかきこんだりする生活感のある仁左衛門でした。
なぜか隠れ家の座敷にはいつもなべがあって、小頭の報告を受けながら毎度ハフハフ食べてたりするんだな、山崎仁左衛門は。
山崎仁左衛門も良かったけど、木鼠の吉五郎役の石橋蓮司も印象的でした。
凶悪犯とか神代直人の半分イッテしまってる異常者役でのイメージが強かったんですが、石橋さんの吉五郎はクールで理知的な吉五郎。
「天知版」の財津一郎の律儀でやり手な吉五郎とはまた違った魅力がありました。

「海峡」

2006年12月14日 | 【か行】タイトル
1982年、東宝。
青函トンネルに命をかけた男の物語、主演高倉健。
トンネルの天井が崩れて、ドドドッと海水がなだれ落ちてくる出水事故のシーンは迫力たっぷり。
今にも濁流に飲まれそうな現場に踏みとどまり、必死にセメント袋で土塁を築いてトンネルを守ろうとする作業員たち――ひたすら泥と水の世界。
健さんや三浦友和はともかく、ご老体の森繁が腰まで泥水に浸かりながらの大熱演。
難工事の苦闘描写はすごく面白いんですが――残念ながら関係ない枝葉の話が長々しいのです。
工事にかかるまでがまず辛気臭い。
自殺未遂ワケアリ女の健さんへの片恋とか、飲み屋の女将の出産とか、どうでもいいんじゃなかろうか。
そんなに無理して吉永小百合を持ってこなくてもいいんでは?
やっと工事が始まってからも、三浦友和が「好きだーーっ!」と荒海に向かって叫んだり、森繁がしみじみと歌いだしたり。
人情話の合間にトンネル工事、てかんじで、あれ?もう完成?と拍子抜けしました。
トンネル掘りの苦心談だけに的を絞ったほうがいいと思うでござるよ。
それと今わの際に脳裏に浮かぶ、南国の島とねぶた祭りの生き生きとした光景……って、同じ監督さんだけど、ここだけ見れば「八甲田山」の回想シーンそのまんま。
よっぽど好きなのか?ねぶた祭り。

「影武者」

2006年11月14日 | 【か行】タイトル
1980年、東宝。
勝新が黒澤監督とケンカして主役を降りたとか、制作費が底をついたとか、いろいろ話題になっていたのは記憶にあります。
若い頃のミフネが主役をやっていたら、もっと精彩があっただろうなー。
仲代達矢は良くも悪くも印象が暗いんです、目玉ばっかりぎょろぎょろして。
なぜか武将がみな白塗りっぽいメイクだから、前衛劇みたいな雰囲気がありました。
様式美っていうんですか、衣装や具足も色分けされてて綺麗だけど、現実感は薄かった。
鎧を着けていると誰が誰かよくわからん。
人物よりも、風に波打つ野天の幔幕とか、川面に流れる敗軍の旗に目を奪われました。
彩りの美しい映画でしたが、やかんにはさっぱりわからん映画でござった。

「獄門島」

2006年11月02日 | 【か行】タイトル
1977年、東宝。
「キィチガイじゃがしかたがない」の了然和尚に佐分利信、キャー!
恰幅のよさといい不敵な面構えといい、じつに男性的で魅力たっぷりな佐分利さんなんですが、しわがれた声もまた渋いんです。
……吊るされるのはお断りですが、ちょっと担がれてみたいかも。
雰囲気・画面作りは最高。
暗鬱な雲のかかった孤島の景色にゾクゾクしました。
狂い咲き三姉妹にピーターの鵜飼さん、いい感じにイカれてます。
それなのに、終幕の謎解きでなぜかいきなり「砂の器」。
犯人を変えてしまったら、トリックがみんなパーになってしまう上に、切羽詰った動機も薄らいでしまうのに……市川監督、理屈よりも絵作り優先か?
片手で帯を押さえ、もう一方の手で女の肩を抱え、断崖から海へ――のシーンの佐分利信が素敵だったので、それもありかなと単純に納得。
おどろおどろしい雰囲気に、芸達者たちの演じるユーモラスな息抜き場面を織り込んだ、緩急巧みな好作品。

蜘蛛巣城

2006年10月13日 | 【か行】タイトル
1967年、東宝。
シェークスピアのマクベスを戦国時代に置き換えた翻案物。
バンクォーの役どころの千秋実が亡霊になって宴の席に出てくる場面――立てひざをついたざんばら髪の落武者姿の不気味なこと……。
ぼわーとした光の加減といい、うつろな目といい、斬られた姿のままニマァと笑った千秋実怖すぎ。
矢を射掛けられてハリネズミ状態になるミフネよりも、狂ってしまう奥方山本五十鈴よりも、千秋実の亡霊が一番強烈。
自分では忘れていましたが、小さいときに見ていますよ、この映画。
以前から千秋実のあの愛嬌のある笑顔がどういうわけか怖かったんですが、これでやっとわけがわかりました、原因はこれだ。
「七人の侍」の平八にしろ、「隠し砦の三悪人」の太平にしろ、千秋さんがニーッと笑うとなんか不吉な気がしたのは――この映画の亡霊に扮した千秋さんの恐ろしい姿が刷り込まれていたようです。
だいたい「マクベス」というお話が不吉で怖い物語であります。
これも小学生のときですが、テレビの劇場中継で「マクベス」を見たことあり。
やっぱりバンクォーの亡霊がおぞましかったですね、こう、下からライトを浴びて血まみれの武将が腕をだらーんと下げて白目を剥いて座っている……。
ポランスキー監督の「マクベス」も観終わってしばらく落ち込みました、あまりにも中世戦国残虐シーン満載で。
「マクベス」も怖いですが「落武者」というキーワードも怖いです。
これは原因というか、刷り込み元の映像に心当たりがあります。
野村版「八つ墓村」の尼子の落武者……冒頭の惨殺シーンも怖かったですが、炎上する屋敷を指差して笑う怨霊(田中邦衛)の表情がプチトラウマ。
どうも血まみれざんばら髪の鎧武者が苦手なのであります。

「憲法はまだか」 (06月17日)

2006年06月19日 | 【か行】タイトル
1996年、NHKドラマ。
日本国憲法の誕生のいきさつを描いて前編後編あわせて三時間、お堅い内容をしゃれっ気たっぷりに見せてしまう異色ドラマなり。
GHQが押し付けてきた新憲法に翻訳というフィルターをかけて、なんとか調整しようと必死に抵抗する日本政府。
要人たちの緊迫したやり取りの中に散りばめられた諧謔味とペーソスが、苦い笑いを誘います。
理想と妥協で創り上げられた新憲法は、人類の宝か、はたまた敗戦国の鬼っ子か。
侵略目的じゃないから再軍備もオーケーとか、自衛用の装備は戦力には当たらないとか、第九条はいろんな解釈がなされてますが、ともあれ「戦争を放棄」した戦後日本は、直接手を汚すこともなく無事60年を経てきました。
……で、今年の憲法記念日の世論調査では国民の大半が改憲に賛成だとか。
自衛軍ってちょっと落ち着きの悪い名称だと思うんですが、慣れなんでしょうかね、それも。
敗戦日本を率いたオールドタイマー、幣原喜重郎(しではら・きじゅうろう)首相を神山繁、
服毒自殺した近衛元首相を江守徹、
日本側の新憲法草案を作った松本烝治国務大臣に津川雅彦。
味のあるベテラン俳優をずらっと揃えた良心作です。