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法政大学 vs 大東文化大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.10.22)の感想

2017-11-08 04:06:17 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


雨に祟られる今シーズンのラグビー観戦。大東大の試合を観るのは熊谷Bの関東学院戦以来だが、2戦続けて雨模様となった。雨天の試合には雨天の試合の面白さがあるとはいえ、秋のラグビーは熱中症とも凍えるような寒風とも無縁の、爽やかな好天の下で観たいもの。そもそも秋にこんなに雨が降る状態で試合を観た記憶がない。

さて、この日の2試合は、埼玉県越谷市にあるしらこばと運動公園内の陸上競技場で行われる。実は自宅から車で20km以内と、熊谷ラグビー場よりも近い。陸上トラック付きとはいえ、コンパクトで観やすく出来ているので好印象。降り続く雨で水たまりも見られるような状況だが、芝生の状態も悪くはなさそう。近いという個人的な事情はさておいても、天気のいい日のラグビーも観てみたい。

台風の接近によりやや強い雨が降りしきる中、両校の選手達がピッチに登場。一部に屋根が付いた競技場だが、雨に濡れない場所はキックオフ30分前の段階で既に法政と大東大のファンで埋まっている。法政サイドの学生が陣取っている場所近く、後ろに観客がいない席で(普段なら御法度の)傘を差して観戦することにした。



◆前半の戦い/ぶれない法政のパスラグビーを堅守で凌いだ大東大

大東大のキックオフで試合開始。法政は自陣からもキックを使わずにいつもの展開ラグビーで攻める。雨にも拘わらず、法政の長短のパスにアングルチェンジをまじえたアタックは確実に迫力を増した感がある。しかし、降りしきる雨で水たまりもあるような状況では、自陣からキックを封印してのアタックを貫き通すのは難しい。好天ではビシビシ決まっていた法政の際どいパスも、結果的にノックオンに繋がりボールを相手に渡してしまうことになる。

2分、大東大は法政ゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進。抜け出したアマトからのパスがフォローしたPR3の藤井に渡り難なくトライを奪う。GKは失敗するものの、大東大が幸先良く5点を先制した。その後も法政はキックを極力使わずにパス主体のアタックを仕掛けるが、大東大は積極的にアタッカーにプレッシャーをかける組織ディフェンスで対抗。後ずさりしながらも組織を崩さない粘り強いディフェンスで法政のミスを誘い、得点を許さないのは圧巻。



パス主体の法政に対し、大東大は自陣からはキックで敵陣に入る手堅いラグビー。そして、前に出たらパスを使って攻める。今シーズンの大東大で特筆すべきはスクラムの強さ。昨シーズンまでのように華麗なパス回しでアピールする場面は少ないものの安定した戦いが出来るチームになっている。とくにこの日のように強い雨が降るコンディションでは強力なスクラムは大きな武器になる。ノックオンが多い展開になるとスクラムが組まれる回数が多くなるから、相手ボールもマイボールにできるチャンスが増えるので。

ボールを確保し続けて大きく動かすラグビーが難しい状態の中で、5-0の大東大リードのまま時計がどんどん進んでいく。迎えた35分、大東大は法政の反則で得た法政陣ゴール前でのラインアウトのチャンス。FWでいったんボールを前に運び、ラックからアマトがボールを持ちだし、フォローしたLO佐々木にラストパスを渡す。大矢のゴールキックも成功してリードを12点に拡げる。前半終了間際の38分、大東大はアマトが自陣からのカウンターアタックで一気にゴールまで走りきりトライ。ゴールキックも成功して19-0と大東大はゲームをさらに優位に進める。

やはり、グランドコンディションは関係なく、強力なランにより法政陣まで確実にボールを運んでくれるアマトの存在は大きい。身体はさほど大きくないが、LOの佐々木も強力なランナーのひとり。また、常に戦陣を切って攻守両面に身体を張る最前列の3人など、大東大のFWの献身的とも言えるプレーが光る。法政でも逞しさを増したWTBの中井健人が突破力を披露して気を吐く。このまま大東大の19点リードで前半が終了した。



◆後半の戦い/さらに2トライを重ねた大東大の点差以上の圧勝

台風の接近にともない、雨脚が強くなる中で後半のキックオフ。水たまりの上でのブレイクダウンを見ていると選手達が気の毒になってくる状況でも試合が続く。スクラムで圧倒的に優位に立っていることもあり、後半は殆どの時間が法政陣内での戦いとなる。法政も前半に比べてキックを使うことが多くなるが、BK展開でのパスラグビーには厳しいコンディション。セットプレーなどFW戦で劣勢に立たされていることで殆ど攻め手がなくなる。

確実に敵陣で勝負することが徹底されている大東大。13分には法政ゴール前でのラインアウトからFWでボールを前に運びHO平田がゴールラインに到達。GKは外れるが大東大のリードは24点となる。大東大FWの前3人は強力スクラムの要であるだけでなく、攻守でも身体を張る献身的な働きを見せる。とくにHOの平田はボールキャリアーとして先陣を切る場面も多く、キャプテンではないが大東大FWの精神的支柱といった印象。アマトが自由に動けるのも、フロントスリーの働きがあるからだと思われる。



大東大は18分にも突破を試みる法政選手に強力なタックルを浴びせてボールを奪取し、そのままFB中川からFL湯川へと繋いでトライ(GK失敗で29-0)。爆発力のある法政といえども、降りしきる雨とグランドの水たまりが目立ってきた状況の中、残り20分あまりで30点を奪うのは厳しい。ここで勝負は決まった。

攻撃ラグビーを(宣言はしていないが)前面に掲げる法政はこのままゼロ封では終われない。残り時間が10分を切った段階で最後のアタックを試みる。まずは35分、大東大ゴール前でのラインアウトから4→7と素早くボールを繋いでこの日のファーストトライ。さらにほぼ残り時間がなくなった45分にも、後半34分からピッチに立ったSH根塚聖牙がゴール前PKからのクイックスタートでトライを奪う。リーグ戦屈指のスーパーブーツのひとり萩原が2つのGKを難なく決めて14-29で終了のホイッスルが吹かれた。

ファイナルスコアの29-14だけを見れば法政が健闘したように見える。しかしながら、後半の35分までは29-0。しかも大東大のゴールキック成功は5本中2本。法政が徳井とする展開ラグビーには厳しいコンディションだったとはいえ、強力なスクラムを武器に敵陣で試合を優位に進める大東大の点差以上の圧勝劇だった。



◆試合後の雑感/両チームのラグビーに見る積み上げの違い

青柳監督がチームを率いて5年目の大東大。去年までの4年間は初年度から抜擢したBKを中心とするメンバーの成長と共にチーム力を上げてきた。その中心メンバーの多くが卒業した5年目は苦戦が必至とみられていた。しかし、関東学院戦の感想にも書いたように、強力なFWを中心に据えた形のモデルチェンジへの布石は(実は)昨年度に打たれていた。元来は(法政とはまた違った)パスラグビーを指向するチームであるだけに、FWのセットプレーが安定すればより強力なチームが出来上がる。

大東大はディフェンスも粘り強くて失点が少なく、大学チームの中ではトップリーグのパナソニックに近いイメージがある。課題はFWのモールがアタック、ディフェンスともに他のチームに比べて物足りないことだが、練習で解決できると思う。毎年選手が入れ替わる大学ラグビーだが、選手の特徴を見据えて強力なチームを作り上げることは指導者の醍醐味。今年よりも来年の期待があるチームは見ていて楽しい。

攻撃ラグビーに活路を見いだした感がある法政もようやく低迷状態から脱し、選手が自信を持ってラグビーに取り組んでいる状況が見えてきたのが大きい。観るものがわくわくするような魅力的なラグビーチームがすぐに出来上がることは法政ならではと言える。であるだけに、ここ10年近くチームの低迷状態(と言っていいと思う)が続く状況が不思議でならない。また、ここが一貫した体制でのチーム作りが成されている大東大との大きな違い。今は突貫工事のような状態で攻撃ラグビーに取り組んでいるように見えるが、組織ディフェンスなど総合力を上げていくためにも(今度こそ)指導体制の安定が望まれるところ。

しかし、法政で一番気になるのは、チームが一丸となって強くなろうとする体制にあるかということだ。この日は法政の部員達が陣取る位置の右側での観戦だった。各チームともトライシーンではお祭りになることが珍しくない。トライが終盤の2つのみと寂しい状態ではあったが、それ以外の時間帯でもチームメイトからの叱咤激励などの声援があってしかるべき。と思うのだが、不思議と左側からの声は殆ど聞こえてこなかった。もちろん冷静な観戦者達でもいいのだが、普段一緒に練習に「取り組んでいる仲間なら自然発生的に声が上がるはず。取り越し苦労であればよいのだが。

ラグビーマガジン 2017年 12 月号 [雑誌]
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ベースボール・マガジン社
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