「熱闘」のあとでひといき

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第57回 YC&ACセブンズ(2016.4.3)の感想(その3)

2016-04-09 13:20:41 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


夢を見た。場所はおそらくYC&ACのグラウンドで試合はセブンズの決勝戦のようだ。どこかで見たグリーン系のジャージーに身を包んだ選手達が奔放にボールを繋いでトライの山を築いている。パワフルあるいはスピーディなラン、巧みなステップにマジックのようなパス回し。そこにはセブンズの面白さのすべてが揃っている。対戦相手は定かではないのだが、見慣れたジャージーを纏った選手達の方は名前が次々に浮かんでくる。FWはアマトとタラウのファカタヴァ兄弟にホセア・サウマキが加わった3人。SHの役割を小山が担い、ラインにはクルーガー・ラトゥ、戸室、大道が並ぶ。大学ラグビーでは屈指といえるドリームチームが見事優勝を飾った場面を見たところで目が覚めた。

YC&ACセブンズの素晴らしいところは、前にも書いたように大学生、社会人を問わずチームに所属選手でベストの陣容を組めること。大学生のセブンズは留学生の出場が1人に制限されていることを考えると、招待チームに限られるとはいえ、セブンズファンの満足度を高いレベルで充たしてくれるのがこの大会と言える。7人のメンバーの中に強力な留学生を2人も3人も入れるのは不公平という意見が出かねない状況だからこそ貴重な大会とも言い換えられる。本当はピッチに立っていたいのにベンチに座らされる選手達だって不公平感を感じていないだろうか。

さて、チャンピオンシップに進んだのは大学4チーム(東海大、日大、流経大、筑波大)と社会人4チーム(釜石SW、北海道バーバリアンズ、PSI、タマリバ)の計8チーム。社会人チームも実績のあるチームが揃っているが、予選ラウンドを観た段階で決勝戦に勝ち上がるのは東海大と流経大になることを確信。そのくらいこの2チームの力は秀でていた。そして、強いて言えばタウムア、シオネ、タナカの3人が揃い踏みで圧倒的な力を見せつけた流経大優位と見ていた。社会人チームの経験と戦術がどこまで通用するかも見どころ。



■チャンピオンシップ・トーナメント

[1回戦]

○東海大学 38-17 ●日本大学

昨シーズンはコンソレーショントーナメントで見事優勝を飾り、念願の1部リーグ復帰も果たした日大だが、東海大のパワーと組織力に圧倒され敗退。しかし、強力な選手がいなくても東海大から3トライを奪った力は侮れない。楽しみな選手は2トライを奪ったスピードランナーの竹澤だ。東海大は村松と藤崎が絶好調。もちろん隙あらばウラに抜けるゾの湯本がいるし、池田も一回り大きくなった感じ。野口竜司はFBで成長して欲しいけどSOでもOKだ。アタアタは強いだけでなく巧いしテトゥヒは大きくても器用な選手。これだけ揃ったらやっぱり手が付けられない。ということで、ここで東海大株が1ランク上昇。

○釜石シーウェイブス 31-28 ●北海道バーバリアンズ

釜石シーウェイブズと北海道バーバリアンズは最後まで縺れた熱戦。バーバリアンズ先制の後、釜石がマイケルの活躍などで3連続トライを奪う。だが、バーバリアンズも粘って1トライ返して17-14の釜石リードで前半終了。後半も釜石が2連続トライで先行するがバーバリアンズが2トライ返して31-28で釜石が辛くも逃げ切った。バーバリアンズでは七戸と平川の2枚看板のスピードが魅力十分だった。

○PSIスーパーソニックス 21-12 ●神奈川タマリバクラブ

PSIとタマリバも手に汗握る熱戦。タマリバ先制のあと、PSIが2トライを奪って14-7で前半終了。後半も先に取ったのはタマリバで、ここで14-12。しかし最後はPSIが1トライを奪って突き放しベスト4に進んだ。PSIでは中村和矢のランが印象に残る。横山健一はチームの支柱となっているものの、やはり細かいムーブが気になった。

○流通経済大学 31-7 ●筑波大学

筑波大と流経大の茨城ダービーは、留学生3人衆のパワーが炸裂する形で流経大が5つ連続でトライを奪う。筑波が最後に意地を見せて1トライ返したが31-7と意外なほどの差が付いてしまった。しかし、連覇を続けるなど実績を挙げている東日本大学セブンズなら筑波は優勝争いに絡みそう。流経大のタナカ選手に関しては面白い場面があった。タウムアがウラへ抜けたところでフォローしてパスを要求するときに「センパ~イ」とおねだりするような声が聞こえて思わずニンマリ。パスをもらった「コウハイ」はスピードに乗って一気にゴールラインまで到達したことは言うまでも無い。ここで流経大株も1ランクアップ。

[準決勝]

○東海大学 28-0 ●釜石シーウェイブス

大学生対社会人の対決となった準決勝。第一試合では、組織的にバランスよくボールを動かし続けた東海大が前後半に2トライずつ挙げて完勝。釜石は東海大のパワーに屈した格好だが、どうしてもアタックがマイケル頼みになってしまうのが痛いところ。体力面でも、今は大学生のトップチームの方が社会人を上回っていることを実感。この試合でも村松が好調なところを見せた。

○流通経済大学 31-0 ●PSIスーパーソニックス

東海大に負けじと流経大も好調を維持してPSIをゼロ封で圧勝。この試合も大学トップチームのパワーを感じさせる典型的なプレーがあった。ディフェンスで相手にブレイクダウンを許さないチョークの連発には思わず唸ってしまった。流経大の選手達から「倒すな」という声が頻繁に聞こえたことからも意図的かつ組織的にこのプレーができている。PSIはジェイミー・ヘンリーが居ても苦しかったと思われる。流経大が4連覇に王手をかけた。



[決勝戦]

○東海大学 31-28 ●流通経済大学

流経大の4連覇阻止に燃えたというよりも初優勝に向かってチーム一丸となって戦う東海大。ここまでシオネらの圧倒的なパワーで勝ち上がってきた流経大だったが、個の強さだけでは通じない相手に対してはミスを連発して波に乗れない。東海大が1分に野口、2分に湯本が相手のミス絡みとは言え見事なワンツーパンチを決めて14-0とリードを奪う。流経大の4連覇がかかった試合は意外な形での立ち上がりとなった。セブンズの拮抗した戦いはバスケットボールに通じるところがあり、2つ先行されるとキャッチアップが難しくなる。

しかし、流経大も簡単には引き下がれない。4分、ラインアウトを起点としてタウムアが1つ返した後、6分にはシオネが技ありのプレーで流経大のトライゲッター高山のトライを演出。ボールを持ったシオネが巨大の壁になってディフェンダーの視界を遮り高山にボールを渡したプレーだが、相手は急に高山が飛び出してきたように見えたに違いない。スピードランナーに早い段階で間合いを与えてしまったらもう止められない。東海大も粘る。7分にエースに名乗りを上げた藤崎がトライ。東海大はさらに10分、またしても藤崎がトライ。26-14での折り返しとなったが、流経大にとっては最初に失った2本が痛かった。

東海大の勢いは止まらない。隙あらばウラに出てゴールラインまで駆け抜ける湯本も魅力たっぷりのスピードランナー。31-14と東海大のリードはさらに広がり、流経大の4連覇は風前の灯火となる。しかし、決勝戦は通常より3分長い10分ハーフ。流経大にも一発で決められるエース高山がいる。3分にその高山が一気にゴールを陥れ21-31。ちなみに高山はゴールキックも次々と決めるスーパーブーツでもある。残り7分近くで10点のビハインドなら十分に流経大の逆転もありえる。ここから東海大には我慢の時間帯が続く。

そして9分、遂に高山が3連続トライを挙げ31-28。ただ、残念なことにゴールキックを決めたときには既に試合終了を告げる合図が鳴っていた。流経大はあと一歩のところで4連覇を逃したの似たいし、東海大は嬉しい初優勝。スコアは拮抗したものの、個の強いメンバーが組織的に戦った東海大が安定した戦いぶりで勝利を手にした。流経大は個の力に頼りがちな部分が災いし、ミスに泣いた感が強い。とはいっても、大学生なら文句なしに優勝決定戦レベルの試合だったことは間違いない。

今シーズンのリーグ戦Gはこの2チームに3チーム目として同じく豪華陣容の大東大が絡んでくる可能性が高い。この場で3つ巴の戦いを観たかった気もするが、それは秋シーズンの楽しみに取っておこうと思う。現状ならほぼレギュラーが確定で、すぐにでも15人制の強力チームが出来上がる東海大が一歩リードしている感が強い。去年と比べてもBKの得点能力を考えるとより強力なチーム鳴ると思う。このまま強化に励んで今年こそは永らく宿題であり続けた大学日本一に輝いて欲しいところ。もちろん、楽しみなメンバーが加わった流経大がこのままで終わるはずがない。そしてモスグリーンのチームも。これから秋に向かって楽しみが膨らむ中、今年も最後まで熱戦が続いたYC&ACグランドを後にした。

ラグビーマガジン 2016年 05 月号 [雑誌]
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