「熱闘」のあとでひといき

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サンウルブズ第2戦/初勝利ならずもより深まったチームへの愛

2016-03-13 21:59:32 | 頑張れ!サンウルブズ


緒戦でスーパーラグビーで戦えるという確かな手応えを感じさせたサンウルブズ。その第2戦は第2ホームの位置づけのシンガポールでチーターズ(南アフリカ)と戦った。1週間のブレイクはあったとは言え、対戦相手もサンウルブズ侮り難しとみたはず。初勝利が挙げられれば嬉しいとは思いつつも、この試合もどこまで戦えるか、そしてバックアップメンバーも戦えるレベルにあるのかなどが私的見どころだった。

しかし、サンウルブズはまたしても期待をいい方に裏切ってくれた。前半だけでハットトリックを達成した山田の3つのトライはどれもビューティフルな。この一連のトライはスーパーラグビーに新風を吹き込んだと言ってよさそうだ。先だっての拙ブログでの「サンウルブズは日本のラグビーを変える」は願望に近い応援メッセージだったが、前半の戦いぶりを観て「日本」を「世界」に置き換えたいくらいの気持ちになった。後半は悪い流れを断ち切れず、残りあと10分ということころで逆転を許して力負けとなったが点差は僅か1点。ますますサンウルブズへの期待は高まったのだった。

■前半の戦い/持ち味?の速さと柔らかさで強豪を圧倒したサンウルブズ

実はスーパーラグビーを真剣に見始めたのはつい最近のことだ。開幕から第2節までの試合をいくつか観て、ジャガーズのような個性的なパス回しで勝負するチームがあるものの、全般的にパワフルでガチンコのラグビーが支配的というのが率直な感想だった。だから、サンウルブズはこの激しさの中で戦えるのかが大きな不安材料だったし、そもそも自分達の「色」を出すことすら難しいのではと考えていた。もっともハメットHCが率いる多国籍軍のラグビーが目指すラグビーが「日本のラグビー」になるのか?という捉え方をするファンも多いだろうけど。

しかし、WTB山田選手の3連続トライを観て、このラグビーが世界にアピールする要素は十分にあると感じた。いや、それ以上に、サンウルブズがスーパーラグビー(SR)に参入した意義はあったとすら思った。世界最高峰とされるリーグへの参入は、2019W杯(日本開催)を見据えて日本代表強化することが大義名分であり、それはあながち間違いではないと思う。SANZARのアジア市場開拓とジャパニーズマネーへの期待だってあっただろう。しかし、そんな「一方通行」ではなく、日本生まれのチームがSRに逆にラグビーの内容でインパクトを与える可能性だってあることを(私だけかも知れないが)感じたことに驚きを禁じ得ない。

前半のサンウルブズでとくに印象に残ったのは、速いテンポでボールを柔らかく丁寧に動かすことでトライを重ねたこと。HB団がサントリーでコンビを組んでいる日和佐とピシということもあるが、オフロードやキックパスをまじえ、ワイドにボールを動かすラグビーは圧巻。もちろんそのラグビーが出来るのは仕事人が揃ったFW第3列の3人(デュルタロ、モリ、カーク)のパワフルな中にも献身的で堅実な働きがあることが見逃せない。もちろんチームに不足している部分はあるが、しっかりボールをインゴールまで持ち込むことができていたことは、緒戦より明らかに進化した点と言っていいだろう。遠い先(下手をすれば来年になるかも知れない)と思われていた初勝利がすぐ手が届くところまできている。そんな印象を抱いた人も多かったのではないだろうか。

■ミスに泣いた後半/勝てなかったことが大きな収穫

後半は流石というべきかチーターズがFW1列の選手を替えるなど建て直しを図ってきた。サンウルブズは開始早々のPGでさらにリードを拡げて幸先よいスタートを切るものの、相手FWの重圧とHB団の巧さと強さの前に前半に見せたようなアタックもできない状況になっていく。49分と54分にディフェンスミス等であっさりトライを奪われたことで試合の主導権は完全にチーターズに傾いた。新参チームゆえ、いったん流れが悪くなると建て直しが難しくなってしまうことが(わかってはいても)歯がゆかった。リザーブメンバーにインパクトプレーヤーが欲しいところだが、限られたメンバーである以上、これも致し方ない。

とはいえ、暑さもあってか、相手もミスが多かったのでサンウルブズにも建て直しのチャンスはあったと思う。とにかく追加点が欲しかったし、そのチャンスもあった。それゆえに、さほど難しくないPGを2本連続で外してしまったことが残念。5本目までのピシのGKが完璧だったので、1本の失敗の後ももう1本蹴って欲しかったところ。さらに前半から奮闘していたカークが残り10分というところでシンビンによる退場になってしまったことも痛かった。相手に試合の主導権が移ったところでも粘り強いディフェンスで何とか失点を食い止め続けたサンウルブズだったが、赤道直下の地の暑さによる消耗は想像を超えるものがあったに違いない。初勝利はお預けになってしまったが、7点差以内敗戦の場合に与えられるボーナスポイント1を獲得できたことは大きかったと思う。

■タイトなゲームだったからこそ見えた課題

本試合に限らず、今後の戦いを見据えた上でもサンウルブズが抱える大きな課題のひとつは23名のメンバー全員でパフォーマンスを落とさずに戦えるチーム作り。第2戦は勝利が現実味を帯びたタイトな試合になったため、選手交替のタイミングも難しかったと思う。しかし、難しい試合は実戦でチーム力を上げて行かざるを得ないサンウルブズにとって、むしろプラスと捉えるべきだろう。殆ど後半を任されたLO細田は貴重な高さを持っている選手だし、PR浅原も学生時代の印象は意外に身軽で運動量が多い選手だった。SH茂野も一度はスタメンでピシとのコンビで見てみたい選手。

あと、もうひとつ気になったのは、後半のように流れが悪くなったところでのチームの建て直し。方法としては、我慢して堪えること、相手のミスに乗じた切り返しで形勢挽回を図ること、後半の体力的にきつくなったところでも規律を保つことなど。ただ、勝利に繋げるための戦い方を高いレベルのリーグで経験できることをプラス思考に精神的にもタフなチームに成長して欲しいところ。苦しい戦いは続いても、選手達は経験を積んでレベルアップ出来る場に参加したことに対して誇り持っていいと思う。

■サンウルブズは世界のラグビーを変える

サンウルブズとともに新加入したジャガーズ(アルゼンチン)が同国代表チームをベースとしたラグビーでスーパーラグビーに新風を吹き込んでいる。しかし、ジャガーズとはちょうど地球の裏側に位置する日本から参入したサンウルブズだって負けていないと思う。チーターズ戦の前半で見せたFW第3列主体のパワーをベースに、速さと柔らかを兼ね備えた鮮やかなボール回しでトライを奪うプレーがコンスタントにできれば世界中のラグビーファンに「日本製」の質の高さをアピールすることだって可能なのだ。

たとえ1チームでも「世界」と繋がることで自身のパワーアップと同時に、持ち味もアピールするチャンスを得たことは日本のラグビーにとって計り知れない出来事だと思う。疑心暗鬼から始まったサンウルブズに対する想いだが、夢は徐々に広がり、そしてチームへの「愛」は深まる一方だ。

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