5月〜6月ごろに咲き、10月ごろから再び咲きだす「アツバキミガヨラン(厚葉君が代蘭)」。
ユッカと呼ばれるこの花には数種類あり、特に目立つのが、①「アツバキミガヨラン(厚葉君が代蘭)」と ②「キミガヨラン(君が代蘭)」。
それぞれ正式名称は、
①---ユッカ・グロリオサ(Yucca gloriosa L.)
②---ユッカ・レクルヴィフォリア(Yucca recurvifolia Salisb.)
実際にこの2種類を区別するのは難しい。
葉が折れ曲がらないのが「アツバキミガヨラン」、全体に少し小さくて、葉が折れ曲がるのが「キミガヨラン」などといわれている。
この花の名前を付けたのはやはり牧野富太郎博士。
博士の著書「植物一日一題」に詳しく書いてあるが、簡潔に書くと、博士が小石川植物園でこのユッカの花を見て「キミガヨラン」と名付けた。
なぜならば、①のユッカ・グロリオサは、本来「栄光のある」という意味、それをどういう訳か「君が代が栄える」という意味に解釈したようだ。
だから博士が見たのが①の方の花だったら良かったのに、実際には②のユッカ・レクルヴィフォリアの方を見たのだった、要するに間違えたのだ。
それをあとになって気が付き、それならば本物の①の方はどうしよう、ということになって「オトコラン(男子蘭)」という名前を付けた。
でも、現在その名前はあまり普及していなくて、「アツバキミガヨラン」という名前になっている。
「オトコラン」という名前はどうしちゃったんでしょうね。
--- 青空文庫「植物一日一題 オトコラン」より ---
男子蘭! 何とも勇ましい名じゃないか。元来それはどんな植物か。また誰がそういう名をつけたか。すなわちこれはユリ科に属するYucca gloriosa L.に対して私の命じた和名なのである。
《 略 》
ずっと以前に小石川植物園ではこの品を Yucca gloriosa L. だと思っていた。その時分に本品に対して君ヶ代ランの和名(私の命名)が出来た。しかるにこれはじつは Yucca gloriosa L. ではなくて Yucca recurvifolia Salisb.(=Yucca gloriosa L. var. recurvifolia Engelm.)の学名のものであることが後に判った。
博士でも間違えることがあるんだ・・・
さて、今回見た花もどちらか区別するのが難しい。
これら2枚の写真ではどちらとも言えない。
葉が曲がっていないのは「アツバキミガヨラン」の特徴。
そういうことで、これは「アツバキミガヨラン」だと思う。
学名: Yucca gloriosa(アツバキミガヨラン)、Yucca recurvifolia Salisb(キミガヨラン)