映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

新東京いい店やれる店

2012-07-16 06:46:24 | 
「新東京いい店やれる店」がついに出版された。
期待を裏切らない面白さに感動しました。さすがホイチョイプロダクションだ。

ホイチョイプロダクションの傑作中の傑作「東京いい店やれる店」が出てから何と18年がたつ。
文章の面白さとお店の選出の素晴らしさに感動して、今だに自分の本棚からグルメ本の帝王の地位を動かさなかった。その続編が発行されることをネットで何気なく発見した。ちょっと立ち読みしてから買おうかと思って大きな本屋をいくつか回ったが、どこにもない。そんなに売れてるの??
そう思いながら、近くのツタヤで何げなく置いてある本を見つけた。立ち読みしている暇はない。即購入した。

94年に出た前作「東京いい店やれる店」にはいわゆる東京の老舗が全般的に取り上げられている。
自分の手元に父が持っていた1973年のグルメ本「新東京うまい店」(料理本の老舗、柴田書店刊)がある。それと比較してみると、今回も含め和風系には共通しているお店が多い。中江、いせ源、並木藪蕎麦、鮎正など。。ただ、1973年すなわち昭和48年というとフレンチ、イタリアン系はまだまだ今ほどはメジャーではなかった。昭和50年代のディスコブームのころからしゃれた店が多くなった気がする。そしてバブルを迎える。一気にフレンチイタリアンが増えた。しゃれたバーも急激に増えた。
古いも新しいも含めた集大成が前作「東京いい店やれる店」だと思う。
ともかく面白かったし、素晴らしい。


今回の本をざっと読んでみた。
単なる前作の延長になっていないのがいい。
例えばミシュラン本はいくつか中身が変わるが、基調は大きく変わらない。そんな本は毎回買う気にもならないだろう。立ち読みで済ませればいいわけだ。
これは違う。

季節感を大事にする。春であれば花見、夏でいえば花火やホタル狩り、秋はお月見、冬は雪見というように日本には江戸時代から強い季節感があった。今はこういう季節だからこれ食べに行こうよというような誘い方ができるような設定にしている。その構成の仕方が実にうまい。
プチ夜景、ハモ極楽、サルサ、アユ、すっぽん、生ガキなどの話には思わずなるほど。。。
西麻布のすし屋リストは凄い!四川料理の店リストも参考になる。
個人的好物インド料理の話もいい感じだ。嶮暮帰が№1というのは確かだ。
経験のない北欧料理には挑戦してみたい気になった。「大人たちよもう一度湘南を目指せ」には全く同感
そしてそれぞれの東京の伝統的な食の歴史を取り上げている。
嫌味にならないうんちくがいい。

今回もデートそしてそのあとも盛り上がる店という選定だ。絶妙なタッチの文章で東京都内をかけめくる。
20年近くたって、前作で取り上げられたフレンチイタリアン系の店は大きく変わった。バーについても同様である。今行ってもない所が多い。前のアクアパッツァの場所に今ある店が取り上げられているのも象徴的だ。

3つだけ取り上げたい。
そのうちの2つがよくいくところである。逆に取り上げられるのが意外だった。
まずはシェラトン都ホテルの中華料理「四川」だ。
うちの墓のある高輪の寺も近くで、祖父祖母の法事や父の四十九日もこの店でやった。母の四十九日の時は目黒駅前の中華の老舗「香港園」にした。天皇家や美智子さんの実家正田英三郎一家の気品ある写真があると妙に高尚に見える店だ。母の姉妹で辛いのが苦手そうな人が多かったその時だけ変えた。
昼間は非常にリーズナブルな価格だ。予約は必須、なめてかかって予約なしできたら入れないので注意。客層はいい。ここでマーボー豆腐を小さい頃から食べているうちの娘は悲劇だ。どこへ行って四川系の料理を食べても絶対に満足できない。小さい頃からおいしいものを食べるとそれはそれで悲劇だ。

夜も行くが、安くはない。上のような普通の牛肉オイスター炒めでも抜群にうまい。
アラカルトで頼む四川風味付けをした蒸し鳥が絶品。
夜窓の外の竹が揺れ、非常にムードある。こういう形で取り上げられるのは意外。

小さい頃、この隣にある「清正公」という寺のお祭り縁日に祖母とよくいったものだ。通りを都電が走っていた。寺の隣に大きな屋敷があった。故藤山愛一郎元外務大臣の大邸宅である。盛りの時期は過ぎたが、そのころも現役の衆議院議員だった。財閥の御曹司でロマンスグレーの紳士であるが、自腹で政治資金を調達して財産をつぶしたので有名な政治家だ。女優細川某との付き合いはあまりにも有名だ。いつの間にやら屋敷がなくなりホテルが建設された。都ホテルだ。大学生の頃だったと思う。藤山の御霊が宿ったのか、このホテルは政治家がよく女性との密会に使っていた。今はどうなんだろう。

キャピタル東急ホテルのバーはよく使う。
「李白バー」という名であった。
正直建て替える前のウッド基調のインテリアが好きだった。落ち着く場所で、友人ともよく来たものだ。小腹を満たすためにホテル内の中華料理屋から出前もとれる。この点心が抜群にうまい。
このホテルはビートルズが来日した時宿泊したのであまりにも有名だった。東京に外資のホテルが次々と出来て存在感が薄くなっているのに危機感を持って建て替えをしたと思うが、正直前の方が良かった。
新しいキャピトルバーも素敵だが少しイメージが違う。
それでもこの本で「猿でもチュウできる店」として取り上げていた。
この気持ちはわかる。淡い想い出がある。

大学に入った後、高校を卒業をしてすでに働いていた女の子にばったり駅で会った。幼稚園から中学まで一緒だった子だ。幼稚園の頃うちに遊びに来て、結婚するまで帰らないと自分の母に行ったという。小さい頃からおませな女の子だった。彼女が誘ってくれた。それがこのホテルだ。赤坂のビブロスやムゲンは知っていてもホテルなんてまだ無縁だった。ホテルに行き大人の雰囲気を持ったレストランで食事をした。天井が高かった印象がある。夏でホテルに入るときはまだ明るかった。食べ終わってホテルの外へ出たら暗い。異様なムードが漂いぞくぞくした。山王日枝神社の裏手を2人で歩く道筋が妙に暗く、歩きながらドキドキ心臓が鳴り始めた。まだ大人になりきれない自分は静かにふるえながら歩くしかなかった。。。。人生の道理を知っている彼女が僕に大人になるための何かを教えてくれた気がする。
まさにその場面がこの本で取り上げられている。
恥ずかしながら、この本と同じ作戦ずいぶんと使わせてもらった。幼馴染に感謝すれど、彼女は8年前もう別世界の人となった。

以上のよくいく2つの店のほかにポルトガル料理が紹介されているのが気になった。
いろんなグルメ雑誌ではあまり紹介されていない。香港好きの自分はマカオも当然好きだが、最初に行った時のポルトガル料理の印象がよくないのか、食べていなかった。それが2年前マカオに一緒に行った人たちと食べたポルトガル料理に感動した。見方が180度変わった。それまでの日々を後悔した。
この本ではイラストが紹介されているダックライス
鯛めしを食べているような食感だ。

アフリカンチキンは抜群だ。(この写真はマカオのポルトガル料理屋で撮った)

ちなみにここで紹介されている高輪の店「マヌエル」はうちのお墓の寺のすぐそばだ。ある時突如見慣れぬ国旗が立っていてビックリしたものだ。でも店出て次の展開どうするのかな?墓の横の道歩くのは逆効果だよね

ほかにもたくさん書きたいことあるがやめておこう。
帯に「エロ本」と書いてある。女性に手の内を教えないのが趣旨だから心の中にひっそり思う方がいいのだ。
この本あれば当面新しいグルメ雑誌は買う必要はないことがわかった。

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