映画とライフデザイン

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映画「存在のない子供たち」

2020-05-19 22:30:31 | 映画(アジア)
映画「存在のない子供たち」は2019年日本公開のレバノン映画


シリア難民の少年とその家族、アフリカからきている不法入国者などがレバノンの首都ベイルートで困窮の中さまよっている姿を映し出す。「存在のない子供たち」は昨年夏映画館で鑑賞している。ちょうど、体調がよくない時だったせいか、どん底の境遇の映像が続き気分がすぐれずブログアップしていない。この映画では主人公の少年が家出したあとに、まだ一才になるかどうかの赤ちゃんの面倒をみざるを得ないシーンがある。そのシーンが頭にこびりついて残っていた。

今回DVD化され、ジャケットを見たときにあの赤ちゃんをもう一度見てみたい衝動にかられた。「自分を生んだ罪で両親を訴える」というのが、この映画の宣伝文句である。それだけでなく人身売買、不法入国の取締、初潮を迎えたばかりの幼女の結婚、戸籍のない子供とこの映画で取りあげる題材は多い。この映画こうして再見すると、社会の底辺で精いっぱい生きていこうとする姿に心打たれる。


12歳のゼイン(ゼイン・アル=ラフィーア)は、両親と兄弟姉妹とベイルートの貧民窟に暮らし、学校にも行かずに毎日路上で働かされていた。唯一の心の支えである大好きな11歳の妹のサハルが、強制的に結婚させられると、ゼインは怒りに突き動かされて家を飛び出す。エチオピア移民の女性ラヒル(ヨルダノス・シフェラウ)は、仕事と食べ物を求めて路上をさすらうゼインを見かねて家に住まわせる。

ラヒルには一歳になるかどうかの赤ちゃんがいた。ラヒルが仕事にでるときには、ゼインは赤ちゃんの面倒をみながら留守番をしていた。ある日、仕事にでたきり朝になってもラヒルが帰ってこない。あわてて赤ちゃんをつれて方々を探しに行くが見当たらない。やむなく、ゼインは赤ちゃんと一緒に留守宅で暮らさねばならなくなった。 


1.ナディーン・ラバキー監督
レバノンで生まれ育った彼女は現地ではインテリ層に属しているのであろう。写真にで見るナディーンはエキゾチックな美人である。元々は女優である。リサーチ期間に3年を費やし、監督がレバノンの貧民屈で目撃したことを盛り込んでフィクションに仕上げたのがこの作品だ。


また、出演者は同じような境遇の男女をキャスティング・ディレクターが探し出してきた。それだけにこの映画はフィクションであっても、ノンフィクションの要素を持つ。ノンフィクションの話を構成して脚本化したフィクションを、こういう境遇と縁のないプロの俳優が演じようとしても不自然になってしまうのであろう。キャスティングとロケハンの成功がこの企画を勝利に導く。

ゼインが親と一緒に暮らす住居も窮屈だが、ラヒルが住むのは日本でも昭和30年代にはほぼなくなっているようなボロの掘立小屋である。水道も泥の水しかでない。赤ちゃんのミルクも作ってあげられない。このリアルさにはショックをうける。この映画はカンヌ映画祭でも審査員賞を受賞している。たどたどしく、映画祭に参加する少年のタキシード姿が映し出される。そんな服はとても着られない最悪の育ち方をした少年だ。

2.映画と似たような境遇の出演者
主人公ゼインを演じるのはシリア内戦に伴って難民となりベイルートに来た少年である。普通の教育は受けてはいない。生計を立てるためにもう10代前半から働いている。そんな境遇は役柄とかわらない。ゼインが家出した後お世話になる女性ラヒルはいつ生まれたのかもわからない。エチオピアの難民キャンプで育って、方々でホームレスの生活もしてきた。姉妹を頼ってベイルートに来たが、なんと撮影中に不法移民で逮捕されたという。

しかも、ラヒルの子供を演じる1歳の赤ちゃんの両親が撮影中に逮捕されたというのには驚く。今も実の両親が揃って暮らしてはいないようだ。戸籍というのは日本独自のものかもしれないが、かれらには身分証明ができるものがない。


3.赤ちゃん役がすごい!
これがまたかわいい。最初見た時にも心の奥にその姿が残ったが、今回も同じだ。ちょうど一歳くらいであろうか?当然演技などできるはずはない。まだ赤ん坊で、面倒をみるゼインの胸をさぐって、おっぱいに触ろうとしている。母親と勘違いしているのであろう。音楽が鳴ると、それに合わせてダンスをしだす。映画をやっている最中に徐々に成長していく。


最初は立つのがようやくだけど、次第によちよち歩けるようになっていく。母親が不法滞在で逮捕されたあと、やむなくゼインが面倒をみる。この赤ちゃんを連れてベイルートの街の中を歩いていく。ゼインは途中で赤ちゃんを置きっぱなしにしてしまおうかという衝動に駆られる。でも、できない。ヨチヨチ歩きでゼインを追いかけていく。鍋のようなものに赤ちゃんを乗せて引っ張ってベイルートの町を歩いていく。やるせない光景だ。


この映画を再度見てからこの赤ちゃんのことが頭から離れない。もう4歳になっているようだが、ちゃんと育っているんだろうか?養子に迎えたいくらいだ。

 

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