映画とライフデザイン

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映画「肉体の学校」三島由紀夫&岸田今日子&山崎努

2020-11-22 06:13:25 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「肉体の学校」を名画座で観てきました。


映画「肉体の学校」は昭和39年の三島由紀夫の小説を映画化した昭和40年の作品、岸田今日子と山崎努の主演である。名画座で同時上映された美徳のよろめきと違い三島由紀夫の原作に忠実である。ハイソサエティーの主人公をセンスよく描いている小説が見事にそのまま映像になっている。昭和40年を描いた映画の中では都会的モダンな作風であったと感じる。


六本木でブティックを営む元華族の浅野妙子(岸田今日子)は離婚後自由気ままに生きている。池袋のゲイバーで働く21歳の学生佐藤千吉(山崎努)に惹かれ一緒に暮らすようになる。パーティなどで千吉を紹介するときには甥といっている。お互いの自由を尊重するあまり、意外な恋愛の進展を見せる話である。

⒈岸田今日子と山崎努
岸田今日子:この当時35歳前年「砂の女」で賞を総なめしていた。アニメ「ムーミン」の声ということで名高いが、自分にとっては「傷だらけの天使」の綾部女史のけだるいイメージが強い。この映画での岸田今日子は洗練されて美しい。服装のセンスが抜群にいい。文学座の結成に関わった岸田國士の娘という血筋の良さが三島由紀夫の原作の妙子とまさにイメージがぴったりである。付けまつ毛が長い。


山崎努:昭和38年の黒澤明作品天国と地獄での誘拐犯人役で一躍有名になった。同じ昭和40年には赤ひげにも出演している。当時28歳で21歳の学生を演じるというのはずうずうしい感じもする。「天国と地獄」の金持ちに反発する貧乏医学生のような世の中への反発はない。三島由紀夫の小説だけに当時蔓延している左翼思想もない。荒々しいバンカラタイプという意味では適役だと思う。

ゲイバーのスマートなバーテンダーなのに最初のデートに下駄を履いて現れ、デートの最中にパチンコ屋に入ったりして相手を戸惑わせる。と思ったら次のデートでは三揃いのスーツで颯爽と現れたりする。ゲイの仲間があいつは誰ともやるよという。即物的な男だ。


この2人のことを語るナレーションは久米明である。TVのノンフィクションでは名ナレーターだったなあ。声を聞いているだけでわくわくする。

⒉三島由紀夫と上流の生活
上流の気取った生活を描くことができるのは戦前の学習院高等部出身で育ちの良い三島由紀夫ならではだ。垢抜けたセリフ自体がどれもこれも不自然ではない。美徳のよろめきで脚本に新藤兼人を起用して上流生活を描こうとするのが失敗であって、原作に忠実に三島由紀夫ならではのセリフをそのまましゃべらせるのが良い方策というのがよくわかる。ある意味一つの戯曲を見るようでもある。


単に年上女と年下男の恋と言うだけではなく上流女と下流男との異質な付き合いというギャップを三島由紀夫が描いている。自立して生計を立てられる離婚経験者3人の女が男の値踏みをする会話が頻繁に出てくるが、専業主婦率が高いこの当時にしては随分と進歩的に映ったであろう。

⒊昭和40年の風景
主人公が通う大学をホテルから見下ろすシーンがある。階段のある大学のキャンパスを見て一瞬大隈講堂から撮影した早稲田大学と思ったが、冷静に考えてみると明治大学を見下ろすと考えればそのほうが間違いない。原作を読み返すと大学は駿河台にあると言う記述があった。高層の駿河台校舎しか見慣れていない現代の明大生からはありえない風景かも知れない。

岸田今日子と山崎努が一緒に暮らすアパートメントはハイセンスな佇まいである。どこなんだろう?赤坂プリンスホテルでイヴサンローランのファッションショーをやっているシーンがある。そこに映る日本のモデルもずいぶんと垢抜けている。岸田今日子がホテルの外の弁慶橋あたりから赤坂見附の交差点付近を見回すシーンがある。今と違うなあ。車の量がかなり閑散としている。2人で一緒に行った熱海の旅館で岸田今日子が貸切風呂に入っている姿がある。これも粋で優雅に感じるものがある。

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