映画とライフデザイン

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映画「メランコリック」

2021-11-30 19:53:38 | 映画(日本 2019年以降)
映画「メランコリック」は2019年公開作品


映画「メランコリック」は低予算で作られた作品で、当時意外なヒットとなった「カメラを止めるな」と同じように面白いといううわさであった。しかし、「カメラを止めるな」自体をあまりいい映画と思っていない自分からすると、俳優も知らないメンバーばかりでつい後回しになってしまった。

このところ公開映画に興味をもてる映画が少なく、Netflix映画のラインナップに「メランコリック」を発見して、ダメ元で見てみた。そうしたら、予想に反してむちゃくちゃおもしろい。たしかに、映画界周辺でさまよう30代に足を踏み込んだばかりの3人が中心になって低予算でつくったと言われるとそのようだが、そうあまり感じさせない田中征爾の脚本と演出の巧さに満足した。自分の心境からすると、超掘り出し物である。

大学を出ても就職せずにフリーター稼業を続けていた男が、近くの銭湯でバイトをすると、その銭湯の洗い場では深夜殺された死体の処理をしている秘密を知ってしまう。やむを得ずに自分も銭湯の関係者と一緒となってその稼業に従事するという話だ。


「カメラを止めろ」がゾンビ映画の制作に絡んだ話で、「メランコリック」の作品情報を軽く読んで、死体の酷い処理をする「冷たい熱帯魚」のようなおぞましい世界を想像していた。実は死体は出てきても、見るに耐えない映像が出てくるわけではない。むしろ、コメディタッチの青春映画を観ているような感覚をもつ。作品のタッチは柔らかい。有名俳優はまったく出ていない。だからといって素人の映画づくりレベルの稚拙な作品ではない。見応えもある。

東大を出たにもかかわらず、就職もせずフリーター稼業の鍋岡和彦(皆川暢二)は実家暮らしでうだつが上がらない。風呂の湯が切れてたまたま行った近所の銭湯松の湯で高校の同級生・百合(吉田芽吹)と出会ったのをきっかけに、百合の勧めもありその銭湯で働こうと思い立つ。

もう1人の仲間松本(磯崎 義知)と2人面接をしてオーナーの東(羽田真)に採用されて働き始める。ところが、百合と飲みにいった帰りに電気がついている深夜の風呂場を覗いてみると、そこで同僚の小寺による殺人と死体処理が行われているのを見てしまう。小寺に見つかり脅されドキッとしたが、結局オーナーの東が助け舟を出して、死体処理を手伝うことになる。

東は裏社会筋の田中(矢田政伸)に借金があり、この稼業をやらざるを得なかった。また、別の機会に同僚の松本も死体処理の仲間であることを知る。ところが、続けて殺し屋稼業に従事していた小平が襲撃を失敗すると、同僚の松本に殺しの仕事が降りかかってくるようになるのであるが。。。

⒈ありえない話ではない
殺し屋って日本にいるのは間違いないだろう。豊田商事社長やオウムの幹部が大衆の面前で無残に殺された。あんな風に世間に顔もさらす殺し屋は少ないだろうが、表に出てこない殺し屋っているだろう。確かに、銭湯は死体遺棄には都合がいい。死臭はすぐ処理すれば換気で大丈夫だろうし、釜の入り口がそれなりにあれば、映画「冷たい熱帯魚」のように細かく死体をカットしなくても処理できる。


⒉裏社会への借金
銭湯のオーナーも裏社会の筋者に借金をしている。ヤクザが絡んだ借金といえば、事業がうまくいかず高利の金を借りたのか?博打やノミ行為のツケで借りることも考えられる。少しずつ返すといっても、減らないから裏稼業の死体の遺棄を手伝い続けるのだ。始末させられなければならない奴もそんなにいるんだろうか?組同士の抗争だけでなく、ひっそり行方不明にさせて財産をふんだくる連中もいるのだろう。


そういうイヤな世界は映画では大げさには見せない。そもそも裏社会もどきの田中がヤクザとか組のものというセリフはない。死体の処理についても、借金の理由についても、なぜ殺されるのかもディテールは語られない。そういうセリフもない。こちらが映像で想像する域を超えない。ここでは、女に縁がなかった主人公の元同級生との純愛を織り交ぜる。青春ドラマ的要素でトーンを下げる。緩急自在だ。


そんなムードで流れる。

⒊浦安市猫実
松の湯の玄関横に猫実と住居表示がついている。全国的に有名な町名でないが、千葉で仕事をしたことある自分にはわかる。東西線浦安駅から近いアドレスで実在だ。浦安といえば、東京ディズニーランドのあるところ。浦安市の名前なら誰でもわかってしまうが、猫実ではわからない。しかも、映画の中で浦安の地名は出てこない。見ようによれば、どこかの地方都市にも見える。

たぶんロケハンティングで松の湯がうまい具合にハマったのであろう。浦安は漁師町でもともとディズニーランドがあるエリアや新浦安駅付近の広大な住宅地は海だったエリアで埋立地である。海に近いという利点は純愛物語に少しだけ活かせているかもしれない。

⒋ラストに向けての逆転とツッコミどころ
最終的に銭湯のオーナーと2人の従業員はある殺しに絡む。ここでは詳細を語らない。単純にことが運ぶかといえばそうではない。でも、修羅場での展開は事前予想を裏切った。オチはよく考えている気もする。個人的にはマーティンスコセッシ監督の「ディパーテッド」が歯切れよく結末を迎えるのを連想した。

でも、ここまではリアル感があっても最後に向けてはちょっと雑だな。

ツッコミどころ(ネタバレ少しあり)

車の逃走
殺しに挑んで、不意に松本が銃弾をうける。すぐ死んでもいいはずだが、そうならない。とどめ射ちもされない。その負傷した松本を鍋岡が車を走らせて運ぼうとする。でも、鍋岡は運転できない。アクセルもブレーキもどこを踏んで良いのかわからないと言う。でも、無理やり発進させる。気がつくと2人は鍋岡の自宅にいるのだ。

運転って未経験者にそう簡単にできるもんじゃない。教習所でいきなりエンジンを円滑に発進させられるのは余程のやつだ。まあ、これってありえない。運転はできる設定にすべきにして展開を考えるべきでは?しかも、銃弾を受けて大丈夫なわけがない。気がつくと、鍋岡の母親が銃弾を処理している。事情を知らない身内がこんなことするか。しかも、夜には回復だ。この辺りは実現性が薄いので醒めると言わざるをえない。その後の銭湯営業を含め、リアル感へのちょっと詰めが甘い。とはいうもののおもしろかったのは確かだ。

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