映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「流れる」 山田五十鈴&田中絹代&高峰秀子

2017-11-19 21:19:15 | 映画(日本 昭和34年以前)
映画「流れる」(昭和31年:1956年の作品)を名画座で観てきました。


山田五十鈴をはじめとして、当時の日本を代表する名女優がここまでそろった女性を中心とした映画も珍しい。幸田露伴の娘幸田文の原作を成瀬己喜男監督で映画化した。

以前観たことがあり、ストーリーの概要も頭に残っている。今年8月柳橋の名門料亭「亀清楼」で接待を受けたことがあった。神田川が隅田川にそそぐその角に「亀清楼」はある。そして、その前にあるのがまさしく柳橋だ。8代目という美人女将のご挨拶を受けた後、芸者遊びをしたが、残念ながら柳橋にはもう置屋がないのか?大井に置屋があるという芸者衆からおいしい杯をいただき、芸を楽しんだ。

亀清楼と柳橋↓


亀清楼から観た隅田川


そんな訳で山田五十鈴生誕100周年記念の名画座の映像は見逃せなかった。映画がはじまると隅田川の映像とともにすぐさま今も同じ柳橋の映像が映る。高峰秀子こそ洋装だが、まだみんな着物を着ている。昭和30年前半の様相を見せる。建物の感じといい、昭和40年代前半くらいまでの東京を連想させる映像を食い入る様にみた。やはり歴史に残る作品だと思う。

東京柳橋でもともと売れっ子芸者だったつた奴(山田五十鈴)が営む芸者置屋は時代の流れをうけ、少しづつ没落しつつあった。そこに中年の梨花 ( 田中絹代 ) が職業あっせん所の紹介を受け、住み込みの女中としてやってきた。そこには男に捨てられ出戻ったつた奴の妹(中北千枝子)とその娘不二子とまだ結婚していないつた奴の娘勝代(高峰秀子)が同居している。芸者置屋には住み込みの芸者なゝ子(岡田茉莉子)となみ江、そして通いの染香(杉村春子)がいた。

勝代が気にくわないといってなみ江をいびり、なみ江は千葉の鋸山にある田舎に帰ってしまった。すると、なみ江側から不払い賃金だとばかりに30万円が請求されてきて、つた奴は驚く。しかも、なみ江の親類という男(宮口精二)が押し掛け来たのだ。乾物屋の支払いも滞るほど金に困っている置屋であるが、生活のレベルは下げられない。つた奴の姉(賀原夏子)がいい旦那を紹介しようと、鉄鋼会社の重役を芝居の劇場であわせるが、その場に先輩芸者で今は料亭吉野の女将であるお浜(粟島すみ子)がいることに気づき、つや奴が立ち去り、その話もだめ。しかし、月末の金策に困りそのお浜の料亭に行き、相談をもちかけるのであるが。。。

1.柳橋の雰囲気
バックグラウンドミュージックであるかのように、太鼓や三味線が流れる。今でも東京の一部に同じような表情をした路地裏の横丁が残っているが、ここで映る町並みがある意味戦後東京の原風景であろう。当然、戦災で焼けたはずだから、戦後約10年で再構成された町なわけだ。セットもあるとは思うが、この風景の中で着物を着た女性たちが今よりもすこし丁寧な東京言葉で話しているのを聞くと、明治生まれの祖父やいつも着物姿だった祖母がまだ生きていた昭和40年代前半に戻ったような錯覚を覚える。


2.わがままな女たち
もともとは芸者になろうとしたけど、人に頭を下げるのがイヤで家にいるつた奴の娘勝代(高峰秀子)は本当に嫌な女だ。比較的この映画の直近で作られた映画も随分見ているが、ここまで人をいびるイヤな女は演じていない。芸者に夜のお座敷で働いてもらわないと、自分の飯のタネにならないと思わないのか?と言ってやりたいが仕方ない。

置屋があってこそ、芸者は宴席に派遣される。置屋が上前を撥ねるのは仕方ない。それでも文句が出る。ちょっと上前が多すぎるんじゃないかと。しかも、セリフからいうと、客とねんごろになるような結構きわどい話もあるように聞こえる。まだ売春防止法は施行されていない。その中でなゝ子(岡田茉莉子)のふるまいは売れっ子を連想させるが、昔の知り合いに会いに出て行き泊まったあと、あいつタダでやろうとするのが気にくわないなんてきわどいセリフがでてくる。芸者は夜の付き合いも当たり前だったのかな?



つた奴(山田五十鈴)も見栄っ張りだ。こんだけ落ちぶれているんだから、出戻りの妹や自分の娘に家事をやらせればいいものを、家政婦を雇ってしまう。これがこの当時の花柳界の常識なのであろう。最初この映画を観たときに、ずいぶん外に出前を頼むんだなあと思ったのを覚えていたが、改めて今回すしや丼ものやそばなどを繰り返しどうでもいい時に頼むのを見て、これじゃ落ちぶれるのも当然だと思ってしまう。

3.山田五十鈴の色気と粟島すみ子の貫禄
とはいうものの山田五十鈴が発するオーラはすさまじいものがある。自分が小さい時にもうすでに年を取っていたので、色っぽさなどは全然感じなかった。この時代比較的直近の黒沢明作品の「どん底」や「用心棒」でも女親分の感じで、色気を感じない。白黒の画面でもここでの艶っぽさにはドキッとしてしまう。三味線を巧みに操るシーンも多々出てくる。まさに山田五十鈴をクローズアップするための映画だ。自分も年を取ったのか。


映画創生期の大スター粟島すみ子成瀬己喜男監督のたってのお願いで出演している。山田五十鈴の先輩芸者で今は料亭の女将といった役をやらせるとなると、きっと限られるのであろう。こんな貫禄はちょっとやそっとではでない。

流れる
昭和の名女優たちによる女の映画

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「ザ・サークル」トム・... | トップ | 映画「下町(ダウンタウン)... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(日本 昭和34年以前)」カテゴリの最新記事