映画とライフデザイン

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映画「リボルバーリリー」 綾瀬はるか

2023-08-13 16:34:48 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「リボルバーリリー」を映画館で観てきました。


映画「リボルバーリリー」は大正末期の1924年(大正13年)を舞台にした秘密諜報機関の元女性工作員にスポットを当てる映画である。綾瀬はるかが工作員を演じて、行定勲がメガホンをとる長浦京の原作の映画化である。予告編で見ると綾瀬はるかの動きがアクション俳優としてサマになっている。

元工作員リリーこと百合(綾瀬はるか)は50人以上の殺しを請け負っていたスナイパーだったが、今は足を洗って玉ノ井のサロンで静かにしていた。ところが、旧知の男性が秩父で亡くなった新聞記事を見て現地に向かった。帰りの列車で陸軍兵士に追われている少年慎太(羽村仁成)を匿う。少年は身内を殺されて逃げる途中で、玉ノ井の百合に渡すように父親から書類を預かっていた。そこには陸軍が知りたかった隠密資金の情報が書いてあった。東京に戻ろうとするが、陸軍の部隊は執拗にリリーと少年を追う。


出演者は豪華で、常に窮地に追われる綾瀬はるかのアクションはカッコいい。
映画が始まって1時間以上経って初めてある事実がわかる。ストーリーに深みがでてくる。気の利いた推理小説のようだ。ただ、状況設定に無理がある部分が多いのが欠点だ。

陸軍中野学校をはじめとして、秘密諜報員を国家で育成していたのは間違いない。ここでは幣原機関という名前を使って女性工作員を登場させる。それ自体は悪くない。格闘能力にも優れて、銃を操り爆破装置の知識もある。ひと時代前だと志穂美悦子なんかを登場させた感じだ。最近の日本映画では少ない設定なので新鮮だ。

日本映画では比較的予算はある方なのであろう。東映製作なのでセットも利用できる。大正12年の関東大震災を経て一年たった東京の浅草六区と思しき芝居小屋や都電が走る上野広小路や娼婦が呼び込みをする猥雑な玉ノ井などを再現する。震災で壊滅状態の東京が1年でここまで復興されたかは疑問だけど、まあいいだろう。この時代にはすでに開通していた秩父鉄道の荒川橋梁陸海軍の本部や執務室などもきっちり映し出す。海軍の本部を映すVFXを使った映像もよく、背景の映像はよくできている方だ。


同時に配役も豪華だ。味方も敵も好配役だ。
百合に好意を寄せる海軍兵学校出の弁護士が長谷川勝己だ。玉ノ井のサロンにいる女性にシシドカフカと古川琴音を起用する。銃も扱う謎の女は鼻筋がきれいな美形だ。一体何者なのか?最初は永井荷風の濹東綺譚を映画化した時の墨田ゆきに見えてしまった。シシドカフカという名は初めて知った。


「街の上で」や「偶然と想像」で重要な役割を演じたので古川琴音はすぐわかった。実年齢より10歳若い役柄だけど、個性派俳優らしく巧みに10代の娼婦を演じる。


海軍大佐の山本五十六阿部サダヲを起用して、文書の謎を握る男が豊川悦司で、リリーが依頼するドレスの仕立て屋の店主に野村萬斎とぜいたくな使い方をする。山本五十六は実際小柄だったらしい。

リリーをおとしめようとする陸軍の男たちの使い方も上手い。不穏な雰囲気をだしてうまかったのが、「さがす」凶悪犯人を演じた清水尋也で、リリーと何度も格闘対決する。主人公が葛藤する相手は強くないといけない。他にも同じく「さがす」佐藤二朗や、内務官僚の吹越満など登場人物がうまく配置されている。


ただ、設定にはかなり無理がある。(ここからネタバレなので注意)
海軍と比較して、陸軍の軍人を悪くいうのは戦後の日本映画ではよくあることだ。ただ、ちょっとやりすぎかもしれない。陸軍がかなり無能な存在になっているのが気になる。軍人たちがリリーたちに銃を向ける場面が何度も出てくる。しかも、大勢の射撃手がいるのに、撃ち崩せない。おいおいここまで日本陸軍をバカにすることはないだろう。

長谷川博己演じる弁護士が内務省に逮捕されて匿われている時にスキを見て逃げ出すシーンもあり得るかと感じてしまう。戦前の内務省は現在の自治省や総務省などいくつもの官庁と警察組織も含んだ強い権限を持つ組織で、いわゆる特高の組織まで含まれる。そんなに易々と逃げていけるわけがない。しかも、あなただけと言って内務省の役人が内密の話をするのもおかしい。もっとも原作の問題だろうけど、戦前の日本をバカにしすぎだ。


あとはリリーが不死身すぎるということ。主人公が頑強であらゆる困難を克服するというのは物語の定石だろうけど、圧倒的に強い相手に胸を繰り返し刺されているのにそのまま生き延びられるのであろうか?その場で死んでもおかしくない。事実、ミッションインポッシブルの最新作では同じように胸を刺されて重要人物が亡くなっている。刺された後で格闘なんてできるわけない。これでは人智を超えた世界だ。オーバーな表現は必要でもちょっとやりすぎ?と感じてしまう。

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