映画とライフデザイン

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映画「ある船頭の話」柄本明&オダギリ・ジョー

2019-09-19 05:44:52 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ある船頭の話」を映画館で観てきました。


オダギリジョーの初監督作品である。山間を流れる渡し船をめぐって船頭と乗客との逸話を語っていく。主人公の船頭を柄本明が演じる。初監督となるオダギリジョーを応援してか、橋爪功、草笛光子、蒼井優、細野晴臣、永瀬正敏といった主演級が渡し船に乗る乗客として脇を固める。時代をくっきり浮き上がせるワダエミの衣装がよく、ワイドスクリーンをいっぱいに使ってのクリスファードイルのカメラは緑あふれる山間部を流れる川に浮かぶ渡し船を美しく映す。この映像のレベルは高い。

メリルストリームの「激流」ブラッド・ピットの「リバー・ランズ・スルー・イット」と川にかかわる映画とは相性がいい。徐々に情感が高まってくるこの映画もいい感じだ。



時代設定は明治から大正にかけて、映画がはじまってしばらくは、山間を流れる川に浮かぶ渡し船での船頭トイチ(柄本明)とお客さんとの何気ない会話を映し出す。船頭トイチは船着き場横の小屋に一人で住んでいる。村の少年源三(村上虹郎)は何とかとトイチにちょっかいを出して仲がいい。

ただ、主人公の心には1つの葛藤がある。町と村を結ぶ大きな橋が作られているのである。開通すれば、渡し船は乗らなくてもすむ。乗船客には建設に携わる横柄な土木建設会社の男もいて、トイチはおとなしく相手にしているが、内心は穏やかでない。

そんな渡し船に何かぶつかるものがある。人が流されてきたのだ。少女である。かすかな息をしておりまだ生きている。ずっと眠ったままだったが、薬草を使って介抱するとやがて目覚めた。名前は名乗らない。

そんな時乗船客から、上流の町でむごい殺人事件が起き女の子が一人行方不明といううわさを聞いた。トイチは心の中でつながりを感じたが、乗船客には知り合いから一時的に預かっていると少女(川島鈴遥)を紹介した。やがて、少女もトイチに心を許して、川辺の小さな小屋でお互い信頼しつつ暮らしていた。橋は徐々に完成に近づいてきたのであるが。。。


都会の喧騒とはちがう川辺の美しい風景を観ながら、人の好いトイチの対応をみていると、心が洗われる感じがする。次から次へといろんな人たちと会うのは、逆に固定した風景にもかかわらず、ロードムービー的な要素もある。バックもディグラン・ハマシアンのジャズのソロピアノで、しっとりしたムードにうっとりしてしまう。


ロケ地はどこなんだろう?とずっと考えていた。すがすがしい夏の風景から南の匂いも感じたが、どうやら新潟の阿賀のようだ。むかし、10月~11月にかけてか?社内旅行でバスに乗り、会津経由で新潟に向かった時がある。その時会津を抜けると雪が降ってきた。え!こんな時期にと思ったが、このロケ地あたりだったかもしれない。

小さな事件はいくつも起きるが、平穏無事に進んでいく映画かとラストの寸前まで思っていた。しかし、根底に流れるストーリーにはたくさんの伏線をつくっていた。それが、ある方向に暴走する。雪景色の中予想しなかった展開に驚いてしまう。


数々の名画に出演してきたオダギリ・ジョーの底力を感じた。自分の好きな映画に加えたい。


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