映画とライフデザイン

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映画「女は二度生まれる」若尾文子

2020-08-28 05:28:48 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「女は二度生まれる」は1961年(昭和36年)の大映映画


九段下に行くと、坂を登れば靖国神社だ。靖国神社は諸外国からみて右翼の象徴みたいになっているが、軍人を祀るということなのにちょっと大げさである。その靖国神社の参拝シーンが多い映画がある。川島雄三監督若尾文子主演「女は二度生まれる」である。靖国神社の近くにあった富士見町の花街の芸者を演じている。てっきりブログアップしていると思っていた。60年前の東京にタイムスリップするのも悪くない。

芸者小えん(若尾文子)が筒井(山村聡)と床を共にしていると、太鼓の音が聞こえる。なんだこれは?と筒井は驚くが、靖国神社で朝5時に鳴る太鼓の音だ。その場限りのお付き合いだが、売春防止法もあり、自由恋愛なのに名前を知らないのもおかしいと筒井の名刺を求める。建築設計士だった。小えんは芸者といっても芸のできない不見転(みずてん)芸者、御座敷の後でお呼びがかかると一夜を過ごす。


小えんは花街で顔を合わせる大学生牧純一郎(藤巻潤)に心を寄せるが、店を贔屓にするお偉いさんに同伴して御座敷に来た新橋烏森の寿司屋の板前、野崎(フランキー堺)とは気があった。一緒に熱海に遠出する仲の正体不明の社長矢島(山茶花究)と銀座に行った後野崎の鮨屋へ押しかける。自ら誘って酉の市に鷲神社へ一緒に行き商売をはなれて泊ったりした。


そんなある日、彼女のいた置屋の売春がばれて警察の呼び出しがかかった。やむなく、小えんは芸者仲間に以前から誘われていた新宿のバーにつとめると、思いがけず筒井に再会する。やがて、渋谷のアパートで筒井を待つ生活をすることになる。それでも、映画館で知り合った17歳の少年工と遊ぶと、それがバレて筒井から大目玉をくらったりした。そんなとき、筒井がガンになってしまう。不治の病にたおれると本妻の目をぬすんで看病したりもしたのであるが。。。

1.富士見町九段三業地
現在だと、千代田区富士見の地名は靖国神社から見て北側で飯田橋駅に接近するが、靖国神社から靖国通りを渡ったあたりに九段三業地富士見町の花街があったようだ。富士見という名前はでてこないが、神楽坂では靖国神社の太鼓は聞こえない。昔から神社のそばには花街があるという。九段下には旧軍人会館のちの九段会館がある。軍人がいるところにも花街は絡むものである。今から約60年前に靖国神社に参拝する人が映し出される。貴重な映像である。


とは言うものの最初に若尾文子が登場するこの階段はたぶん神楽坂の風呂屋裏芸者小道の階段ではないか。最初に銭湯から色街の姐さんがでてくるシーンもあるけど、今もある風呂屋だと思う。はっきり富士見花街が舞台といいきらないのはこのように混ぜ合わせているからだろう。


現在の階段(筆者撮影)
若尾文子の位置から向かって右に映る壁に縦にパイプのようなものがある。60年前と現在の写真とほぼ同じ位置だ。その壁から階下に向けて階段が広がるように見えるのも同じだ。


2.若尾文子演じる女たちの性的観念
若尾文子が演じる昭和35年の作品では女経ぼんちをブログにアップした。
この辺りの自由奔放さは最近では考えられない。自分の母と同世代なので気分は複雑だ。自由恋愛、売春防止法というのがキーワードである。

若尾文子は美しい。その美貌と併せて、着物のセンスがいい。昭和35年当時に20代半ばとすると、昭和一桁生まれか?昭和8年生まれの若尾文子と同じくらいの年齢であろう。両親は空襲で両方とも死んだとセリフにあり、「筒井の奥さんは女学校出身」なんて台詞もあるので小学校卒業を超える学歴はないと思われる。昭和9年生まれは義務教育で中学校に行けたが、それよりも上の人は行っていない。いつ置屋に入ったのであろう。女の武器で生計を立てるというのが当たり前の世界なのか。


ここでよくわからないのが、若尾文子が寿司職人や17歳の工員に惹かれるところだ。映画観客動員数のピークは1958年の112万人、TVは普及しているが1960年はまだそれなりに多い。新制高校進学率は男女合わせて1950年で46%、1960年は57%(文部省資料 1962)である。観客の学歴は決して高くない。そうなれば、観客の目線にも合わせる必要がある。大学の制服を着た藤巻潤を登場させるが、一方で職人や工員を美女の若尾文子とカップリングさせないと観客とレベルが合わない。そんなことなんだろう。

現代の映画と違って、露骨に男女の絡みはみせない。ふすまや雨戸を閉めてこれからスタートということで画面は変わる。若尾文子はこれからどう抱かれるのだろうと次のことを連想させる。それはそれでいいのかもしれない。

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